カナダ、境界線を揺らすまなざし

Canadian Docu Days
-知られざるNFB/ONF ドキュメンタリズム
NFB/ONF(カナダ国立映画制作庁)
1939年から12,000タイトル以上のアニメ、ドキュメンタリー、劇映画を制作してきたNFB/ONFの国内初の特集上映会が、2008 年7月に開催されます!

◆ 日本初公開作を含む計13作品! ダイレクト・シネマの隠れた名匠、名作を初特集!
◆ 『2001 年宇宙の旅』に影響を与えたとされる幻の科学映画『ユニバース』を上映
◆ 世界三大喜劇王の一人、バスター・キートンファン必見!数十年ぶりに再上映!
キートン最晩年のスラップ・スティックコメディ&ドキュメンタリー
◆ポップス界永遠のスターであり「マイ・ウェイ」の作曲家、ポール・アンカ、20歳の時の
ドキュメンタリー『ロンリー・ボーイ』他、珠玉の短編映画、ドキュメンタリーを一挙上映!
※第4 回映画上映専門家養成講座[シネマ・マネジメント・ワークショップ]の実習企画として実施。

◆主な上映プログラム(計13作品を予定)(作品の追加予定あり)
1.ダイレクトシネマの名匠、ピエール・ペロー監督特集
『世界の存続のために』『目を覚ませ、わが良き友よ』
2.バスター・キートン傑作選
『キートンの線路工夫』『バスター・キートン ライズ・アゲイン』
3.短編傑作選
『ロンリー・ボーイ』『ケイトへの贈りもの』『エクス・チャイルド』
4.60年代、知られざるカナダのフューチャー映画
『WOW(ワウ)』『誰もさよならを言わない』
5.大自然と宇宙のドキュメンタリー『カリブー〜極北のトナカイ』『ユニバース』他
6.現代のNFB 作家特集『アベナキの人々』 ※全作品の詳細は2頁、3頁に記載

◆ 日 時: 2 0 0 8 年7 月1 8 日( 金)、1 9 日( 土)
◆ 会 場: アテネ・フランセ文化センター
JR 線 御茶ノ水駅“御茶ノ水橋口”出口[新宿寄り改札]より徒歩7 分/ JR 線 水道橋駅“東口”[東京寄り改札]より徒歩7 分
地下鉄 東京メトロ丸ノ内線 御茶ノ水駅、都営三田線水道橋駅“A2”出口より徒歩10 分
主催 : 「NFB/ONF ドキュメンタリズム」実行委員会 / コミュニティシネマ支援センター / 特定非営利活動法人映画美学校
/ 財団法人 国際文化交流推進協会(エース・ジャパン)協力:アテネ・フランセ文化センター/ユーロスペース 支援 :文化庁

◆上映作品一覧(上映作品は追加予定あり) ※全ての作品には日本語字幕がつきます。
1.『キートンの線路工夫』(監督:Gerald Potterton/1965/25 分)
解説: 世界三大喜劇王の一人、天才バスター・キートンが最晩年に主演したスラップ・スティックコメディ。ロンドンから海を渡ってカナダに辿り着いたキートンが、モーター付レールカーに乗って大自然をバックに一人旅をする。レールカーに乗った天才キートンが、老いてもなお体を張ったギャグを次々としかける爆笑コメディ。

2.『バスター・キートン ライズ・アゲイン』(監督:John Spotton/1965/55 分)
解説: キートン最晩年のコメディ『キートンの線路工夫』の撮影舞台裏を追ったドキュメンタリー。監督やスタッフとの打ち合わせ風景や、絶えず工夫を加えながら演じる姿に加えて、テレビの野球観戦を楽しむキートンなど、伝説の名優が亡くなるおよそ1 年前の姿がカメラに収められた、映像資料としても次代に残したい貴重な作品である

3.『W O W ( ワウ)』 (監督:Claude Jutra/1969/96 分)
解説: 9人のティーンエージャーがカメラに向かい、それぞれの夢や、現在の環境を赤裸々に語る異色のドキュメンタリー。
修道女と自分を同化させる少女。革命をおこすことを夢見る少年。若者が抱えるセックスやドラッグ問題、社会との摩擦等、時に実験的な映像で観客に訴える、若者の本音を描いた名匠クロード・ジュトラの問題作。

4.『世界の存続のために』(監督:Pierre Perrault/1962/105 分)
解説:ダイレクト・シネマの中心的存在、ピエール・ペローとミシェル・ブロー他が共同監督。カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品。クードル島シリーズ第一作目。伝統的なイルカ漁の再現を願う島民は、再現に乗り気でない年配者の説得にのりだすが・・・。
島独特の言語や寓話、生活様式等、歴史的映像資料としても貴重である。

