名古屋では4回目の開催となる、花開くコリア・アニメーション2013。本年も、韓国唯一のインディーズ・アニメーション映画祭「インディ・アニフェスト」の最新ノミネート作品から、選りすぐりの短編28本を「短編Aプロ:恋?愛!サラン!!」「短編Bプロ:世界は万華鏡」「短編Cプロ:心の扉をノック」の3つのプログラムに分けてご紹介します。そして、今年はなんと、韓国長編アニメーションとして初のカンヌ国際映画祭出品を果たした『豚の王』(ヨン・サンホ監督)の日本初公開も実現! さらに韓国を代表するストップモーション作家で、今回最新作『楽園』が上映されるチョン・ミニョン監督とキム・ギョンジン監督が来日。名古屋で人形アニメーションの制作を続ける江口詩帆監督とのトークや、ワークショップも開催いたします。

■概要
会期:2013年5月18日(土)・19日(日)
会場:愛知芸術文化センター 12階 アートスペースEF(地下鉄東山線/名城線・栄駅より、徒歩3分)
料金:1プログラム 一般 1,000円 学生500円
   ※ 当日券のみ。トークとワークショップは無料。
公式サイト:http://anikr.com/

主催:韓国インディペンデント・アニメーション協会(KIAFA)、シネマコリア、愛知芸術文化センター
後援:大韓民国文化体育観光部、日本アニメーション学会、日本アニメーション協会、駐日韓国大使館 韓国文化院
協力:ANIMATION TAPES

■みどころ
韓国長編アニメーション初のカンヌ招待作『豚の王』独占上映
『地獄』『愛はタンパク質』など、独自のスタイルで現実社会における暴力を表現するヨン・サンホ監督の初長編アニメーション『豚の王』。釜山国際映画祭にて三冠を達成し注目を浴びた本作は、2012年カンヌ国際映画祭の監督週間部門に招待され、カメラ・ドールの候補にも名を連ねました。『息もできない』の監督&主演ヤン・イクチュンと女優のキム・コッビが声優として参加し話題を呼んだ本作を、日本で初めて上映します。

世界の映画祭が注目する短編アニメーションを一挙28作品上映
『Dust Kid』でカンヌ国際映画祭に進出したチョン・ユミ監督の新作『Love games/恋愛ごっこ』(短編Aプロ)、ワルシャワ国際映画祭アニメーション部門最優秀賞受賞作『Noodle Fish/でこぼこ魚』(短編Bプロ:写真)、アヌシー国際アニメーション映画祭2013学生部門ノミネート作『The Bathhouse』(短編Cプロ)をはじめ、世界のアニメーション映画祭が注目する短編アニメーション28作品を一挙上映します。

社会を捉える若い作家の視線に注目! “韓国の今”を切り取った珠玉の作品を上映
韓国インディーズ・アニメーションの大きな特徴の一つに、社会的テーマへの果敢な挑戦が挙げられます。従軍慰安婦をテーマとし、動画サイトで大きな反響を得た『Herstory/少女の物語』(短編Cプロ:写真)、北朝鮮から脱北した若者のリアルな韓国生活を描いた『パープルマン』(短編Cプロ)をはじめ、労働問題、動物虐待など様々な社会問題に取り組み、問題提起にとどまらず、互いに和解する方法を、作品を通じて模索しています。

『楽園』キム・ギョンジン、チョン・ミニョン監督によるワークショップとトークを開催
 観客参加イベントとして、短編Bプロ上映作『楽園』のキム・ギョンジン、チョン・ミニョン監督を講師に迎え、ワークショップ「コマ撮りでマジックショー!? みんなで変身トリック映像を作ろう!」を開催します。また、両監督と、名古屋で人形アニメーションの制作を続ける江口詩帆監督とのトーク「日韓ストップモーションの世界」も開催します。ワークショップとトークは無料でお楽しみいただけます。

花開くコリア・アニメーション2013 【上映作リスト】

■短編Aプログラム「恋?愛!サラン!!」(78分/9作品)

家族や恋人、大切な人との間に生まれる複雑な感情。口の中で、そっと呟いてみる。恋、愛、サラン。

「HOME SWEET HOME」 2012/7:20/チャン・ナリ
新聞配達の始まる早朝、男は細い路地へと入っていく。彼の姉は、男が帰宅する時の騒がしい物音が嫌いだ。姉に金を借り、母親が出勤の準備に追われる時間に台所の床で寝ている男は、巨大な虫のようだ。

「恋人たちの部屋」 2012/4:46/チョン・ヨンソク
ソンミンとスジンは恋人同士だ。ある日ソンミンはスジンから突然別れを告げられ、何とかしてスジンを繋ぎ止めようと必死になる。

「消えては現れる」 2012/5:30/キム・ユンジ
消化できない、もやもやとした感情に苦しむ一人の女性の話。

「トントントン、こんにちは。天使です。」 2012/12:30/キム・ユニ
ある日キムじいさんのもとに天使が現れる。天使はおじいさんに幸せかと尋ね、キムじいさんは嘘をついてしまう。招かれざる客である天使とおじいさんによる、一幕のドタバタ劇。

「パパのおかしな好み」 2012/11:30/パク・ヒョンギョン
食べ物に変わった嗜好のある父親と、それを嫌がる少女の葛藤を描いた家族の物語。

「おまえのせいで」 2012/10:53/ソン・ヘジン
シウは兄のジヌが好きだ。ジヌはどこへ行くにもついてくる妹がうっとうしくて仕方ない。そんな中、公園で遊んでいたジヌは、どさくさまぎれにシウを500ウォンで売ってしまう。しかしいざ売ってしまうと、すっきりするはずの心が、ただそわそわと落ち着かないばかりだ。

「おしゃべり」 2011/4:30/ キム・ピルソン
とある田舎町の、寡黙なおじいさんと口数の多いおばあさんの物語。

「あの夏の思い出」 2012/6:08/キム・ドヨン
一人暮らしをする娘が、夏休みを家族と一緒に過ごすため、実家へ帰省する。海へと旅に出た家族は水遊びをし、花火を楽しむ。旅が終わり、娘はまた一人で暮らす家へ帰ってくる。日常に戻った後も、夏休みの思い出はおぼろげな残像となって残る。

「Love games/恋愛ごっこ」 2012/15:00/チョン・ユミ
幼い頃、友達と一緒に楽しんだ遊びを思い出してみる。子ども同士の単純な遊びではあるが、振り返ってみると、私はそれを通じて自分の欲求を満たそうとしていた。幼い子ども特有の自己中心的な行動パターンだ。しかし既に成人した恋人同士も、恋愛においてだけは成熟した姿でいられない。このような恋愛の断面を、子どもたちの遊びを通して隠喩的に表現してみた。

■短編Bプログラム「世界は万華鏡」(77分/9作品)
多様な色彩と模様を見せてくれる万華鏡のような日常は、神秘と恐怖に満ちた、いわば未知との遭遇の連続だ。

「Secret Garden」 2012/1:37/イ・ハンビッ
キスをしていた恋人たちは木に殺され、木は行進を始める。彼女の部屋にある木もいつの間にか歩き出し、彼女と向かい合う。その木はなぜか彼に似ている。

「家」 2011/5:37/キム・ワンゴル
家の価格が上がるとすぐに、家と男に変化が訪れる。

「影の怪物」 2011/9:36/パク・ヘミ
暗闇を怖がる少年の家に、ある日、影の怪物がやってくる。影の怪物は少年の部屋の物全ての影を飲み込み、少年の影まで飲み込もうとする。少年は勇気を出して戦うが、結局影を消すためには部屋の明かりを消さなければいけないと気付く。

「THE DAY」 2012/11:00/パク・ソヌク
生存のために選択した地球。果たして彼らの運命は?そして地球の運命は?

「XYZ note」 2011/1:00/キム・イェヨン、キム・ヨングン
アニメーションスタジオ「YOG」とエレクトロニカ・ミュージシャンの「ROBOTOMY」が、XYZノートを利用し、共同制作したアニメーション。電子音楽を制作する際に使用する仮想楽器「VSTI」の一つ一つの音を多様な形態で表現し、想像力を駆使して作り上げた。

「楽園」 2011/17:47/キム・ギョンジン、チョン・ミニョン
渇き切った大地、そこにあるのは干からびた草の根と錆びついた缶詰のカンだけだ。その場所で長い間生き延びている、一匹のペンギンがいる。

「Keep Drawing」 2011/1:20/ハ・ジュアン
絵を描いている。ずっと描いている。

「Bleach」 2011/17:45/チョン・ギュヒョン
花柄の壁紙が貼られた部屋。一台のロボット労働者が目を覚ます。彼は鏡の前で、自分の頭の中に別の自我である蝶が存在することに気付き、喜びを感じる。その時部屋のドアが開き、ロボットと蝶を管理する監視者が現れる。彼はいつものように恐怖で萎縮する。

