Animations が世界中の映画祭から現代的な短編作品を独自に厳選した刺激的な2プログラム——
現代アニメーションの巨匠の最新作も、若手たちの先鋭的な意欲作も、アニメーション界の今後を担う学生作品も、2000年代のクラシック作品もすべてひっくるめて、「今」を物語る短編アニメーションをスクリーンで堪能できる貴重な機会をお見逃しなく!
吉祥寺バウスシアターをはじめ、全国順次公開予定!
http://www.animations-cc.net/festival10.html

※「Animations Creators and Critics」とは……
2006 年、アニメーション作家山村浩二の呼びかけで結成されたアニメーション作家&評論家集団。
結成時のメンバーは、アニメーション作家の山村浩二、荒井知恵、大山慶、和田淳、中田彩郁、アニメーション研究者・評論家のイラン・グェン、土居伸彰
2007 年よりウェブサイトを公開(http://www.animations-cc.net)、批評や座談会などを中心に、世界の最先端の短編アニメーションについてのコンテンツを随時公開。
2008 年より横浜、広島などにて作品上映会&トークを開催、2009 年からは作家専属制を廃止し、山村浩二・土居伸彰を中心に、短編アニメーションに関する情報・批評をウェブ上を中心に掲載。

東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻主催の「コンテンポラリー・アニメーション入門」に協力するなど、短編アニメーションをめぐる言説の状況改善のための様々な活動を行っています。
2010 年、その新たな展開として「アニメーションズ・フェスティバル2010」の開催を決定。
時代性を強く感じさせる最先端のアニメーションをお届けします。

※アニメーションズ・フェスティバルのコンセプト
——「新しい」アニメーションを提示する試み
近年、短編アニメーションをめぐる状況は活況を呈しつつありますが、それでもまだ、一般に充分認知されているとはいいがたい状況が続いています。多くの優れた作品が、今も作り続けられているのに、それを楽しむ機会は非常に限られているのです。
東京などの限られた数都市では、上映イベントが定期的に開催されているものの、その多くは国ごとの紹介であり、必ずしも全作品に一級のクオリティが保証されているとは限りません。一方で、広島をはじめとして短編を取り上げる映画祭も増えてはいますが、わざわざ現地にまで足を運ばねばならず、アニメーション・ファンのものであるに留まっています。
そのような現状をふまえ、Animations Creators and Critics は、短編アニメーションをめぐる状況のさらなる充実を図るため、新たな試みを行います。
海外の映画祭経験の豊富な山村浩二・土居伸彰の両者が国や時代の枠組みを超えて厳選した、現代性を強く感じさせるハイクオリティな短編アニメーション作品。それを吉祥寺バウスシアターのレイトショーでお届けします。映画館の暗闇で、日常生活の延長線上で、当世一級の短編作品を堪能すること——目指したのはそれです。ウェブ上の貧しい画質・音質での鑑賞とはまた異なる体験が約束されることでしょう。
今回こだわったのが、ポップさとプログラミングの批評性です。

ポップさ——ときに「アート」などという名称でくくられ、敷居の高さを感じさせることも多かった海外短編アニメーションですが、今回は、先鋭的でありながらもポップさを持ち合わせたものを厳選しました。短編に日常的に親しんでいない方であっても難解さを感じることなく、それでいて繰り返しの鑑賞に充分耐えうる質のものに触れることで、短編アニメーション世界の豊穣さを体験してもらいたいのです。
プログラミングの批評性..各地のアニメーション映画祭では年々エントリの数が増えるなど、アニメーション作品の量の増加は留まることを知りません。しかし一方で懸念されるのはアニメーションを「観る」ための基準の欠如です。Animations Creators and Critics では、2006 年の活動開始以降、短編アニメーションをめぐる言説の充実化のために寄与することを常に意識してきましたが、今回の「アニメーションズ・フェスティバル」でもそれは変わりません。個々の作品のクオリティは保証済みですが、日本初公開となる新たな作品はもちろんのこと、見慣れたものであったとしても、他の作品とともに見ればまた新たな魅力が発見される——そんなプログラムになることを意識しました。

総合的なコンセプトは「新しいアニメーション」です。「アート・アニメーション」でもなく、「アニメ」でもなく、ただ純粋に、アニメーションに対する考え方を一新させてくれて、「アニメーション」としか形容しようのないもの——それこそが私たちがみなさんにお届けしたいものなのです。
二週間のレイトショーというほんの小さな規模のフェスティバルですが、これが最初の一石となって、アニメーションを観る新たな価値観が築かれていくことを願っています。

