■1、開催概要

●期間:2007年5/25(金)〜5/27(日)
●会場:赤坂区民センターホール
    東京都港区赤坂4-18-13 赤坂コミュニティーぷらざ内
    地下鉄銀座線・丸ノ内線「赤坂見附」駅A出口より徒歩8分

●主催:国際交流基金
●後援:港区
●企画・運営協力:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
●協力:角川映画、国際放映、松竹、東宝

● 料金:当日600円(当日券のみ)
*各回入替制 *全作品英語字幕付き(講演は入場無料)

<お問合せ先>
・ 会期前のお問合せ:上映会事務局(東京フィルメックス内)
      Tel: 03-3560-6394(11:00〜17:30 平日のみ)
・ 会期中のお問合せ: Tel: 080-6953-3270(開催期間中のみ)

<サイト>
 (日)http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/fsp-8.html
 (英)http://www.jpf.go.jp/e/culture/topics/movie/fsp8.html

<タイムテーブル>(6作品上映)   *入替制(開場は15分前)

■5/25(金)
 19:00「安城家の舞踏会」(1947年、89分、吉村公三郎監督)※16mmプリントでの上映

■5/26(土)
 13:00「二十四の瞳」(1954年、155分、木下恵介監督)
 16:30「煙突の見える場所」(1953年、108分、五所平之助監督)
 19:00「近松物語」(1954年、102分、溝口健二監督)

■5/27(日)
 13:00「しとやかな獣」(1962年、96分、川島雄三監督)
 14:45 講演:平野共余子氏<英語逐語訳つき>
 17:00「女ばかりの夜」(1961年、96分、田中絹代監督)

———————————
■2、企画趣旨

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は日本文化紹介活動の1つとして、日本映画に外国語字幕を付け、海外における上映に提供しています。このたび、日本に在住する外国の方々にも日本映画の豊かさに触れて頂く一端になればと、英語字幕付き日本映画の上映会を行ないます。

過去7回(*1)の開催に引き続く第8弾の企画として、<日本クラシック、海外発信中!〜Rediscovery of Japanese Cinema>と題し、海外でも好評を博している日本映画の名作を上映します。(※『しとやかな獣』はニュープリント上映)

外国の方にもぜひ紹介したい傑作であり、今こそ見直したい日本映画のエッセンスが詰まっています。吉村公三郎、木下恵介、五所平之助、溝口健二、川島雄三といった巨匠たちの代表作を揃え、ホームドラマや恋愛物、コメディ、女性映画などバラエティに富んだプログラムとなっております。また、原節子、高峰秀子、田中絹代、香川京子、若尾文子などの日本を代表する女優たちの華麗な魅力も見どころです。

上映に加えて講演も行い、講師に平野共余子氏(映画史研究家、著書に「マンハッタンのKUROSAWA 英語の字幕版はありますか?」「天皇と接吻—アメリカ占領下の日本映画検閲」など )をお迎えします。
ニューヨークの非営利団体ジャパン・ソサエティーにて、1986〜2004年にわたり日本映画の上映を手がけた経験も交えて、“日本映画は海外でどのように見られているか”を具体的なエピソードを通して解説して頂きます。特に、著名な作家・評論家の故スーザン・ソンタグ氏が企画に参加した「ソンタグが選んだ日本映画」特集シリーズの事例を中心に語って頂きます。
(※今回の上映作品である「安城家の舞踏会」「煙突の見える場所」「二十四の瞳」は、ソンタグ氏が推薦する日本映画としてあげていた作品でもあります。)

【平野共余子 (ひらの きょうこ) プロフィール】

1952年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒業。東京大学大学院人文科学研究所修士課程、東京大学新聞研究所を経て、1979年フルブライト奨学生としてニューヨーク大学大学院映画研究科に留学、1988年に博士号 (Ph.D.)取得。1986年から2004年までニューヨークの非営利団体ジャパン・ソサエティーの日本映画上映プログラムを担当、その間、ニューヨーク大学、ニュースクール大学で日本映画の講座を担当したほか、米国の大学、美術館などでの日本映画の上映にも立ちあう。
現在、ニューヨークと東京を拠点に活躍し、東京大学、テンプル大学、映画専門大学院大学非常勤講師なども務める。
博士論文の日本語訳である『天皇と接吻—アメリカ占領下の日本映画検閲』(草思社)で川喜多賞、日本映画ペンクラブ賞を受賞している。また、2006年に発表した、ニューヨークでの日本映画上映の経験をまとめた著書『マンハッタンのKUROSAWA 英語の字幕版はありますか?』(清流出版)が話題となっている。

【これまでに開催した当上映会のシリーズ】
*1: 2004年6月 <Masters of Japanese Cinema 日本映画の巨匠と女優たち>
  2005年3月 <When Masters Were Young – 1960s
                   にっぽん60年代 巨匠たちの原点>
  2005年6月 <Flashback / Flashforward: Staging the Past
          フラッシュバック/フラッシュフォワード:過去への視線>
  2005年9月 <The Best of Japanese Horror ジャパニーズ・ホラー傑作選>
  2006年3月 <The Masters’ Gaze on Women in Hanamachi
                      巨匠が描いた花街の女たち>
  2006年6月 <The Masters and Jidaigeki 巨匠と時代劇>
  2007年2月 <Evolving Japanese Cinema 進化する日本映画>

————————-
■3、上映作品:全6作品を英語字幕付きで上映(各1回上映)

●安城家の舞踏会
1947/89分/白黒、スタンダード/配給:松竹(製作:松竹)(16mmでの上映)
監督:吉村公三郎/脚本:新藤兼人/原作:吉村公三郎/撮影:生方敏夫/美術:浜田辰雄/音楽:木下忠司
出演:滝沢修、森雅之、入江たか子、原節子、日守新一、清水将夫

戦後の改革におされて没落していく旧華族の終末を、一夜の舞踏会を通して物語る。
安城家は、ついに屋敷を手放すことになり、虚勢をはる父、ニヒルな長男、誇り高い長女、現実的な次女、それぞれの複雑な思いがすれ違いながら、最後の宴を迎えるが……。
チェーホフの『桜の園』をベースにした新藤兼人の巧みな脚本をもとに、名優を揃えたすばらしい配役を得て、重厚に描き出している。「暖流」(39)「偽れる盛装」(51)など女性ドラマの名匠と称された吉村公三郎の代表作。数々の秀作を生んだ吉村・新藤コンビの第1作となった。

●二十四の瞳
1954/155分/白黒、スタンダード/配給:松竹(製作:松竹)
監督・脚本:木下恵介/原作:壷井栄/撮影:楠田浩之/美術:中村公彦/音楽:木下忠司
出演:高峰秀子、天本英世、八代敏之、木下尚寅、夏川静江、笠智衆

瀬戸内海に位置する小豆島に赴任した女性教師と教え子たちとのふれあいを、美しい自然を背景に映し出す。昭和3年、新人教師の大石久子は小豆島の分教場で12人の生徒たちに愛情細やかに接し始める。貧しさや家庭環境による困難もありながら、子供たちは成長していく。やがて戦争を経て……終戦の翌年までの18年間をたどり、時代がもたらした悲劇と、真心あふれる師弟愛を描いた傑作。高峰秀子の名演とともに、現地で募集された素人の子供たちの自然な演技も素晴らしい。「カルメン故郷に帰る」(51)などヒューマン・ドラマを数多く手がけた木下恵介監督の代表作。

●煙突の見える場所
1953/108分/白黒、スタンダード/配給:国際放映(製作:新東宝)
監督:五所平之助/脚本:小国英雄/原作:椎名麟三/撮影:三浦光雄/美術:下河原友雄/音楽:芥川也寸志
出演:上原謙、田中絹代、芥川比呂志、高峰秀子、関千恵子、田中春男

見る場所により本数が異なって見える通称”おばけ煙突”がある東京・北千住を舞台に、下町の人々の暮らしをウィットに富んだタッチで描いたドラマ。弘子と隆吉は共稼ぎで細々と生活しており、家の2階を間借りで貸している。この家へ突然舞い込んできた赤ん坊をめぐって、弘子の前夫も絡んで騒動が起きるが……心温まる人情が和やかなムードを生む。第3回ベルリン国際映画祭で上映され、国際平和賞などを受賞した。五所平之助監督は日本初のトーキー映画「マダムと女房」(31)「今ひとたびの」(47)「黄色いカラス」(57)など庶民劇や女性映画を中心に活躍。

●近松物語
1954/102分/白黒、スタンダード/配給:角川映画(製作:大映)
監督:溝口健二/脚本:依田義賢/原作:近松門左衛門/撮影:宮川一夫/美術:水谷浩/音楽:早坂文雄
出演:長谷川一夫、香川京子、進藤英太郎、小沢栄、南田洋子、田中春男

国際的に賞賛され、多くの監督たちに影響を与えている溝口健二監督の「雨月物語」(53)「山椒大夫」(54)と並ぶ最高傑作の1つ。近松門左衛門の浄瑠璃『大経師昔歴』を原作に、悲劇的な恋愛を緊迫感あふれる演出で描く。脚本・撮影・美術の完璧なアンサンブルとともに、香川京子と長谷川一夫の熱演が引き出され、モノクロ画面が美しさを際立たせている。宮中の経巻表装を職とする大経師の妻おさんは、実家から金の工面を頼まれ、手代の茂兵衛に相談する。そして、不義密通と誤解された二人は窮地に追い詰められながら、真実の愛に目覚めていく。

●しとやかな獣 (※ニュープリント上映)
1962/96分/カラー、シネマスコープ/配給:角川映画(製作:大映)
監督:川島雄三/脚本:新藤兼人/原作:新藤兼人/撮影:宗川信夫/美術:柴田篤二/音楽:池野成
出演:若尾文子、伊藤雄之助、山岡久乃、川畑愛光、浜田ゆう子、高松英郎

ユニークな秀作群で名高い川島雄三監督による、ブラック・ユーモアの利いた軽妙なコメディ。「女は二度生まれる」(61)「雁の寺」(62)に続く若尾文子と川島監督のコンビ作品。公団住宅に住む前田家は、父親の指導のもと、他人の金をかすめ取ることに励み、息子は会社で横領し、娘はその美貌で男たちから金を巻き上げる。彼らに関わる人々は、小悪党的なしたたかさに翻弄される。舞台は団地の狭い室内に限定されているが、あらゆるカメラアングルを工夫し、機知に富んだ脚本と多彩なキャラクターを活かして、抜群の面白さを発揮している。

●女ばかりの夜
1961/95分/白黒、シネマスコープ/配給:東宝(製作:東宝)
監督:田中絹代/脚本:田中澄江/原作:梁雅子/撮影:中井朝一/美術:小島基司/音楽:林光
出演:原知佐子、北あけみ、浪花千栄子、富永美沙子、田上和枝、香川京子

田中絹代は、木下恵介、五所平之助、溝口健二などの巨匠たちの作品をはじめ長いキャリアに渡って活躍した大女優であるとともに、日本映画史上女性2人目の劇映画監督として6本を残している。この監督5作目では、社会の矛盾に直面しながらも力強く生きる女性の姿を描く。生活のために夜の街に立っていた邦子は、昭和33年施行の売春防止法により、警察に検挙されて厚生寮に収容される。邦子は、更正指導を受けて再出発し、偏見や厳しい環境に苦労しつつ、自立への道を模索していく。原知佐子の清々しい好演はじめ、女優たちの存在感を活かして演出している。