監督/脚本は、東京藝術大学で黒沢清に師事し、濱口竜介、瀬田なつきらに続く新鋭、眞田康平。はっぴいえんどの名曲「しんしんしん」にインスピレーションを受け書き上げたオリジナル脚本は、初長編にして新人とは思えないスケール感をもつ叙事詩。失われつつあるような懐かしい風景を旅する「家族」をとおし、不断に変化し移ろいゆく世界と、だからこそ惹かれあい結びつこうとする姿を情緒的に描いた。

しんしんしん。魂を揺さぶる物語に共鳴する俳優たち

主人公・朋之には、『カナリア』での瑞々しく鮮烈なイメージが印象に残る石田法嗣。不器用な態度の中に秘めた感情の奔流を見事に演じきった。朋之のほのかな思いを受けとめ、ときに彼を導くヒロイン・ユキに『俺たちに明日はないっス』や近作『恋に至る病』で主演をつとめた我妻三輪子。あるときを境に決定的に失なわれてしまうような種類の美しさを刻みつけているている。
共演に、園子温作品での活躍目覚ましい神楽坂恵。また洞口依子、佐野和宏などの名だたる俳優陣が揃った。それぞれが、容易く希望を語らず、喪失を引き受け見つめようとする眞田監督に深く賛同し、何かを失なってしまった事を背負って生きる人々の本質をありありと体現している。それはまるで、本当の家族が寄り添っているかのようにさえ見える存在感を映画に与えた。

特報::http://youtu.be/g1KW-lqq05E

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執筆者

Yasuhiro Togawa