小惑星探査機「はやぶさ」が、幾多の困難を乗り越え、無事地球に帰還したというニュースが世界中をかけめぐったのは、ちょうど一年前(2010年6月13日)。
また、古川聡宇宙飛行士らが搭乗するソユーズ宇宙船がバイコヌール宇宙基地から飛び立ったのはつい3週間前(2011年6月8日)である。古川宇宙飛行士がツイッターでつぶやいた「宇宙酔い」に日本中が彼を心配し、滞在11日目に「回復ぶり」が伝えられるとホッと胸をなでおろした。
そんな宇宙に関する報道が相次ぐ中 7月9日午前0:29(米東部時間7月8日午前11:29)、宇宙開発の先頭を走ってきたスペースシャトルの最後の打ち上げが成功した。
米国が開発したスペースシャトルは、1981年4月12日の初飛行から30年にわたり、世界の宇宙開発の代名詞とも呼べる存在であったが、老朽化および高い運用費などから、今回の退役が決定した。その30年の歴史に幕を引くのは アトランティス号。

その名は、米マサチューセッツ州ウッズホール海洋研究所で、海洋生物収集などで活躍した調査船に由来する。1985年に初フライトを成功させ、1989年には金星探査機マゼランと木星探査機ガリレオを宇宙に送り出し、それらは人類に多くの情報をもたらした。昨年5月に最後の任務を終える予定だったが、その後NASAから追加ミッションが発表され、最後のスペースシャトルという大役を担うこととなった。またアトランティス号は、5台ある実用機の中で、日本人宇宙飛行士が搭乗していない唯一のスペースシャトルである。そんなアトランティス号には、実は今回、映画『宇宙兄弟』出演の小栗 旬、岡田将生の写真が“搭載”されている!

衛星やISS(国際宇宙ステーション)の構成要素、宇宙実験室など、様々な搭載物を運ぶのが目的のスペースシャトル。全体で250万個の部品を使い、“人類が製造した中で最も複雑な機械”と言われている。これまでたった1g写真1枚でも、ミッションと直接関係のないものを積むことはできなかったのである(宇宙飛行士の私物は除く)。しかし、JAXA(独立行政法人 宇宙航空研究開発機構)が開始した、ISS「きぼう」日本実験棟を民間で活用する新しい枠組みが、それを可能にした。2009年の、日本初の有人実験施設「きぼう」の完成により、JAXAは「きぼう」を利用した実験テーマの公募に加え、企業との共同研究やビジネス展開を開始。私たちがより身近に“宇宙”を感じ、宇宙開発技術を利用するための動きが高まっており、今回の試みもそのひとつと言える。
今回、『宇宙兄弟』に許されたのは、重量わずか2g、写真2枚分のスペース。
夢を追う兄弟の姿を焼き付けた2枚の写真(同様の写真を2枚)は、アトランティス号のミッドデッキロッカーに収納されている。この貴重なスペースが許された理由は、映画『宇宙兄弟』が“宇宙飛行士”という存在を身近に感じさせる映画であり、かつ夢のある壮大なドラマであるため。特に『宇宙兄弟』のストーリーに賛同し、出演者の写真を打ち上げることを熱望したのは、宇宙利用を展開する(株)ラグランジェ社。今回の宇宙利用を可能にした担当者は、「震災の影響が色濃く残る中、最後のスペースシャトルに夢を乗せて打ち上げたかった」と話す。
映画で兄弟を演じる小栗 旬と岡田将生が写った写真は、つい先日(7月1日)にクランクアップしたばかりの映画『宇宙兄弟』の撮影現場で撮られたもの。遥かなる宇宙へと打ち上げられた二人(の写真)は、42年前に人類初の有人月面着陸が成功した日(7月20日)に帰還予定!!!

※備考 「はやぶさ帰還」に端を発する“宇宙ブーム”は、映画界をも熱くしている。今年5月に公開したドキュメンタリー映画『はやぶさ BACK TO THE EARTH』(角川映画)を始めとして、10月には、『はやぶさ-HAYABUSA-』(20世紀フォックス)が、来年には『小惑星探査機 はやぶさ—遥かなる帰還—(仮題)』(東映)や、『おかえり、はやぶさ』(松竹)などの公開が決定している。“はやぶさ”にまつわるドキュメンタリーの要素が濃い作品群の中、映画『宇宙兄弟』はその名の通り“宇宙飛行士”を“兄弟で目指す”という、幼い頃の約束を軸にした普通の兄弟の物語のなかに壮大な宇宙への憧憬を描いている点で異色。雑誌モーニング(講談社)に連載中の同名の原作コミックは、400万部を超えるベストセラー。今年、小学館漫画賞と講談社漫画賞をダブル受賞(※「20世紀少年」以来2作目。同年ダブル受賞は史上初)

≪キャストコメント≫
「(写真とは言え)”兄弟で宇宙へ行く”という夢が叶って嬉しく思います。
最後のスペースシャトルが無事に帰還することを祈っています」小栗 旬
「いつか本当に僕らが宇宙に行ける日が来るかもしれない、と思いながら
空を見上げたいと思います」岡田将生

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=49171

執筆者

Yasuhiro Togawa