A プログラム 2010年(内的)宇宙の旅 9作品、99分
『頭山』(2002年、10分、日本)監督:山村浩二
ケチな男がサクランボの種を食べたせいで、頭に桜の木を生やす。そこにむらがる無責任な大衆や、背後で不気味にそそりたつ高層ビル街。古典落語に現代的な息吹を吹き込んだ2000 年代の名作は、ちっぽけで視野の狭い人間たちの世界の背後に、巨大な宇宙を覗かせる。アヌシー、広島グランプリ、米アカデミー賞ノミネートほか。
(c)Yamamura Animation

『スキゼン』(2008年、13分、フランス)監督:ジェレミー・クラパン
150 トンの隕石と衝突したアンリは、自分の身体から91cm 離れてしまうのだが、そのことを誰にも理解してもらえない。
アニメーションだからこそ可能になる現代社会の宇宙的孤独感の表現。世界と断絶したアンリが沈みこむ内的宇宙。カンヌ映画祭コダック賞、アヌシー観客賞受賞ほか。
(c)Dark Prince

『愛と剽窃』(2010年、7分、ドイツ)監督:アンドレアス・ヒュカーデ
あんたのキャラクター、好きなんだ。盗んでいいかい?——マルから始まり、マルへと収束する、アニメーション・キャラクターたち(一部実在人物)の壮大なメタモルフォーゼ・ユニバース。ザグレブ特別賞、アヌシー音楽賞ほか。
(c)Studio Film Bilder

『タッドの巣』(2009年、5分、イギリス)監督:ペトラ・フリーマン
しなるムチ、小さな人、大きな人、伸びる髪、ハサミ……タッドの巣、それは少女たちが必ず陥り、帰還できるそのときまで、感覚の記憶を育む場所。少女の心に宿る暗闇を生理的・官能的になぞるようなフリーマンの油絵アニメーション、久々の新作。
(c)Animate Projects

『ルシア/ルイス』(2007-2008年、8分、チリ)監督:ヨアキン・コチナ、クリストバル・レオン、ナイルズ・アタラー
ルシアはルイスに恋した日のことを思い出す。今はどこかに消えてしまったルイスのことを。遠くに響くオオカミの声は彼の声を思わせる。心のざわめきが感染し、家具が壊れ、土が溢れ、壁が木炭で塗り込められる。致命的な出来事の起った夏の記憶が蘇る、戦慄の立体アニメーション二部作の完全版。ファントーシュ映画祭グランプリ(『ルシア』)、ザグレブ特別賞(『ルイス』)ほか。
(c)Diluvio Gallery

『RGBXYZ』(2008年、12分、アイルランド)監督:デイヴィッド・オライリー
すべてを捨てて都会に出て来た少年は、灰色の非人間的な都市環境に打ちのめされながらも、巨大な悪と対峙する——それが彼の運命なのだ。コンピュータ・バグのようなビジュアルで構成された無機質世界で語られる、現代の寓話。カルタスヴィラドコンデ最優秀アニメーション賞ほか。
(c)David OReilly Animation

『このマンガはお前の脳をダメにする』(2008年、5分、アメリカ)監督:ブルース・ビックフォードクスリで雑然とした心が我に返ろうと、神秘的な灯台と幼年期の記憶に導かれていく……かつてフランク・ザッパのお抱えアニメーターだった伝説の存在から届いた解体と生成譚。粘土だけじゃなく線画でも凄まじいんです。

『きっとすべて大丈夫』(2006年、17分、アメリカ)監督:ドン・ハーツフェルト
普通の人ビルの平凡な日常が、迫り来る病魔によって、ゆっくり、ゆっくりと崩壊していく。北米で絶大の人気を誇るハーツフェルトが贈る大作シリーズの第一弾。暗闇に浮かぶ棒線画と実写の驚くべきコンビネーションが開示する、日常的崇高の世界。惰性的な世界に差し込む光、このうえなく新鮮な雨。サンダンス短編部門審査員大賞ほか。
(c)bitter films

『あなたは私の誇り』(2008年、22分、アメリカ)監督:ドン・ハーツフェルト
死の淵から抜け出したビルに、今度は遺伝という暗い影が投げかけられる。家族の狂気の歴史に、ビルは自分の運命を次第に自覚する。『きっとすべて大丈夫』の続編。シンプルな描線が宇宙を凝縮し、ビルの夢想は時空を超えていく。ファーゴ映画祭最優秀作品賞・脚本賞ほか。
(c)bitter films

B プログラム とかくこの世はせちがらい 10作品 計103分
『フライング・ナンセン』(1999年、11分、ウクライナ/アメリカ)監督:イゴール・コヴァリョフ
探検家ナンセンは、女が待つ北極へと向かう。アニメーション界のタルコフスキー、もしくはブレッソンによる、極私的なフェイクドキュメンタリーアニメーション。イ・カステッリ・アニマティ映画祭グランプリ、オタワ特別賞ほか。
(c)Klasky Csupo

『わからないブタ』(2010年、10分、日本)監督:和田淳
みんなブタのことを知っているし、ブタもみんなのことに気付いているが、それぞれどれくらいにどんなふうに知っているかは判らない。お母さんもお父さんのことが判らない。絶妙の間と反復のリズム、触感表現。人々のあいだのズレや不理解を許容する、奇妙でやさしい物語。アヌシー、ザグレブ、広島入選ほか。
(c)Atsushi Wada, Tokyo University of Arts
『プリーズ・セイ・サムシング』(2009 年、10 分、アイルランド/ドイツ)監督:デイヴィッド・オライリー
遠い未来に展開される、ネコとネズミの夫婦の困った関係の物語。純真な妻と冷酷な夫。レトロゲームのような3DCG で語られる、各25 秒の高速23 エピソードが構成するカートゥーン世界の現代的アップデート。お願いだから何か言って、なんだっていいから。ベルリン短編部門金熊賞、カートゥーン・ドール(ヨーロッパ最優秀アニメーション作品)受賞ほか。
(c)David OReilly Animation

『ダスト・キッド』(2009年、10分、韓国)監督:ヂョン・ユミ
寒い冬の夜遅く、掃除を始めたユージンのもとにダスト・キッドが現れる。彼女たちは自分の姿によく似ていて、片付けても片付けてもきりがない……韓国の新鋭が贈る、自分自身と折り合いをつけることに関する現代の寓話は、宗教的な静けささえも漂わせる。カンヌ映画祭公式招待ほか。
(c)Sensitive Bear

『ボリス』(2009年、4分、アメリカ)監督:ダニエル・ランドクイスト
タイコを叩くのが大好きなボリス。その音で村人の気は狂いそう。でも誰も彼を止められない。村人たちが最終手段を選ぶとき、ボリスはいかに抵抗するのか? アメリカ人にしか作れない極端なメタモルフォーゼが語る、アグリーでファニーな物語。非常に残酷だが、軽やかで気持ちがよい。アヌシー入選ほか。
(c)Daniel Lundquist

『向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった』(2009年、6分、日本)監督:植草航
向ヶ丘千里は、めがねをかけた女の子に自分の存在を気付いてもらいたい。青春の孤独な焦燥感を画面上に滾らせる、美少女の地団駄アニメーション。滑らかな動きと過剰な情報力は快楽というよりも若者の自意識過剰な内面世界へとダイレクトに接続する。学生CGコンテスト優秀賞、下北沢映画祭グランプリ、YouTube Video Award Japan 2009 ノミネートなど。
(c)Wataru Uekusa

『ラビット・パンチ』(2008年、6分、イギリス)監督:クリスティン・アンドリュース
僕たちの暮らす場所では何も起こらない。だから特別なことをすることにした……北イングランドに暮らす14歳の少年の心に宿る苛立ちとやるせなさ。彼の人生に到来する、ちっぽけながらも致命的な一撃。韓国国際学生アニメーション映画祭グランプリなど。
(c)Kristian Andrews

『HAND SOAP』(2008年、16分、日本)監督:大山慶
ニキビ、団地、カエルの解剖、黒電話、両親のセックス、女子学生の膝頭、そして雪。皮膚や髪の毛の接写画像のコラージュが構築する過剰なマチエール。かつて思春期を経験したすべての人に贈る静かな物語。ヨコハマ映像祭優秀賞、オーバーハウゼン映画祭賞など。
(c)Kei Oyama

『ディアロゴス』(2008年、5分、エストニア)監督:ウロ・ピッコフ
あらゆるものがハイテクでコンピュータに頼った現代社会を皮肉るコメディ。すべてを破壊し、無意味に帰する、フィルムスクラッチ新世代! 私はきっと飛べるはず、アイ(目)・キャン(缶)・フライ(蠅)! オタワ審査員特別賞など。
(c)Eesti Joonisfilm

『雨のダイバー』(2010年、25分、エストニア)監督:プリート・パルン&オリガ・パルン
男の仕事は昼の潜水夫。女の仕事は夜の歯科医。二人のキスはいつも別れのキス。男は潜ろうと、女は眠ろうとする。しかしその試みは果たされず、そして船は沈んでいく。エストニアの巨匠が新たなパートナーを得て辿り着いた、シュールと静けさと切なさの境地。ザグレブ、アニマ(ベルギー)グランプリなど。
(c)Eesti Joonisfilm

9月18日より、吉祥寺バウスシアターにて
二週間限定レイトショー公開!

アニメーションズ・フェスティバル2010 公式サイト:
http://www.animations-cc.net/festival10.html
アニメーションズ 公式サイト:
http://www.animations-cc.net

執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa