『アメリ』『クリムゾン・リバー』のマチュー・カソヴィッツ監督・主演作品
1988年「天国に一番近い島」で起こった仏警官30名誘拐人質事件に隠された事実が今、暴かれる。

今から24年前の1988年4月22日、“天国にいちばん近い島”と言われるフランス領ニューカレドニアのウヴェア島で、独立を狙うカナック族のグループがフランスの憲兵隊宿舎を襲撃し4人の警官を殺害、30人を誘拐する事件が起こる。10日間の後に事件は武力によって解決され、過激派19名の死亡と軍の死者2名、重傷1名、人質1名の負傷が発表された。だが、政府から発表されたこの報道は正確な報道ではなく、一部改ざんされた発表であった。実は制圧後に無抵抗の過激派5人を暴行のうえ射殺するという暴挙をフランス政府は隠ぺいしていた。そして政府の報道の矛盾をマスコミが追及したことで発覚、また後にこの制圧部隊の中で交渉役となっていたフランス国家憲兵治安部隊(GIGN)の隊長であったフィリップ・ルゴルジュ大尉が1990年に「La Morale et l’action(モラルと行動)」という手記を発表したことで、この事件はフランス政府にとって歴史の汚点のひとつとなったのである。
『クリムゾン・リバー』などフランス映画界の鬼才マチュー・カソヴィッツがこの「ウヴェア島」事件に興味を持ってから10年の月日を費やし、自身で製作、監督、脚本、編集、そして主演までを演じた本作。監督としてだけでなく『アメリ』等のヒット作で俳優としても有名なカソヴィッツは、事件の入念なリサーチと、フランス政府、ニューカレドニアと、事件に関わった関係者各位に映画化の許可を得るために奔走し、本作品を作り上げた。だが、その内容にフランス政府は否定し、遺族感情をも巻き込んだ賛否両論の問題作となったのだ。
事実が暴かれていくストーリーのみならず、ジャングル内の戦闘シーンなど、『プライベイト・ライアン』などで描かれたリアリティあふれる戦闘シーンをワンキャメラ、ワンショットで撮り、主人公が事件にかかわっていく過程や圧倒する映像は『地獄の黙示録』のような、観る者をこの事件の目撃者のように体感させていく状況は、まさに映画的な醍醐味を持った作品である。なお、本作品は2012年セザール賞脚色賞にノミネートされている。

予告編::http://youtu.be/y44qvbWbvf0

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執筆者

Yasuhiro Togawa