「探偵はみんな集めてさてと言い」——巨匠・横溝正史氏の作と伝えられる川柳です。ミステリ読者にはおなじみの、待ってましたと声をかけたくなるシーンですが、みなさんはこの一句に象徴されるトリックたっぷり、謎解きどっさりの物語が、わが国のスクリーン上でも展開されていたことをご存じでしょうか。決して相性はよくないとされてきた本格推理と映像、とりわけ日本映画にも、探せばこんなにもたくさんの秀作があったのです。
このジャンルに病みつきの連中ばかりが集まった本格ミステリ作家クラブの十周年を記念し、映画ファンと推理ファンの両方にお届けする特別企画。颯爽と登場する名探偵たちにどうか盛大な拍手を! (ミステリ作家 芦辺拓)

第1週 <金田一耕助スタイルブック> 6月4日(土)〜6月10日(金)
元祖金田一耕助は片岡千恵蔵なり!「3本指の男」は原節子が助手として登場。
珍しき健さんの金田一「悪魔の手毬唄」も上映。
1. 『三本指の男』 監督:松田定次 原作:横溝正史「本陣殺人事件」 昭和22年 白黒 *東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
2. 『獄門島 [総集編]』 監督:松田定次 原作:横溝正史 昭和24年 白黒 *東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
3. 『悪魔が来りて笛を吹く』 監督:斎藤光正 原作:横溝正史 昭和54年 カラー
4. 『三つ首塔』 監督:小林恒夫、小沢茂弘 原作:横溝正史 昭和31年 白黒
5. 『悪魔の手毬唄』 監督:渡辺邦男 原作:横溝正史 昭和36年 白黒
6. 『吸血蛾』  監督:中川信夫 原作:横溝正史 昭和31年 白黒
7. 『本陣殺人事件』 監督:高林陽一 原作:横溝正史 昭和50年 カラー

第2週 <異色作と異色俳優たち> 6月11日(土)〜6月17日(金)
乱歩映画の最高傑作、三国連太郎主演「死の十字路」
和製クリスティー、仁木悦子の唯一の映画化作品「猫は知っていた」
誘拐ミステリと法廷ものを絡めた高木彬光傑作ミステリ「誘拐」
8. 『死の十字路』 監督:井上梅次 原作:江戸川乱歩「十字路」 昭和31年 白黒  *16mmで上映
9. 『蜘蛛男』 監督:山本弘之 原作:江戸川乱歩 昭和33年 白黒  *16mmで上映
10. 『影の爪』 監督:貞永方久 原作:シャーロット・アームストロング 昭和47年 カラー
11. 『誘拐』 監督:田中徳三 原作:高木彬光 昭和37年 白黒  *16mmで上映
12. 『最後の審判』 監督:堀川弘通 原作:W・P・マッギヴァーン 昭和40年 白黒
13. 『南郷次郎探偵帳  影なき殺人者』 監督:石川義寛 原作:島田一男 昭和36年 白黒  *16mmで上映
14. 『猫は知っていた』 監督:島耕二 原作:仁木悦子 昭和33年 白黒  *16mmで上映
第3週 <トリックの饗宴> 6月18日(土)〜6月24日(金)
「天国と地獄」以前に走る列車でのトリックがある異色ミステリ「悪魔の囁き」。
原案はあの植草甚一というだけでも見る価値は充分。上原謙の怪演!
ミステリ好きの若尾文子のベストミステリ「私を深く埋めて」
15. 『悪魔の囁き』 監督:内川清一郎 原案:植草甚一 昭和30年 白黒  *デジタル上映
16. 『四万人の目撃者』 監督:堀内真直 原作:有馬頼義 昭和35年 白黒
17. 『わたしを深く埋めて』 監督:井上梅次 原作:ハロルド・Q・マスル 昭和38年 カラー
18. 『猟人日記』 監督:中平康 原作:戸川昌子 昭和39年 白黒
19. 『真昼の罠』 監督:富本壮吉 原作:黒岩重吾 昭和37年 白黒
20. 『肌色の月』 監督:杉江敏男 原作:久生十蘭 昭和32年 白黒
21. 『「空白の起点」より 女は復讐する』 監督:長谷和夫/原作:笹沢左保「空白の起点」 昭和41年 白黒

第4週 <七つの顔の映画だぜ> 6月25日(土)〜7月1日(金)
チャンバラをピストルに変えて、千恵蔵の推理がうなる「多羅尾伴内」。
驚愕のトリックが話題の伝説のテレビムービー「乱れからくり」。
エドマクベインの傑作警察小説を映画化「恐怖の時間」。
22. 『多羅尾伴内  十三の魔王』 監督:松田定次 昭和33年 カラー
23. 『死者との結婚』 監督:高橋治 原作:ウィリアム・アイリッシュ 昭和35年 白黒
24. 『奴が殺人者だ』 監督:丸林久信 原作:樫原一郎「汚れた刑事」 昭和33年 白黒
25. 『二十一の指紋』 監督:松田定次 昭和23年 白黒  *16mmで上映
26. 『乱れからくり ねじ屋敷連続殺人事件』[テレビドラマ版]  監督:佐藤肇 原作:泡坂妻夫「乱れからくり」 昭和57年 カラー  *16mmで上映
27. 『恐怖の時間』 監督:岩内克己 原作:エド・マクベイン「殺意の楔」 昭和39年 白黒
28. 『姿なき目撃者』 監督:日高繁明 原作:渡辺啓助「浴室殺人事件」 昭和30年 白黒

一般¥1200/シニア・学生¥1000
自由席定員制(99席)・整理券制 ★各回完全入替制
神保町シアター(千代田区神田神保町1-23/Tel.03-5281-5132/)
地下鉄「神保町駅」A7出口3分/JR「御茶ノ水駅」御茶ノ水橋出口8分
三省堂書店すずらん通り側出口対面・浅草厨房の角入る

執筆者

Yasuhiro Togawa