この秋もラテンの映画祭が東京にやってきます。3度目となる本映画祭のラインナップは、内容も国籍もさまざま。プログラムに加えきれない国がまだまだたくさんあるのが残念です。映画祭のキャラクターは、皆に愛されてきた数々のカルトムービーに敬意を表した姿の小さなミューズ。若々しい彼女のように、上映作品もすべて2005年、2006年製作のホットな最新作ばかりです。独特のスタイルで描かれるモダンでバラエティー豊かな作品群のなかには、カルトムービーも多く含まれています。地理的な多様性のみならず、エネルギッシュな台詞や脚本、またインディペンデント映画ならではの個性あふれる作品のセレクションです。11本の映画、11のラテンビートがあなたの心に響きます。ぜひお楽しみください。

<開催概要>
タイトル:第3回スペイン・ラテンアメリカ映画祭
英題:LATIN BEAT FILM FESTIVAL III 2006

日程:2006年9月16日(土)〜2006年9月22日(金)

会場:アミューズCQN シアター2
TEL:03−5468−5551 (渋谷区渋谷1-23-16 ココチビル7F)

料金:前売り券 一般1500円/学生1400円
当日券 一般1700円/学生1600円
パスポート 一般11000円/学生9000円

上映作品:『7人のバージン』、『色彩の中の人生』、『カマロン』、『ドラマメックス』、『マデイヌサ』、『ヤギの祝宴』、『火に照らされて』、『ボディーガード』、『エルサ&フレド』、『ビニシウス・ヂ・モラエス』、『聖家族』

ゲスト:ヘラルド・ナランホ監督(『ドラマメックス』)

概要:最新のスパニッシュムービー12本の上映(日本語字幕付き)、
来日ゲストによるパネルディスカッション
公式サイト:http://www.hispanicbeatfilmfestival.com/ 

チケット発売:チケットぴあ、ファミリーマート、セブンイレブン、サンクス、
アミューズCQNにて発売 
主催者:ラテン・ビート アジア(代表:アルベルト・カレロ・ルゴ)

協賛:スペイン政府文部省、スペイン大使館、コナクルタ(メキシコ政府文部省)、
バルタサル・グラシアン財団
後援:スペイン政府文化教育省、スペイン政府外務省、メキシコ政府文部省、
メキシコ政府外務省、メキシコ大使館、朝日新聞
関連イベント:スパニッシュ・ミュージック・ナイト http://www.duomusicexchange.com/

<上映作品>
≪思春期の物語≫ 
■『ドラマメックス』 DramaMex メキシコ
監督:ヘラルド・ナランホ 
製作:ガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナ
出演:エミリオ・バルデス、ディアナ・ガルシア

ドラマ/104分/メキシコ/2006年
カンヌ映画祭「ある視点」出品作品

退廃的な町アカプルコを舞台に、ある晩、繰り広げられる3つのストーリー。自殺を考える一人の男性。それまでの人生から逃げ出してきた15歳の少女。悲劇的な別れの後に再会する若い男女。フラフラとさまよいながらも頑固で、失敗しては傷ついてしまう彼ら。その晩、そんな彼らの人生がガラッと変わってしまう。また、出来事をさまざまな側面から目撃する我々観客の認識をも変えてしまう、混沌とした男女の物語。2006年カンヌ映画祭コンペティション出品。『バッド・エデュケーション』のガエル・ガルシア・ベルナル、『ターミナル』のディエゴ・ルナがプロデュースした話題作。

■『マデイヌサ』 Madeinusa      ペルー
監督:クラウディア・リョサ 
出演:マガリ・ソリエル、カルロス・トーレ、
イリアナ・チョン、ウバルド・ウアマン

ドラマ/ 103分/ペルー/2006年

マデイヌサはペルーの人里はなれた山奥の村に住む少女。その村は聖週間を変わったやり方で祝う風習がある。聖金曜日から復活の日曜日まで、村中でやりたい放題できるのだ。というのも、その期間には罪が存在しない。神が死んでいるので、お咎めなしというわけだ。つまり、どんなことも受け入れられ罪にはならないのである。マデイヌサと妹と村長の父親はこの風習を今も守っている。今年は都会から1人の若者がやって来てからというもの、すべてが変わってしまったように見え…。マデイヌサは若きファム・ファタルであり、犠牲者であり、戸惑う思春期の少女であり、はたまた、たちの悪いジュリエットであり、純潔の聖母である。

■『7人のバージン』 7 Virgenes  スペイン 
監督:アルベルト・ロドリゲス 
出演:フアン・ホセ・バジェスタ、ヘスス・カロッサ

ドラマ/86分/スペイン/2005年
2005年サン・セバスチャン映画祭 
最優秀男優賞・銀の貝殻賞受賞
ゴヤ賞最優秀助演男優賞受賞

南部の労働者が住む地区の夏。矯正施設にいる少年タノは兄の結婚式に参列するため48時間の外出許可を得る。その48時間のうちに、親友と再会し、徹底的に楽しもうと施設では禁じられているすべてにやりつくそうとする。飲酒、盗み、恋愛…、つまり日常へと逆戻り。思春期ならではのパワーで自由を行使するのだ。しかし、施設外での時間が経つにつれ、また地元の崩壊に立会うことで、家族、恋、友情、すべてが変わってしまう。外出許可が終わる頃には、タノの自由は大人の世界への旅立ちに変わっていく・・・。

■『色彩の中の人生』 Vida y Color スペイン
監督:サンティアーゴ・タベルネロ 
出演:フニオ・バルベルデ、シルビア・アバスカル

ドラマ/97分/スペイン/2005年
バリャドリード映画祭観客賞受賞、
ゴヤ賞新人監督賞ノミネート

1975年秋。思春期に差し掛かった14歳のフェデは地元のグループの一員になりたくて仕方がない。そんなフェデには不満があった。女友達のサラが障害を持つ少女と共有する秘密を教えてくれないこと、グループのリーダーが自分を一人前に扱ってくれないこと、両親が地元の学校に行かせてくれなかったこと。そして彼の願いはなんとしてもドクロのカードを手に入れること。そうすれば、敵対するグループに立ち向かう勇気が持てるのに…。現実の中で彼の望みは打ち砕かれる一方、彼の想像の中では地元の謎が答えも出ないうちにどんどん増えていくのだった。

≪性と愛の物語≫
■『聖家族』 La sagrada familia チリ
監督:セバスティアン・カンポス
出演:ネストル・カンティリャーナ、セルヒオ・エルナンデス、コカ・グアッシーニ、パトリシア・ロペス

ドラマ/99分/チリ/2005年

セマナ・サンタ(聖週間)の休暇を別荘で過ごす建築家一家の物語。建築を学ぶ20代のマルコ。その父親は、自己中心的で著名な建築家だ。お互い競争心で争いの耐えない父子の関係を修復しようと、母親はいつも心を砕いている。ある日、家族はマルコの恋人を家に迎えようとその到着を待っていた。両親に初めて紹介する恋人に、マルコは夢中だ。近所のマルコの友人たちも、休暇を実家で過ごそうと次々と帰ってきた。しかし、突然母親は急用で町に戻らないといけなくなってしまう。母親の留守の間にマルコの恋人が到着。ところが、性的な魔力で周りの人間をかき乱す彼女によって、それまでなんとか保たれていた家族や隣人の均衡がガラガラと崩れる。母親が戻る復活祭の日曜日には、もはや以前の家族の姿はなかった。新しいチリ映画界の象徴的な作品。

■『エルサ&フレド』 Elsa & Fred     アルゼンチン     ウルグアイ(主演)
監督:マルコス・カルネバーレ 
出演:チナ・ソリーリャ、マヌエル・アレクサンドレ

ドラマティック・コメディ/106分/アルゼンチン/2005年

『エルサ&フレド』は恋をするにも夢を見るにも年齢は関係ないと教えてくれる遅咲きの恋に落ちた
2人の物語。エルサは82歳。『甘い生活』のように噴水で水浴びする日を夢見ているのだが、恋の相手はなかなか現れない。それよりも少しだけ若いフレッドは妻に先立たれ、新しいマンションに引っ越してきた。そこで、突然のつむじ風のように彼の生活に飛び込んできたエルサと出会う。そして残りの貴重な人生を楽しむことを教えられるのだ。彼はエルサの目まぐるしさや、若々しさ、大胆さ、そして美しくもおかしな言動に夢中になっていく。そうして生きることを学ぶのである。2006年カンヌ映画祭で『ヴォルヴェール』(ペドロ・アルモドバル監督)でペネロペ・クルスらと最優秀女優賞を受賞したブランカ・ポルティージョも出演している。

≪リズムを刻む物語≫
■『カマロン』 Camarón スペイン
監督・ハイメ・チャバリ

伝記/117分/スペイン/2005年
2006年度ゴヤ映画祭最優秀男優賞受賞作品

『カマロン』は今まで語られることのなかったフラメンコ界の天才、カマロンの伝記である。彼の人生と作品を振り返りながら、フラメンコを刷新しながら次世代に大きな影響を与え、社会と芸術の世界の中にある足枷を打ち破ったひとりのフラメンコ歌手の真髄の迫ろうとしている。カマロン独特の世界に反映されている彼の思いやその闘い、そしてその成功はカマロンの軌跡を辿る上で重要な鍵といえる。映画は芸術家としての自らの発見、成熟、人々の賞賛と別れという3部から成り、パコ・デ・ルシア、トマティート、パコ・セペロたちが作品を彩る。

■『ビニシウス・ヂ・モラエス』 Vinicius de Morales ブラジル
監督:ミゲル・ファリアJr.

ドキュメンタリー/120分/ブラジル/2005年

「イパネマの娘」など多くの有名な曲の詩を書いたビニシウス・ヂ・モラエス(リオデジャネイロ生まれ、1913-1980)の人間らしい生涯を振り返る。彼の人生、音楽家としての経歴、暮らしなどが語られる。ビニシウス作品の偉大さ、人となりについて、多くの知人やアーティストから証言を集めた。作中、アドリアナ・カルカニョット、オリビア・バイントン、マリアナ・ヂ・モラエス、モニカ・サルマーゾといった若い世代のアーティストによるカバー曲が紹介され、チコ・ブアルケ、カエターノ・ベローゾ、マリア・ベターニア、ジョアン・ジルベルトら友人による思い出話も興味深い。

≪困難な人生の物語≫
■『火に照らされて』 Iluminados por el fuego     アルゼンチン
監督:トリスタン・バウエル 
出演:ガストン・パウルス、パブロ・リッバ、
セサル・アルバラシン

ドラマ/103分/アルゼンチン/2005年
2005年サン・セバスチャン映画祭審査員特別賞、2006年トライベッカ映画祭最優秀作品賞、2006年ゴヤ賞最優秀作品賞

エステバン・レギサモンの記憶を物語る。現在40歳の彼は、まだ18歳だった1082年に兵士としてフォークランド諸島へ送られた。仲間が自殺を試みて以来、2人の新米兵士の思い出に浸るようになった。自殺したバルガスと戦死したフアンである。そこには戦争の恐怖だけでなく、戦友たちと分かち合った友情の思い出も浮かんでくる。エステバンの視線を通じて、彼らの人生が死へとゆっくりと沈んでいく様子を明らかにする。そして彼は20年経って島を再訪し、自分の過去と出会い、古い傷を埋めようとするのだった。

■『ボディーガード』 El Custodio       アルゼンチン
監督:ロドリゴ・モレノ 出演:フリオ・チャベス

ドラマ/93分/アルゼンチン/2005年

ボディガードの仕事は大臣を常に見守ることである。大臣が車から出ると、彼もあとに続き、大臣が左へ曲がると、彼も後に続く。大臣がうたた寝するときは、その寝姿を見守る。常にその場にいなくてはならないが、その存在を主張してはならない。そう、まさに影のように。予定も来客も知らされることがないので、彼は状況がまったく把握できない。自分が主人公であるはずの実人生においても同じ。彼の孤独な人生に寄り添うのは、武器や自らの体を売って暮らす情緒不安定な姉と姪。これらすぺてを巻き込んでいく抑圧が最後には爆発する。

■『ヤギの祝宴』 La fiesta del chivo       ペルー
監督:ルイス・リョサ 
出演:イザベラ・ロッセリーニ、トマス・ミリアン

ドラマ/125分/ペルー/2006年

1992年、ドミニカ共和国サントドミンゴ。ウラニア(ロッセリーニ)は30年ぶりに生まれ故郷に戻ってきた。不興を買うまでは、独裁者トルヒーリョの右腕だった父親は見る影もなくなっている。ウラニアは叔母や従姉妹たちと会い、今まで帰って来ることのできなかった理由を語りだした。国を去らずにはいられなかった恐ろしい秘密があったのだ。その秘密のせいで彼女の人生はめちゃくちゃになった。また本作は独裁者に立ち向かった男たちの物語でもある。彼らとウラニアの苦難は、華麗な愛と憎しみ、死と暴力へと結びついていく。原作はマリオ・バルガス・リョサの小説。