これまでクララ・シューマンの生涯は映画、テレビなど、さまざまなかたちで劇化されてきた。中でも映画では、キャサリン・ヘプバーンが『愛の調べ』(1949)、ナスターシャ・キンスキーが『哀愁のトロイメライ』(1985)でと、実力と人気を兼ね備えた大女優が演じてきた。本作でこの難役に挑むのは、『マーサの幸せレシピ』でドイツ映画賞主演女優賞など国内外の映画賞を総なめにし、アカデミー賞外国語映画賞受賞作『善き人のためのソナタ』での美貌の舞台女優クリスタ役で国際的に脚光を浴びたマルティナ・ゲデック。かつては芸術家同士の尊敬で結ばれた夫ロベルトとの絆はもはや儚く、若き崇拝者ヨハネスからの情熱的な賛美に心揺さぶられながらも、彼とは夫の死後も互いに人生の支えであり続けた。ゲデックは、運命的な愛の出逢いと別れを生きたヒロインを、まろやかな大人の円熟と馥郁たる美しさで官能的に演じ、女優として新境地を拓いたと絶賛された。

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執筆者

Yasuhiro Togawa