2006年1/25(水)から2/5(日)までロッテルダムで開催されている、2006年ロッテルダム国際映画祭において、長崎俊一監督作品『闇打つ心臓』(3月渋谷シネ・アミューズほかにて公開)が、オープニング上映されました。
この作品は、82年に製作された内藤剛志、室井滋主演音8mm作品『闇打つ心臓』の23年後を描いた作品。
当時、自分の子供を殺して逃げている男女を演じた内藤さんと室井さんが、23年後の二人を演じています。
音楽は、相米慎二監督『風花』、安藤尋監督『blue』、田口トモロヲ監督『アイデン&ティティ』のサウンドトラックを担当した大友良英。エンディングテーマにボーカルと作詞でカヒミ・カリィが参加しています。
満席の1600席の会場で、長崎俊一監督と、出演している女優の水島かおりさんが舞台挨拶を行いました。
また、今回のロッテルダム国際映画祭では、長崎監督作品の特集も組まれており、8mm版の『闇打つ心臓』をはじめ、16mm作品の『ユキがロックを棄てた夏』(78)や、初の35mm作品『九月の冗談クラブバンド』(82)など13作品が上映されています。こちらも全回ソールドアウトの盛況となりました。

長崎俊一監督・コメント

今日の上映会場はとても大きかった(1,600席のコンサート・ホール)にもかかわらず、主演の室井や内藤をはじめとしたモ人間が生きていく時間を描くモという、自分の極めて野心的なフィルムを観ようとして来てくれた観客の好奇心に、まずは感激した。どんな映画なのだろうと待ち構えている観客の緊張感と、映画が持っている緊張感がうまくシンクロして、好き嫌いを超えたリアクションを生み出していたことを実感。映画というのは、本来いろいろな楽しみ方があるはずだが、その枠を広げていくためには、いつでもそれを試みる人たちの大きな勇気が必要であるということを、痛感させられた。

水島かおりさん・コメント

正直言って、日本ではレイトショウ上映しかされないこの作品を、ロッテルダム市長をはじめとした映画祭のスポンサーたちにオープニング作品として平気で観せていいの? という戸惑いはあったが、日本ではあり得ない、このようなことを実際に行っている映画祭の姿勢に、感動。外国の人たちがどこまでこの作品を理解できるのだろうかと心配していたが、日本人以上にわかってもらえ、映画に国境はないということと、ヨーロッパの文化の成熟度を強く感じました。

映画祭ディレクター、サンドラ・デン・ハマーのコメント

確かに、この作品をオープニングに上映することはほかではなかなかありえないことなのかも知れませんが、この作品の持っているモ極めて映画的な、野心的な映画モであるという要素が、ロッテルダム映画祭がこれまでにも紹介し、これからも紹介すべき作品であると信じて、自信をもって選びました。

●●●●●●●●●●●長崎俊一監督作品「闇打つ心臓 Heart,beating in the dark」●●●●●●●●●●●

1982年、『闇打つ心臓』という8mm映画があった。
このフィルムを、見ることはできない。

映画は伝説となった。

あれから23年。
『闇打つ心臓』は、35mm作品として誕生する。

これは、リメイクではない。

長崎俊一監督の新しい伝説が始まる。

2006年ロッテルダム国際映画祭オープニング作品 闇打つ心臓 Heart,beating in the dark

監督◎長崎俊一

出演◎内藤剛志 室井滋 本多章一 江口のりこ 諏訪太朗 水島かおり

音楽◎大友良英
エンディングテーマ◎カヒミ・カリィ「闇打つ心臓」

製作◎オフィス・シロウズ/バンダイビジュアル 制作プロダクション◎オフィス・シロウズ/アルチンボルド 配給◎オフィス・シロウズ/スローラーナー(2005年/日本映画/35mm/カラー/ヴィスタサイズ/DTSステレオ/104分)支援:●文化庁
公式HP◎www.yamiutsu.com

23年ぶりに再会する中年の男と女。
生まれた子供を殺して彷徨う若い男と女。
取り返しのつかないことがある。誰も時間を戻ることなどできはしない。

1982年、1本の8mm映画が完成した。長崎俊一監督作品『闇打つ心臓』。荒れた画面には、自分たちの幼い子供を殺して逃げる若い男・リンゴォと女・伊奈子が、お互いを傷つけあい、夜の底で息を潜める姿が写し出されていた。リンゴォを演じたのは、まだ20代の内藤剛志、伊奈子を演じたのは、室井滋。あれから23年。また1本の映画が撮られようとしている。長崎監督、そしてあの時と同じ役で出演する内藤と室井。それぞれの思い。過ぎ去ってしまった時間…。

リンゴォと伊奈子が再会する。リンゴォは、結婚して電気店を経営していた。そこに、23年ぶりに伊奈子が訪ねてくるというのだ。同じ頃、自分の子供を殺して逃げている若い男と女がいた。透と有紀。二人は、逃げ込んだアパートの部屋で、息を潜め、罵りあい、抱擁し、蛇口から落ちる水滴の音と、どこからか聞こえる赤ん坊の泣き声に怯えていた。取り返しのつかないことがある。殺してしまった子供をめぐって擦れ違う思いと、埋められない距離を抱えて二組の男女の夜が過ぎていく。狂おしい後悔とその痛み。誰も、人生をリメイクすることなどできはしない。 “また出会う”ことを除いては…。

今活躍する映画監督たちが疾走をはじめた80年代初め。
すべては、ここから始まった。
8mm映画の伝説、長崎俊一監督作品『闇打つ心臓』は、
80年代のインディーズ・シーンの金字塔だった。

『闇打つ心臓』は、1982年に作られた8mm版『闇打つ心臓』。23年を経て製作された、『闇打つ心臓 Heart,beating in the dark』は、8mm版の映像を折り込みつつ、取り返しのつかない“痛み”と、ささやかな“願い”を抱いたフィルムとして誕生した。監督は、8mm版の監督であり、『8月のクリスマス』が公開されたばかりの長崎俊一。80年代初頭、8mmや16mmのカメラを武器に疾走した若い映画監督たちがいた。石井聰亙(『DEAD END RUN』)、矢崎仁司(『ストロベリーショートケイクス』)、犬童一心(『メゾン・ド・ヒミコ』)、黒沢清(『LOFT』)、手塚眞(『ブラックキス』)、塚本晋也(『ヴィタール』)…。現在活躍する映画監督たちの出発点でもあった80年代のインディーズシーン。長崎俊一もまたその時のトップランナーのひとりであり、8mm版『闇打つ心臓』は、数多いインディーズ・ムービーの中でも、“金字塔”と呼ばれるにふさわしい伝説的な傑作なのだ。

内藤剛志、室井滋、本多章一、江口のりこなど俳優たちのアンサンブルと、
大友良英、カヒミ・カリィの音楽が織りなす“心の闇”。
取り返しのつかない“痛み”と、ささやかな“願い”を抱いた
長崎俊一監督の傑作が誕生した!!

主演は、23年前と同じリンゴォと伊奈子に、内藤剛志と室井滋。また、リンゴォたちを繰り返すように子供を殺して逃げる若い男女・透と有紀を、期待の新人・本多章一と江口のりこ(タナダユキ監督『月とチェリー』)が演じている。音楽は、田口トモロヲ監督『アイデン&ティティ』、安藤尋監督『blue』などを手掛け、世界的なターンテーブル奏者、ギタリストである大友良英。エンディングテーマをカヒミ・カリィが作詞、ボーカルを担当している。

3月、シネ・アミューズにてレイトショー!