文化庁メディア芸術祭実行委員会(文化庁・CG-ARTS 協会)は、審査委員会での審査を経て本年度の受賞作品24 点、推薦作品165 点を決定しました。
今年度は、アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4 部門に、世界36 の国と地域から過去最多となる1,808 点の応募がありました。
アート部門の大賞は、プログラミングによって光の軌跡を高精細に映像化した作品「イマジナリー・ナンバーズ2006」が受賞。エンターテインメント部門は、日本の神話的世界を題材にしたネイチャー・アドベンチャー・ゲーム「大神」。アニメーション部門は、細田守監督作品「時をかける少女」。
マンガ部門は、大災害後の日本を描いた作品「太陽の黙示録」が受賞いたしました。
功労賞には、日本のアニメーション映画創生期からアニメーターとして活躍されてきた大工原章氏が選ばれました。

[ 第10 回] 文化庁メディア芸術祭 開催概要
会 期   平成19 年2 月24 日( 土) 〜 3 月4 日( 日) 10:00 〜 18:00 ※木・金は20:00 まで
会 場   東京都写真美術館 [ 東京都目黒区三田1-13-3(東京・恵比寿ガーデンプレイス内)]
入場料   無料
UR L   http://plaza.bunka.go.jp/
主 催   文化庁メディア芸術祭実行委員会(文化庁・CG-ARTS 協会)

大賞・功労賞 贈賞理由
アート部門 大賞「イマジナリー・ナンバーズ2006」 木本 圭子
これは作者が長年追求してきた、非線形数理モデルをベースとする有機的また生物的ダイナミクスをテーマとした作品群の新作である。この数理モデルによって映像空間の中に乱舞する粒子達は、「個と集団」「全体と部分」などといった、社会現象や自然現象の中に現れる風景を見るものに想起させる力をもっている。これは最新のコンピュータテクノロジーと、なによりも作者のアーティストとしての確かな視線とによって成し遂げられた賜物であろう。非常に興味深い作品だ。

エンターテインメント部門 大賞「大神」 神谷 英樹
日本の神話をゲームに取り込んだ意欲的な作品。ゲームとしても、エンターテインメントとしても、非常に高いレベルに仕上がっている。グラフィックの美麗さと独特な表現手法には、海外からの評価も高い。この作品をつくったクローバースタジオが解散してしまったのは大変残念であるが、本作に関わったスタッフにエールを送るとともに、今後の活躍に期待したい。

アニメーション部門 大賞「時をかける少女」 細田 守
見事である。アニメーションの枠を超え、人の心を動かす映像作品だ。原作の要素を分解した上で現在の空気感にあわせて再構成する大胆さと、誰もが抱く本能的心情を重層的に配置して丁寧に描き切る細心さ。物語と語り口の前にアニメーションとしての技術論は無意味だが、アニメーション以外にこれ以上的確に表現する方法があるだろうか? さまざまな技術があふれる現在、動かせない「画」はない。決して潤沢とはいえない条件の中で「画」のみに頼ることなく、確かな立脚点と揺るぎなき視線で「演出」された作品が生まれたことを喜びたい。

マンガ部門 大賞「太陽の黙示録」 かわぐち かいじ
空はひとつなんだ!! 主人公の柳舷一郎の叫びを、いま世界中の人に聞かせたい。 三大地震によって日本が分断され、地獄絵図が展開される。現在、私たちが恐れている不安感がまるで現実の出来事のように表現され、画面から悪魔の音がはじけそうだ。力強い描写、緻密な表現、主人公の体からにじむ人間の品格、巻を重ねても少しの手抜きもないところに、作者の苦労を感じ頭が下がる。マンガ史上永遠に残る名作である。審査員一同、異議なく大賞に決定した。

功労賞 大工原 章 
日本の漫画映画創生のころからスタジオワークに従事なさり、戦後、長編漫画映画の制作を経験されながらも、テレビアニメが始まった頃には、映画産業の衰退時期とも重なって、辛酸を舐められました。それでも、ディズニーや手塚アニメだけではないという立場から、固有のものを模索され続けていらっしゃいました。アニメーターという現職の立場では、意思堅固にもつことが難しい業界にあって、行き続けられるかぎりしなければならないこともあると教えられます。その先達に経緯を表する次第です。