8 月23 日に開幕した第36 回モントリオール世界映画祭において、ワールド・グレイツ部門に出品された『聯合艦隊司令長官山本五十六—太平洋戦争70 年目の真実—』が、現地時間の25 日、26 日に正式上映を迎えた。
本作品は真珠湾攻撃などを描いており、北米では好まれないテーマにも関わらず、映画祭選定ディレクターの強い希望で、上映が実現した経緯がある。映画祭側からは、プロパガンダ映画と受け取られる危険を冒しても上映すべき、素晴らしい映画であるという最高の評価を受けており、そのため、日本公開から半年以上が経っているにも関わらず特別招待された。
本来はコンペティション部門での出品も検討されていたが、政治的な部分を考慮して、現在のワールド・グレイツ部門への出品という運びとなった。このような戦争映画がモントリオール世界映画祭で選出されるのは、極めて異例のことである。
現地での正式上映では、25 日に約180 人、26 日に約220 人、2 日間合計で400 人を超える多くの観客で会場が埋まった。特に26 日には、開演前に120 人以上の入場待機列ができるなど大変盛況で、現地の観客の本作品に対する期待感が伺えた。
客層は20〜50 代が中心で、男女比が6:4。観客の5 分の1 ほどが、現地在住の日本人であった。また、中には太平洋戦争を経験されたであろう老人の姿も見受けられた。

上映中には、特攻のシーンで感嘆の声が上がるなど、ダイレクトな反応が見られた。また、感極まって泣いている女性の姿も散見した。
エンドロールが流れると、温かく大きな拍手が巻き起こった。
上映終了後には、「本当に良い映画だった」「素晴らしい映画だった」という多くの声に加え、

●アメリカ人男性からは「我々アメリカ人は多くの戦争を始めた。このような映画がアメリカには必要だ」
●ドイツ人男性からは「我々はナチスのことも含めて、映画の状況は理解できる。ヨーロッパからの視点ではなく、日本の視点から当時の状況を理解することができた」
●カナダ人女性からは「今、日本には尖閣諸島の問題があるなか、平和について考えさせられる非常に良い映画であった。映画祭だけでなく、通常の映画館で上映をして海外の多くの人に見せるべきである」
など、多くの感想が寄せられ、世界各国の観客に本作品に込められたメッセージが伝わる上映となった。
東日本大震災を経た日本と国民のアイデンティティーを、歴史に探ろうとする外国人が増えているようだ。
『聯合艦隊司令長官山本五十六』のDVD&ブルーレイは、バンダイビジュアルより好評発売中。

【上映データ】※日時は現地時間
・第1 回目上映8/25(土) 11:00〜@QUARTIER LATIN CINEMA 約180 人来場
・第2 回目上映8/26(日) 18:40〜@QUARTIER LATIN CINEMA 約220 人来場

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執筆者

Yasuhiro Togawa