扉を閉ざしたニューヨークーーーー
移民の青年との出会いと“ジャンベ”の響きが孤独な大学教授の心の扉を開く。

初老の大学教授と移民の青年との心の交流を描いた小規模な映画が、2008年のアメリカ映画界に思いがけぬ大旋風を巻き起こした。アメリカでの封切り時の上映館は、わずか4館だったが、その感動が、人から人へと伝わり、最終的には270館まで拡大。公開から6週目には全米興行収入トップ10にランク・イン、12週に渡ってトップ20をキープし、6ヶ月間に及び上映されたのだ。それがトム・マッカーシー監督の『扉をたたく人』だ。無気力な毎日を送っていた主人公が、友情、ジャンベ(アフリカン・ドラム)、ロマンスを通して、心の扉を開き、ふたたび生きる意味を見出す姿を描いた、いつまでも忘れ得ぬ物語。その評価の高さは、インディペンデント・スピリット・アワードの監督賞受賞、主演リチャード・ジェンキンスのアカデミー賞ノミネートなどで証明された。

主演はリチャード・ジェンキンス。これまでに50本以上の出演作があるものの、常にスクリーンに溶け込んでしまうため顔と名前が一致しない、でも不思議と印象に残る、脇役の鏡のような存在だったが、俳優生活40年目にして初の主役を演じている。予期せぬ人々との予期せぬ出会いにより、頑なな男の心に、さざ波が広がっていくさまを繊細に表現。非凡な才能を存分に発揮している。
監督、脚本はトム・マッカーシー。廃駅を舞台に孤独な人々の交流を描いた前作『The Station Agent』でインディペンデント・スピリット・アワード、英国アカデミー賞(BAFTA)脚本賞など、数々の映画賞に輝いた。監督としては本作が2作目だが、『父親たちの星条旗』など多く出演作を持つ俳優でもあり、長年尊敬していたリチャード・ジェンキンスのために、ウォルターという人物を書き上げた。

恵比寿ガーデンシネマ15周年記念作品
2009年6月27日、恵比寿ガーデンシネマほかロードショー

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=47549

執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa