1960年代、フランンスで“ヌーヴェル・ヴァーグ”が起こった時、同じくブラジルでも“シネマ・ノーヴォ”が起こった。
反ハリウッドモデルを特徴とする映画愛好家たちの一世を風靡した伝説の作品群を、12月4日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて期間限定ロードショー!

【監督紹介】
ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ
Joaquim Pedro de Andrade
1932年、リオデジャネイロ生まれ。大学で物理学を専攻するが、在学中にシネクラブを立ち上げ、映画の上映、批評、自主製作活動を行う。2本の短編ドキュメンタリーを監督した後、61年にシネマ・ノーヴォの象徴的作品として知られる「five times favera」の一篇、『キャット・スキン』を監督。長編第二作にあたる『マクナイーマ』(’69)は批評、興行面双方で成功を収め、その後も劇映画、ドキュメンタリーの双方で活躍するが、56歳の若さでガンのため死去。

ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
Nelson Pereira dos Santos
1928年、サン・パウロ生まれ。サン・パウロ法科大学に学び、弁護士、ジャーナリスト、映画評論家、助監督を経て、リオのスラムを舞台にした『リオ40度』(’56)で長篇監督デビュー。本作は後に、新しいブラジル映画(シネマ・ノーヴォ)の先駆的作品とみなされるようになる。

グラウベル・ローシャ
Glauber Rocha
1938年、北東部バイーア州生まれ。監督になる前は映画評論家として活躍。シネクラブを中心とする文化活動の中心人物でもある。ネルソン・ペレイラの『乾いた人生』に協力し、62年『バラヴェント』で監督デビュー。次回作『黒い神と白い悪魔』(’64)によってシネマ・ノーヴォの代表的な監督の一人となる。

【上映作品紹介】
『夫婦間戦争』 
Guerra conjugal 1975年(88分)
監督・脚本:ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ/原作:ダウトン・トレヴィザン/撮影:ペドロ・デ・モラエス/音楽:イアン・ゲスト
出演:クリスティーナ・アシェー、リマ・ドゥアルチ、イタラー・ナンディ、カルロス・グレゴリオ

カンヌ国際映画祭監督週間出品
ブラジル社会を鋭く批評した艶笑コメディ
ブラジル南部の街クチバを舞台に繰り広げられる3つの男女の物語。クライアントの女性を誘惑しようとする弁護士、究極の快楽を与えてくれる女性を探す男、そして諍いを繰り返す初老の夫婦。艶笑コメディの形式をとりつつもブラジル社会を鋭く批評した作品。

『リオ40度』
Rio, 40 Graus 1956年(100分)
監督・原作・脚本/ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
撮影/エリオ・シルヴァ
出演/ジェゼ・ヴァラダン グラウセ・ローシャ ロベルト・バタリン

1956年、パリで上映され、トリュフォーやゴダールを熱狂させたシネマ・ノーヴォの先駆作。
灼熱のリオ。カブスの丘のスラムに暮らす5人のピーナッツ売り少年を中心に、金と欲の力関係に翻弄される人間たちの姿を縦横無尽に交錯させた、都市生活者のタペストリー。ネオレアリスモなどに影響を受けつつ、政治状況への積極的な加担と連帯への希望を表明したこの作品は、新しいブラジル映画(シネマ・ノーヴォ)の到来を告げることになった。

『乾いた人生』
Vidas Secas 1963年(105分)
監督・脚本/ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
原作/グラシリアーノ・ラモス 撮影/ジョゼ・ローサ ルイス・カルロス・バレット 製作/エルベルト・リッシャー ダニーロ・トゥレス ルイス・カルロス・バレット
出演/アッチラ・イオリオ マリア・リベイロ オルランド・マセード

ブラジルの著述家グラシリアーノ・ラモスの同名小説を映画化。カンヌ映画祭で絶賛され、シネマ・ノーヴォの存在を世界に知らしめた傑作!
干ばつのために難民生活を強いられたファビアーノ一家。ようやく見つけた農場での生活も、権力者の搾取と横暴からは逃れられない。そして、新たな干ばつが一家をふたたび「地獄」へと突き落とす。ブラジル東北部(ノルデスチ)の内陸に生きる零細農民の苛酷な現実を、独特な世界観と地を這うような目線でドキュメンタリー・タッチに描く。

『切られた首』 
Cabeças Cortadas 1970年(94分)
監督・原案・脚本:グラウベル・ローシャ/撮影:ハイメ・デウ・カサス/美術:ファビアン・プレイグセルペル/音楽:スペインの民謡
オール・スペインロケを敢行!仮想国・エルドラドをテーマに繰り広げられる劇・音楽・詩の狂宴
とある第三国の城の中、ディアスは狂乱状態で仮想国”エルドラド”の権力者になることを夢見るが、地元の原住民や労働者農民たちから抑圧されていた。そして彼の元に奇跡を起こす羊飼いが現れる。羊飼いは彼を魅了し脅しをかける。彼の犠牲者たちの脅威はすぐそこまで迫っていた。危険を十分に察知していたディアスは、ある日、まるで純潔の象徴ともいうべき美しい田舎娘を見つけ、彼女を監禁し自分の葬式に似せた儀式を行おうとするが・・・。

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執筆者

Naomi Kanno