『二十四の瞳』、『喜びも悲しみも幾年月』、『楢山節考』など数々のヒット作を生み出し、盟友・黒澤明監督と共に、一時代を作った監督・木下惠介。
松竹では、木下惠介監督が生誕100年を迎える記念すべき今年、木下生誕100年プロジェクトを立ち上げ、多種多様な取り組みを展開しております。先日、そのプロジェクトの中核をなす、記念映画『はじまりのみち』を制作することを決定し、日本アニメ界の第一人者、原恵一の初実写映画作品として、監督・脚本を手掛けることを発表いたしました。
本作では、戦中、惠介が脳溢血で倒れた母を疎開させるために二台のリヤカーを用意し、一台に母を乗せ、もう一台は身の回りの品を積み、兄・敏三と便利屋と三人で山越えした、という木下監督の実話を軸に、血気盛んな映画青年として軍部に睨まれ、松竹を一時離れるきっかけとなった『陸軍』のエピソードを盛り込みつつ、戦争という時代のうねりに翻弄されながら、母を想う子、子を想う母の真実の愛の物語を描き出します。

木下惠介を演じるのは、山田洋次監督や周防正行監督、北野武監督をはじめ、クリント・イーストウッド監督やガス=ヴァン・サント監督、アッバス・キアロスタミ監督など、日本に留まらず世界の巨匠からラブコールを受ける実力派俳優、加瀬亮。そして惠介の母、たま役には『天城越え』(三村晴彦監督)でモントリオール世界映画祭主演女優賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得るとともに、87年に木下惠介脚本の『二十四の瞳』(朝間義隆監督)の大石先生役も演じた実績のある、田中裕子が決定しました。そして、惠介とともにリヤカーを引き山越えをする惠介の兄・敏三役には、『踊る大捜査線』シリーズでのレギュラー出演のほか、映画、舞台と幅広い活動をみせるユースケ・サンタマリア、便利屋役に『アヒルと鴨のコインロッカー』ほか主演作が相次ぎ、演技力に定評のある濱田岳がキャスティングされました。

手放しの人間賛歌ではなく、人間の美しさや醜さ、そして弱さと強さのありのままを肯定し、名もなき市井の人々の本当の姿を愛をもって見つめ続けた木下惠介監督。
その実像と木下監督の精神を、原恵一監督がどう描くのか、そして、日本映画界屈指の実力派俳優たちとの
コラボレーションでどのような化学反応を起こすのか、是非ご期待下さい。
11月クランクイン。 2013年2月完成予定。 撮影は、浜松ほかにてオールロケを予定。
配給:松竹 制作プロダクション:松竹撮影所

<木下惠介を演じる加瀬さんへの原監督からのコメント>
「加瀬さんは穏やかな印象ながら、芯の強さも感じさせる人。木下監督が監督を辞めようとしていた時期の、絶望からの再生をきっと繊細に演じてくれると思います。」

<加瀬さんコメント>
「時代の激しい流れに巻き込まれながらも、青年時代の木下惠介監督がどうしても手放せなかったもの、
その大切なものを、原監督と一緒に同じ道をゆっくりと辿りながら、みつめていきたいと思っています。」

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執筆者

Yasuhiro Togawa