パン・ホーチョン監督の日本初劇場公開作品となる『ドリーム・ホーム』の公開を記念して、1999年〜2011年までの個性的すぎる彼のフィルモグラフィーの中から、厳選した5作品を劇場初公開します!商業デビュー前となる幻の短編から、ベルリン映画祭でも絶賛された代表作、そして『ドリーム・ホーム』へと繋がる意欲作。コメディ、ラブストーリー、サスペンス、ホラー…と、特定のジャンルにとらわれることのない変幻自在のカメレオン監督が生んだ、唯一無二の作品群を一気に体感できるチャンスです。

パン・ホーチョン(彭浩翔)とは?
1973年、香港生まれ。14歳から自主映画を撮り始め、92年頃からはTV局で脚本家として活動。97年には小説「全職殺手」 を発表し、2001年にジョニー・トー監督の手により『フルタイム・キラー』として映画化。同年には『ユー・シュート、アイ・シュー ト』で長編監督デビュー。その後も、香港アカデミー賞で最優秀新人監督賞を受賞した第2作『大丈夫』など、ジャンルに捉わ れない話題作を連発。ヒットメイカーとしての顔を持ちながら、ひと筋縄ではいかないストーリー展開、現代社会を風刺したブ ラックユーモア、そして独特な映像美と音楽の融合によって生み出される、独特の世界観。これらによって、世界では“香港 のタランティーノ”、“次世代のウォン・カーウァイ”とも称される。日本でも、東京国際映画祭で特集上映「香港新人類−彭浩 翔」が組まれるなど、熱狂的なファンも多く、チケットは常にソールドアウト。だが、日本での劇場公開作は長編監督8作目の 『ドリーム・ホーム』が初めてと
『夏休みの宿題/暑期作業』 (1999年・12分)
97年に発刊した小説「フルタイム・キラー」の映画化権で得た資金を、全額投資して製作した12分間の短編。夏休みの最終日になっても、まだ宿題が終わっていない少年が生み出す、恐ろしい妄想を独特のタッチで描く。台湾アカデミー賞において最優秀短編賞に輝くほか、世界の映画祭でも上映。自主映画ながら、監督の類い稀な才能が随所に 見られる、すべての原点ともいえる一作。

『ビヨンド・アワ・ケン/公主復仇記』 (2004年・98分)
香港を代表するアイドルTwinsのジリアン・チョンと、『ションヤンの酒家』の中国人女優タオ・ホンという、Wヒロインを主演に 迎えた、監督3作目。女優志望の中国人・シャーリーの前に現れた、元教師のワイチン。シャーリーの彼氏である、消防士 のケンと過去に付き合っていたという彼女は、彼とベッドで撮った写真を取り戻してほしいとシャーリーに頼むが…。台湾に 留学していた監督の女友達の身に起こった出来事をベースに映画化。女性脚本家との共同脚本により、女性の友情を描い たガーリー・ムービーになっているが、クライマックスへの展開はいかにもパン・ホーチョン作品。ケン役を演じたのは、『香港 国際警察/NEW POLICE STORY』『新宿インシデント』のダニエル・ウー。

『AV』 (2005年・104分)
アダルトビデオをこよなく愛する監督が、『ハリウッド★ホンコン』『イップ・マン/序章』のウォン・ユウナムほか、『ドリーム・ ホーム』のローレンス・チョウ、デレク・ツァンら、若手俳優陣を集めて撮った、監督4作目。将来にこれといった夢も希望もな いまま、卒業を控えた大学生たちが、ナンパ目的で映画製作を開始。さらに、日本からAV女優を招聘し、あわよくば彼女と Hできるかも…という夢を実現させようとする。インパクトのあるタイトルや設定、本作の出演後に惜しまれながら引退したA V女優・天宮まなみの出演など、公開当時にはセンセーショナルな話題を呼んだが、じつはせつない青春群像劇に仕上がっ ている。香港映画評論
学会が選ぶ、「今年の10本」に選出されている。

『イザベラ/伊莎貝拉』 (2006年・109分)
中国に返還される前年、1999年のポルトガル領マカオを舞台にした、監督5作目。窮地に追い込まれた汚職警官と、彼の娘だと名乗る少女の奇妙な共同生活が抒情的に描かれる。『インファナル・アフェア』のキョン役で、高評価されたチャップマン・トーを主演に迎え、彼とともに製作も務める。ヒロインに抜擢されたイザベラ・リョンは、本作の好演か ら香港アカデミー賞など、数々の映画賞で主演女優賞候補となり、後に『ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝』のヒロインにも抜擢。また、アンソニー・ウォンやショーン・ユーのほか、ジョシー・ホー、そして『ドリーム・ホーム』同様、共同脚本を務めたデレク・ツァンも出演。ベルリン国際映画祭では銀熊最優秀音楽賞を受賞するなど、世界的に監督 の名を広めた。

『些細なこと/破事兒』 (2007年・90分)
監督が21歳のときに書いた短編小説を映画化した、監督7作目。倦怠期を迎えた中年夫婦、見習いの殺し屋、恋する女子 高生などに起こる、“些細な出来事”をテーマに、「不可抗力」「公徳心」「做節」「徳雅星」「大頭阿慧」「増値」「尊尼亞」といっ た、意味深なタイトルによる全7話が展開。『ビヨンド・アワ・ケン』のジリアン・チョン、『ドリーム・ホーム』のイーソン・チャン、 『イザベラ』のチャップマン・トーのほか、日本でモデルとしても活躍するアンジェラ・ベイビーや、時の人となったエディソン・ チャンなど、オールスター・キャストが共演。また、セックスやヴァイオレンス、ブラックでシニカルな笑いを散りばめ、当初か ら中国大陸での上映を視野に入れない監督のアグレッシヴな姿勢は、『ドリーム・ホーム』へ繋がっていく。

※5/28(土)〜6/24(金)レイトショー!

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執筆者

Yasuhiro Togawa