村上春樹と並び評され、5度の芥川賞候補に挙げられながら文学賞にめぐまれず、41歳で自ら命を絶った不遇の作家・佐藤泰志の遺作の連作短編小説「海炭市叙景」を、熊切和嘉監督が映画化。函館をモデルにした“海炭市”を舞台に、そこに生きる人々の姿を浮かび上がらせました。
出演は、谷村美月、竹原ピストル、加瀬亮、山中崇、三浦誠己、南果歩、小林薫など、日本映画を支えるキャストが集結。その他の、メインキャストを含め数多くの登場人物をオーディションで選ばれた地元・函館の方々が演じています。
函館市民有志による製作実行委員会、および地元ボランティアが、映画の企画からロケ協力までを行い完成させた本作。変わりゆく地方都市に生きる市井の人々の姿を刻む、心揺さぶる傑作が誕生しました。
1980年代後半のバブル期に書かれた小説でありながら、疲弊した地方都市の姿と、そこでやりきれない想いを抱えながらも懸命に生きる登場人物たちの姿は、まさに現代社会に生きる私たちの姿であり、今の私たちが求める物語であります。

映画化をきっかけに出版された文庫本(小学館刊)は、新聞各紙、雑誌等で多く取り上げられ、大きな注目を集め、増版を重ねました。その後、小学館より4月に「移動動物園」、5月に「黄金の服」、河出書房より4月に「そこのみにて光輝く」、5月「きみの鳥はうたえる」と「もうひとつの朝 佐藤泰志初期作品集」、6月7日に「大きなハードルと小さなハードル」が発売となり、著者の代表作が死後20年経った2011年に連続して出版されるという快挙を成し遂げました。これを記念して、6月中旬に書店イベントも開催予定です。
映画のほうも、観たものに深い余韻と生きることへの実感を呼び起こす静かな物語に絶賛の声があがり、東京渋谷ユーロスペースほか、舞台となった北海道でもロングランヒットを記録しました。
そこで、このたび渋谷ユーロスペースにて凱旋上映が決定いたしました。

6月11日(土)より2週間限定
渋谷ユーロスペースにて凱旋上映!

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執筆者

Yasuhiro Togawa