1967年『俺たちに明日はない』が公開された時、TIME誌が表紙で“ニューシネマ——暴力、セックス、アート”と表現した事からはじまったとされるアメリカン・ニューシネマは、‘60年代前半、一時崩壊説まで飛び出していたハリウッド復興のきっかけとなり、『卒業』『ワイルドバンチ』『イージー・ライダー』『明日に向かって撃て!』『真夜中のカーボーイ『いちご白書』『ファイブ・イージー・ピーセス』『ラスト・ショー』などなど数多くの映画史に残る作品が製作されて“ハリウッド・ルネッサンスの再現“とも謳われました。
そんななか、‘70年の『M★A★S★H(マッシュ)』の世界的な大ヒットで一躍注目を集めたロバート・アルトマン監督が、前作のヒットで製作者の信頼を得たことを逆手に、その勢いでやりたい放題、好き放題で作り上げた愛すべき映画が『バード★シット』(‘70)である。舞台となったアストロドームは、世界初の屋内野球場として1965年に開館。NASAのあるヒューストンに建設されたことからアストロドームと名付けられた。『バード★シット』は、アストロドームで初めて撮影された映画であり、初公開時には約24000人!もの観客を集めてここで、プレミア上映も行われた。まさに現代のハリウッド映画のド派手なプレミア上映の元祖と言える。生前のアルトマン監督は、本作を最も好きな映画と語っており、映画の中にも様々な趣向がこらされている。120歳になる守銭奴に起用されたのは、探偵マイク・ハマーのステイシー・キーチ。なんと当時まだ20代にもかかわらず、精巧な特殊メイクで見事120歳の老人に化けている。しかも役柄は人類初飛行を果たしたライト兄弟の兄という設定。映画の見所のひとつとしてロールスロイスやカマロなど様々な高級車が登場し、カーチェイスを繰り広げるが、車のナンバープレイトも映画の題名(鳥の糞)にちなんでか、OWL180(ふくろう)など鳥の名前となっていたり、『M★A★S★H(マッシュ)』に続いて出演しているサリー・ケラーマンには、自身のシーンのパロディとして同じ水浴びのシーンを再現させている。
まだ巨匠と呼ばれる前の、偉大な監督の最も勢いのあった時代の映画『バード★シット』。いまだソフト化もされていない、幻の映画が、初公開から約40年ぶりにスクリーンに蘇ります。1970年代の自由奔放な時代の空気をぜひともお見逃しなく!

*ZIGGY FILMS ’70S 70年代アメリカ映画伝説と銘打って、『バード★シット』(7月3日より)と『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』(7月17日より)が、連続ロードショー公開されます*

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執筆者

Yasuhiro Togawa