「Noodle Fish/でこぼこ魚」 2012/9:46/キム・ジンマン
料理用のそうめんを積み上げ、場面ごとに麺を押し出して模様を描いたピンスクリーン・アニメーション。「大人になるには、水の外へ行かなきゃダメなの?」小さな水たまりに住む主人公へ疑問を抱かせ、消えてしまったおたまじゃくしたち。その時から、水の外へ向けた彼の旅が始まる。

■短編Cプログラム「心の扉をノック」(77分/10作品)
それぞれに個性や立場が異なる私たち。それでも心の扉を開いて語り合えば、理解と共感が可能ではなかろうか。

「あなたが捨てた犬の話」 2012/5:30/イ・ジョンヒョク、キム・ヘジョン
とある田舎道。乗用車が一台やって来て、一匹の犬を捨てて走り去る。残された犬は、自分を捨てて行った家族をひたすら待ち続ける。

「プールの猫たち」 2012/8:30/キム・ボギョン
車にひかれて死んだ猫の死体を見た男。彼はプールで水の中を悠々と泳ぐ猫の幻想を見る。そして帰宅の途中、同じ場所に放置されたままの猫の死体と、それをカメラで撮影する一人の女性を目撃する。

「希望のバス、ラブストーリー」 2012/8:26/パク・ソンミ
某造船所の85号クレーンには、2人の人間の死を記憶に刻む、悲しいエピソードがある。一人の女性労働者が、巨大な企業権力に立ち向かうため、クレーンに上った。そこで150日間、たった一人で過ごした彼女。彼女はツイッターで世間と交流し、この事実を知った人々は、バスに乗って彼女の応援に駆け付ける。そしてクレーンは巨大なロボットへと変身するが…。

「少女の物語」 2011/11:00/キム・ジュンギ
日本軍の従軍慰安婦としてインドネシアのジャワ島へ連行され、数年間の慰安婦生活を送ったチョン・ソウンさん(1924〜2004)。彼女の生前のインタビュー音声をそのまま使用して作られたアニメーションだ。日本人に対抗した罪で投獄される父の身代わりに日本へ働きに出るつもりだった、少女ソウンさんの体験談。

「パープルマン」 2010/13:00/キム・タクフン、パク・ソンホ、リュ・ジノ、ユ・ジニョン
北朝鮮で生まれた18歳のキム・ヒョクは、脱北して韓国で暮らしている。ゆで卵をお腹いっぱい食べられることだけでも韓国での生活に幸せを感じる彼だが、しばしば生活苦や差別に直面し、挫折を味わう。北朝鮮の象徴である赤でも青でもなく、彼は自分が一体何者なのかと苦悩する。

「HARMONY」 2012/3:02/チョン・サンヨン
手を叩く度に白と黒が入れ替わる舞台の上で、白と黒のバレリーナが互いに目立とうと小競り合い、状況は暴力的にエスカレートしていく。ダンスは崩壊し、混乱に陥る中、一人のバレリーナが全員が同時に目立つ方法を思い付く。

「リンゴの食べ方」 2011/1:30/オ・スヒョン
美味しそうなリンゴが一つ置いてある。あなたはどうやってこのリンゴを食べるだろうか?

「アンダーグラウンド」 2012/6:30/イ・ギョンファ
ハイヒールを履いた若い女性が地下鉄に乗る。足を痛めた彼女は座席に座るが、周りの乗客の態度に苛立ちを感じる。そんな中、満員の車内で一人の男が騒ぎを起こすが…。

「Allegro」 2011/12:40/チュ・ユンチョル
人とは違い、フリーランニングを楽しみながら荷物を宅配する主人公。しかし配達途中にトラブルを起こし、今後は大人しく車で配達することを社長と約束する。ところが自分の能力を必要とする緊急事態の発生に、社長との約束を破り、彼は走り出す!

「The Bathhouse」 2012/7:00/キム・ジス
暗い都心に暮らす人々が、1人2人とスパへ集まってくる。神秘的な霧が立ち込める中、女性たちは体を重く締め付けていた衣服や貴重品を脱ぎ捨て、幻想的な風呂の楽園へと駆けていく。

■長編アニメーション「豚の王」 2011/97:00/ヨン・サンホ
世間に見捨てられた15年前のあの日、あの残酷な物語が再び始まる。会社の経営破綻後、衝動的に妻を殺害したギョンミンは、こみ上げる怒りと興奮を抑えながら中学時代の同級生ジョンソクを訪ねる。作家の夢が叶わず、自伝のゴーストライターとしてかろうじて生計を立てるジョンソクは、15年ぶりのギョンミンの訪問に当惑する。無視され踏みにじられた、疎ましい中学時代の記憶と、彼らの英雄であったチョルについて語り始めるギョンミン。そして彼は母校の校庭へジョンソクを連れて行き、15年前のあの日の衝撃的な真実を明かそうとするが…。
『地獄』『愛はタンパク質』など、独自のスタイルで現実社会における暴力を表現するヨン・サンホ監督の、初長編アニメーション。釜山国際映画祭にて三冠を達成し注目を浴びた本作は、2012年カンヌ国際映画祭の監督週間部門へ招待され、カメラ・ドールの候補にも名を連ねた。『息もできない』の監督ヤン・イクチュンと女優のキム・コッビが声優として参加したことも話題を呼んだ。

※ 本作品には青少年に適さない描写があります。

花開くコリア・アニメーション2013 【スケジュール詳細とゲスト】

■スケジュール

5/18(土)
 14:00 長編「豚の王」(97分)
 16:00 オープニング舞台挨拶
     短編Bプロ「世界は万華鏡」(9作品/77分)
 17:30 トーク「日韓ストップモーションの世界」(無料/90分)
     ゲスト:キム・ギョンジン(短編Bプロ『楽園』監督)
         チョン・ミニョン(短編Bプロ『楽園』監督)
         江口詩帆(人形アニメーション作家/名古屋学芸大学助手)
     司会:林緑子(ANIMATION TAPES)
5/19(日)
 10:30 ワークショップ(無料/90分)
 13:00 短編Aプロ「恋?愛!サラン!!」(9作品/78分)
 14:40 短編Cプロ「心の扉をノック」(10作品/77分)
 16:20 長編「豚の王」(97分)

■トーク「日韓ストップモーションの世界」 5/18(土)17:30〜19:00(無料)

ストップモーション(コマ撮り)を駆使して、人形アニメーションを制作する日韓の作家たち。キム・ギョンジン、チョン・ミニョン、江口詩帆、3名の監督に、人形アニメーションの魅力やその制作秘話について語っていただきます。キム・ギョンジン、チョン・ミニョン監督の最新作『楽園』(Bプロで上映)のメイキングも上映予定!

■ゲスト・プロフィール

キム・ギョンジン
中央大学先端映像大学院アニメーション科卒業。CLOCKHOUSEスタジオ所属。2007年に韓国の国楽を描いたアニメーション『アリラン密陽/Arirang Milyang』を制作。花開くコリア・アニメーションでは、人形アニメーション『道を失った子どもたち/Losted Child』(2009)を2010年に上映している。

チョン・ミニョン
中央大学先端映像大学院アニメーション科卒業。ストップモーション・アニメーション制作やキャラクター・ミニチュアのデザインを行うCLOCKHOUSEスタジオを設立。学生時代に、『Say my name』(2002)、『The Way』(2003)で、東京国際アニメフェア学生部門優秀賞を2年連続受賞している。

江口詩帆
愛知県出身。人形アニメーション作家。名古屋学芸大学 メディア造形学部 映像メディア学科助手。『ガラス男の恋』(2010)で栄芸術映画祭ショートムービーコンペティション部門グランプリを受賞。同作はイメージフォーラム・フェスティバル2010「ヤング・パースペクティヴ2010」でも上映された。

■ワークショップ「コマ撮りでマジックショー!? みんなで変身トリック映像を作ろう!」 5/19(日)10:30〜12:00(無料)

内容:変身させたいもの、アニメーションで動かしたいものを最低1つご持参ください。韓国からのゲスト監督と一緒にストップモーション(コマ撮り)で撮影し、物が変身したり動いたりするトリック映像を作ります。できあがった映像は最後にみんなで鑑賞します。
対象年齢:小学3年生〜大人
定員:12名
持ち物:動かしたい物(人形、ペン、ハンカチなど何でも)
申込方法:花コリHP「お問合せ」より「名古屋会場」を選択し、参加者全員の氏名、代表者メールアドレスを明記の上、送信。またはお電話で090-1863-7855(シネマコリア西村)まで。

■交流会のご案内

5/18(土)19:30より、TIGER CAFE セントラルパーク店にて交流会を開きます。みんなで集まって楽しいひとときを!
参加費:ドリンク代

執筆者

Yasuhiro Togawa