原作は2012年、第146回直木賞を受賞し、時代劇として現在破格の20万部を突破している、葉室麟(はむろりん)著・
「蜩ノ記」。直木賞を満票で受賞し、浅田次郎に「これまでにない完成度」と言わしめた本格時代小説です。
青年武士の成長と師弟愛、師の娘との男女の愛、師と妻、娘との夫婦愛・家族愛が見事に描かれた普遍的な人間ドラマはポスト藤沢周平との呼び声高く、時代小説としては珍しく瞬く間にベストセラーに名を連ねました。口コミが広がり、映画化を望む声がジワジワと高まる中、読者の胸に刻まれた感涙の物語が、ついに実写映画としてスクリーンに登場します。
監督は、故黒澤明監督の遺作シナリオを引き継ぎ初監督を務めた「雨あがる」(2000年)でヴェネチア国際映画祭で緑の獅子賞、日本アカデミー賞で最優秀作品賞他8部門を受賞した小泉堯史(こいずみたかし)監督。
本作になみなみならぬ思いをかける小泉監督は、原作者を自ら訪問し映画化を熱望。「黒澤組」ゆかりのスタッフも多数参加し、人間を見つめる確かかつ温かな眼差しで、良質な人間ドラマを作り上げていきます。
藩の重大な秘密を握り、10年の間幽閉されてしまう主人公・戸田秋谷役には、日本を代表する名優・役所広司。
城内で刃傷沙汰をおこし、秋谷の監視役として派遣される檀野庄三郎役には、「SPシリーズ」以降映画出演が相次ぎ、本作が3度目の時代劇映画出演となる岡田准一。ともに実力派、そして初共演の二人。秋谷に不信を抱いていた庄三郎が事件の真相を明らかにし、秋谷の気高い生き方に触れて成長する、師弟愛の絆が描かれます。また本作のヒロイン、秋谷の娘・戸田薫役は「梅ちゃん先生」が記憶に新しい国民的女優の堀北真希、秋谷を温かく見守る妻戸田織江役は、「雨あがる」以来の小泉組参加となる原田美枝子が演じ、庄三郎と薫との初々しい恋と、秋谷と織江の温かな夫婦愛が描かれます。
さまざまな愛を描く感動の人間ドラマである本作に最高のキャスト、スタッフが揃いました。本作は13年4月末から6月末まで、岩手県や長野県など国内10箇所にてオールロケ撮影を行い、9月下旬に完成予定。公開は2014年を予定しております。

<キャスト、原作者コメント>
役所広司 /戸田秋谷(とだしゅうこく)役 コメント
小泉監督作品は、誠実で品格を備え、時が経っても風化しない奥深さがあり、小泉監督と出会える日を待ち望んでいました。
初めてご一緒する岡田准一さんとの仕事が楽しみです。堀北真希さん、原田美枝子さんなど素晴らしいキャスト、スタッフの皆さんと静かに深く作品に溶け込めるよう頑張りたいと思います。

岡田准一/檀野庄三郎(だんのしょうざぶろう)役 コメント
小泉監督をはじめとした黒澤監督を支えてこられたスタッフの皆様と一緒にお仕事させていただけることを光栄に思います。また、子どもの頃からファンでもある役所さんと初めて共演させていただけることは嬉しくもあり楽しみです。
スタッフ、キャストの皆様と人が人を思うことのすばらしさや原作からも感じた古き良き日本の美しさを描けるように撮影に臨みたいと思います。

堀北真希/戸田薫(とだかおる)役 コメント
小泉監督とは事前に色々とお話させていただいていますが、参考になる本や資料をたくさん提示していただいています。本当にその時代に生きた人がスクリーンに映るようにしたいという思いに応えられるように、所作も身につけ本番までに役作りをしていきたいです。薫の武士の娘として家族を支えていく覚悟や、前に出ていく強さではなく内に秘めた強さを持った部分を表現出来るようにしたいです。役所さんは以前にも親子役で共演させていただきました。またご一緒させていただけて嬉しいです。岡田さんとはデビュー作以来の共演で、当時何もわからない私に優しく接していただきました。今回は足を引っ張ることなく立派に頑張りたいです。原田さんは数々の名作にご出演されていて、親子役をやらせていただくのを楽しみにしています。

原田美枝子/戸田織江(とだおりえ)役  コメント
共に黒澤組を通ってきた戦友のような小泉監督とは、”雨あがる”以来の映画になります。
今回は、日本での最後のフィルム作品になるかも知れないと聞き、時代の流れとはいえ、フィルムで育ってきた私としては、とても淋しいです。でも、そのフィルム作品で、この美しい日本の風景と、武士の精神性の高さを写しとることができるのですから、素晴らしいスタッフ、そして、役所さん、岡田さん、堀北さんといったステキな俳優さんたちと、ていねいな仕事をしたいと思います。

原作者・葉室麟(はむろりん)  コメント
「蜩ノ記」の映画化にあたってシナリオを読ませていただいたのですが、わたしが思い描いた世界をそのままに表現していただけていると強く感じました。シナリオを読むだけでも「蜩ノ記」の世界が目の前に広がるような気がしました。
「蜩ノ記」にはわたしの青春時代の一場面もこめられています。スクリーンでそのシーンを目にすることができそうだとわくわくしています。観客席で涙したら恥ずかしいので、目立たないようにこっそり見るつもりです。

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執筆者

Yasuhiro Togawa