5.『目を覚ませ、わが良き友よ』(監督:Pierre Perrault/1970/117 分)
解説:自身の映画を「我々が我々を知るために、必要なものを映し出す手段」と語ったダイレクト・シネマの旗手、ピエール・ペローの渾身にして、最高傑作のひとつ。
政治家、著名人、少数民族、農民、漁師といった様々な人々のインタビューと発言を通し、国家、州、宗教、言語によって定義されうる自己への葛藤を、カメラはケベックの僻地へとさまよいながら詩的に描き出す。

6.『カリブー〜 極北のトナカイ』(監督:Leanne AllisonDiana/2004/72 分)
解説:ユーコン(準州)からアラスカ沿岸まで移動するカリブー(トナカイ)。この大移動の実態を、環境保護者である一組の夫婦が追う。カリブーを追うなか見えてくる人間の愚かさ。野生動物保護区にまで忍び寄る油田開発の影。約半年にも及ぶ撮影の日々を、ユーモラス豊かに描くドキュメンタリー。北米、独、日本等、各国の映画祭で受賞した話題作。

7.『ケイトへの贈りもの』(監督:John N. Smith/1986/27 分)
解説:精神を病み、家族と離れて暮らす中年女性のケイト。15歳になる息子とは何週間かに1 度会ってはいるものの、息子は母のことをガールフレンドにも隠し、母とも距離をとって接していた。ある日、ガールフレンドとデート中に母と遭遇し・・・。精神のバランスを崩した母と繊細な気持ちで揺れ動く息子の心の機微が30 分弱で見事に描かれた傑作短編。

8.『ロンリー・ボーイ』 (監督:Wolf Koenig/ Roman Kroitor/1962/26 分)
解説:ポップス界永遠のスターであり、後に「マイ・ウエイ」を作曲する不世出の天才ポール・アンカが20 歳の時に撮影されたドキュメンタリー。当時のステージの舞台裏や、若くしてスターダムにのぼりつめた若き天才の光と影が貴重な音源資料と共によみがえる。

9.『ユニバース』(監督:Roman Kroitor/ Colin Low/1960/ 28 分)
解説:後に、スタンリー・キューブリック監督の『2001 年宇宙の旅』(1968)に影響を与えた作品の一つとされる科学映画。実写とアニメーション、音楽などあらゆる表現を駆使して、宇宙の壮観や惑星のイメージを作り上げることに成功している。

10.『エクス・チャイルド』(監督:Jacques Drouin / 1994/ 5 分)
解説:父親と共に軍隊に徴兵された少年。頭上を飛び交う銃弾、自分を庇い戦死する父。戦場の現実に彼の兵士としての誇りは打ち砕かれ、すべてが恐怖へと変わる。少年が戦争の悲惨な実情を悟る過程を斬新な手法で描き、子どもの権利条約第38 条に基づいて、15 歳未満の子供の軍入隊の自粛を訴えるアニメーション作品。

11.『誰もさよならを言わない』(監督:Don Owen/ 1964/ 80 分)
解説:中産階級の家庭に生まれた少年。安定した将来を期待する両親。その重圧に耐えかねた少年は、ある日、学校をやめ、家族のもとを離れ、一人暮らしを始める。しかし、社会の厳しさが容赦なく少年に襲いかかる。経済的に恵まれた環境で育った若者の非行問題を見事に描いた青春映画。ダイレクト・シネマの継承者、Don Owen 監督作品。

12.『ゴールデン・グローブ』(監督:Gilles Groulx/1961/ 28 分)
解説:アマチュアボクサーが成功への第一歩を踏みだす大会「ゴールデングラブ」。3人のモントリオール在住ボクサーへのインタビューを軸に、彼らのボクシングにかける熱い思いや野望がひしひしと伝わる、ジル・クルー監督のドキュメンタリー。撮影にクロード・ジュトラ、ミシェル・ブローが名を連らねた、ダイレクト・シネマの代表作。

13.『アベナキの人々』(監督:アラニス・オボンサウィン2006 年/104 分)
解説:カナダの先住民族であるアベナキ族の土地に、1 世紀以上住むムサドクが語る物語は尽きることがない。同じ土地に生まれ、先住民族の年代記を編むことに40 年近くを費やしてきた監督は村に戻り、自分の民族の物語を叙情的に謳い上げる。多民族国家であるカナダに住む、ある先住民族を見つめたドキュメンタリー。

執筆者

Yasuhiro Togawa