大地揺れ、
津波の跡、後。

東日本大地震発生から一ヶ月あまり——。
車窓に、瓦礫の山と広漠たる荒野の、灰色の風景が流れてゆく。   
一人の映画作家が、尼崎の町医者とともに被災地へ向かっていた。

そこで出逢ったひとびとは、静かに語りはじめる。一台のカメラが、その声と風景を何度も往復しながら、ただひたすらに素描を重ねていく。監督は、『ただいま それぞれの居場所』で、介護現場のいまと希望を描き、平成22年度文化庁映画賞「文化記録映画大賞」を受賞した大宮浩一。
日付も地名も、人の名も付すことのないこの映画は、未曽有の大地震と津波の跡を、そして、その後もなお続くいとなみを、決して情報に還元することなく、スクリーンに大きく映しだしてゆく——はたして「復興」とは何を意味するのか? 私たちは何処へゆくのか? 映画館の暗闇に、いくつもの問いが、浮かんでは、消えていく。

【コメント】
誰が悪いわけでもないのに、自分のせいでもないのに、どうしてこんな災厄が起きてしまうのだろう。そして人間はそれを目の当たりにしてどうやって生きていけばいいのだろう。この春の出来事の中心にあった筈の問いかけに、この映画は一番に答えてくれている。
報道ではなく正に映画。出来事が起こってから短期間に上映まで行うという行為も含め、映画にはまだまだ未来があるのだと勇気を貰った。——瀬々敬久(映画監督)

記憶にある故郷・気仙沼は目の前にあるのに、生活の音、匂いが一切ないことに、ある種の恐れを抱いたのを思いだしました。テレビや新聞では、さも騒々しく取り上げられている現地ですが、決して大声もなく音もなく、暗いトーンの静寂だけが降り注いでいました。
被災地で私自身感じた感覚が、映像化されていることに驚きました。
——小野寺英孝(医師/聖マリアンナ医科大学 災害医療支援班)———————-

謝意  被災された全ての皆様 被災地にて救援活動をされている全ての皆様 玄侑宗久
監督:大宮浩一/企画:長尾和宏・大宮浩一/撮影:山内大堂/編集:遠山慎二
整音:石垣哲/構成:辻井潔/車両:港谷泰之/宣伝美術:成瀬慧
製作・著作:大宮映像製作所/配給:東風
|2011年|Japan|HD|75min|docmentary|www.mujosobyo.jp|

6/17(金) 19:30よりオーディトリウム渋谷にて先行上映、6/18(土)よりロードショー
7/2(土)より大阪・シアターセブンにてロードショー、今夏名古屋シネマテーク他、全国順次公開

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執筆者

Yasuhiro Togawa