第5回大江健三郎賞受賞の星野智幸による超リアル不条理小説『俺俺』(新潮文庫刊)。“俺の増殖”という奇想天外なストーリーでありながら、“まわりがみんな自分だったら楽なのに”と誰もが一度は感じたことのある現代だからこそリアルな共感を呼ぶ。そんな映像化不可能と称された原作の映画化に、TVドラマ「時効警察」「熱海の捜査官」」などで独自の世界観を確立してきた三木聡監督、アイドル・俳優・キャスターと様々な顔を持つ亀梨和也が1人33役を演じるという前代未聞の主役を務めた。なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまった主人公・均の前に、同じ顔の“俺”が現れる。好みも考え方もまったく同じ“俺”が集まる最高に心地いい居場所を見つけた均だったが、やがて世の中に増殖した“俺”同士の削除が始まっていく“日常逸脱系サスペンス”。

 今回、イタリアの北東部の半島に位置する都市ウディネにて、ウディネ・ファー・イースト映画祭(4/19〜4/27)が開催される。この映画祭は、東アジアや東南アジアに特化しており、その中でも日本映画の存在感はヨーロッパの映画祭の中ではダントツ人気で盛り上がっていることで知られ、09年には「おくりびと」が一般観客から投票による観客賞を受賞、昨年は「テルマエ・ロマエ」がワールドプレミアを行い日本でも大きな話題になるなど、日本映画がより注目される映画祭になっている。そしてこの度、5月25日(土)に日本公開を迎える映画『俺俺』が上映されることが決定!この発表を受け、主演映画で自身初の海外映画祭上映となる亀梨和也と、本映画祭で実は過去に「三木聡特集」として「イン・ザ・プール」(05)、「図鑑に載ってない虫」(07)、「転々」(07)の3作品を特集上映した実績があり、今回で4作品目の上映決定となった三木聡監督がコメントを寄せた。

 日本だけでなく、海外の映画祭でも大人気の三木聡監督作品『俺俺』。自分が自分であることの証しの見つけ方、人はいかにして他者と向き合えばいいのか、という現代的で普遍的な問いが描かれた本作が、どのように評価され受け入れられるのか、海外でも注目が高まる。

 【亀梨和也(主演)】
 今回ウディネ映画祭に上映されることになり、大変光栄に思います。海外の方たちにもたくさん見て頂いて世界中に俺を増殖
 してもらえたら嬉しいです。

 【三木聡(脚本・監督)】
 私の最新作をヨーロッパの皆さんにいち早く御覧頂ける事に今からわくわくしております。まぁ、普通の見方で楽しむ映画とは少し
 違うと思いますが、ご自身で楽しみ方を発見して頂ければ映画を創ったものとして、これ以上の喜びはありません。今そこにある
 リアルとは少し違った、日常の裂け目に見える、多分「亜リアル」みたいなものが映画の中にある筈です。

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執筆者

Yasuhiro Togawa