イメージフォーラム/ダゲレオ出版では、ポーランド生まれの映像アートの革新者ズビグ・リプチンスキーの代表作を収録したDVD3巻を8月25日に発売!
また、それに先立ち8月5日から8月10日まで、シアター・イメージフォーラムにてDVD発売記念上映を行います。

ズビグ・リプチンスキーは1949年にポーランドで生まれ、絵画を学んだ後、国立映画大学に入学。1970年代初頭よりヨーロッパ、アメリカで映画作家、カメラマン、脚本家として活躍。1980年には「連帯」設立メンバーとしてポーランドの民主化運動に加わりますが、82年に政治亡命を余儀なくされます。その後はアメリカを中心に、そのラジカルな映像作品の数々で、アヌシー国際アニメーション映画祭、アカデミー賞、エミー賞をはじめとして、アメリカ、日本、およびヨーロッパの著名な映画祭で多くの賞を受賞。技術的にもハイビジョン・テレビの分野において革新的な役割を果たしています。また、30以上のMTV作品を制作、この分野でも多くの賞を受賞。現在、アメリカで制作会社ズビグ・ヴィジョンを主宰、新たなプロジェクトを進めています。

ポーランド時代のズビグが23歳の頃より制作した才気溢れる短編の数々は、後々の高度なデジタル映像技術を駆使した作品の発想の原点として非常に興味深いだけでなく、特に『タンゴ』(1980)はその比類の無いユーモアと人間洞察など、アート映像の傑作として評価されています。
1987年の『階段』では、エイゼンシュテインの不朽の傑作『戦艦ポチョムキン』(1925)の「オデッサの階段」の映像に、アメリカからの傍若無人な観光客の一団が闖入する皮肉たっぷりな設定。完璧な映画シーンを新たなテクノロジーによって再構成するという大胆不敵な試みで刺激的なメディア・テクノロジー論ともなっています。ソ連の絶対的な影響下にあったポーランドで民主化に立ち上がったズビグが、政治亡命を経て、アメリカの地で完成させた代表作です。
『四次元』(1988)はその後、CGの発達によって多くの人の目に触れることとなる魅惑的な「捩れる映像」を作品として実現させた、恐らく最初の作品でしょう。そこでは時空間を分割して合成するというCGの基本的な考え方がアナログで行われています。映像におけるリアリティは決定的な変容を迫られ、新たな美しさを獲得することとなります。
1990年、アメリカのエミー賞の特殊技術賞を受賞した『オーケストラ』は、ズビグの集大成的な作品です。フランスのシャルトル大聖堂、ルーブル美術館などを舞台に、モーツァルト、ロッシーニ、シューベルト、ラベルなどの有名な6つの楽曲とともに人類の壮大な絵巻物が、ゆったりとひも解かれてゆきます。様々な社会の階級、その変容の中の老若男女、生と性と死、欲望の諸相が滑らかな横移動の映像で描かれます。映像による新たな物語をここに見ることが出来ます。

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●[ズビグ・リプチンスキー コレクション] DVDビデオ、8月25日発売!
Vol.1:メディア ●全10作品/全68分/DVD/2,520円(税込)/DAD05015
Vol.2:ステップス ●全2作品/全53分/DVD/2,520円(税込)/DAD05016
Vol.3:オーケストラ ●全2作品/全83分/DVD/2,520円(税込)/DAD05017
※コレクション 全3巻セット ●全14作品/全204分/DVD/6,510円(税込)/DAD05018

●[ズビグ・リプチンスキー コレクション] 発売記念上映 2005年8月5日(金)〜10日(水)
8月5日(金)、6日(土) 21:00〜●『タンゴ』、『メディア』、他初期10作品/計68分
8月7日(日)、8日(月) 21:00〜●『階段』(英語版/日本語字幕リスト配付)、『四次元』の2作品/計53分
8月9日(火)、10日(水) 21:00〜●『オーケストラ』/57分 ※『メイキング・オーケストラ』は上映しません。
※全てビデオ上映               
料金:当日一般・学生1,000円/シニア・イメージフォーラム会員800円
会場:シアター・イメージフォーラム tel. 03-5766-0114

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[コレクション Vol.1:メディア]
●全10作品/全68分/1972〜1980年/ポーランド/DVD/2,520円(税込)/DAD05015
『四角/Square』
ポーランド/1972年/4分/35mm/カラー
◎写真を使ったアニメーション。CGの無い時代に作者が手作業でフィルムを「デジタル」処理(!?)した作品。
『ヴィジュアルミュージック/Visual Music』
ポーランド/1973年/9分38秒/35mm/カラー
◎ハイコントラストのジャズの演奏と音楽。映像は次第に抽象的な形態へと変化してゆく。
『ニュー・ブック/New Book』
ポーランド/1975年/12分30秒/35mm/カラー/1976年オーバーハウゼン映画祭(ドイツ)大賞受賞、1976年メルボン映画祭(オーストラリア)受賞
◎一つの画面が9つに分けられ、その中で「ミクロな物語」が展開される。タイトルは、それぞれのキャラクターが一つの箱から別の箱へと移る様子が本が持ち手を変えるのに似ていることからつけられた。
『スープ Soup/Zupa
ポーランド/1974年/10分/35mm/カラー/1978年シカゴ映画祭(アメリカ)金賞受賞、1975年クラカウ映画祭(ポーランド)主賞受賞、他
◎ある夫婦の日常生活。一定の動作の反復。悪夢と現実の間に宙吊りになった存在が着色された写真のアニメーションによって描かれる。   
『もう止まらない!/Oh! I can’t stop!』
ポーランド/1976年/10分07秒/35mm/カラー
◎のどかな林のなかをゆっくりと前進するカメラ。次第に速度を速めてゆくカメラは村から街へと全てをなぎ倒して前進する!
『休日/Holiday』
ポーランド/1975年/12分30秒/35mm/カラー
◎休日を過ごす家族の様子。男が車を洗っている。二人の人物が愛する人の墓にひざまづている。カップルは愛しあうためこっそりと逃げ出す。家族は昼食のために再び食卓に集まってくる。
『ご近所への道/The Way to your Neighbour』
ポーランド/1976年/2分30秒/35mm/B&W
◎野原の道案内の標識にもたれて眠る男。いつの間にか地軸が回転、男は標識にしがみつつ眠る。画面と地軸の不思議な関係。
『私の窓/My Window』
オーストリア/1979年/2分30秒/35mm/カラー/1979年オーバーハウゼン映画祭(ドイツ)受賞
◎ニュースを伝えるテレビとワイン瓶とかごの中のオウム。テレビの中の画面がゆっくり回転し、静止しているはずのボトルとかごの中もゆっくりと傾き始める。
『メディア/Media』
ポーランド/1980年/1分40秒/35mm/カラー
◎ムビオラ(映画編集機)の画面に映ったヒゲの男がゴム風船を跳ね上げながら遊んでいる。風船はムビオラの外の小さなテレビに映ったモノクロ画面に映り、風船の動きにあわせ回転しながら宙を舞う。
『タンゴ Tango
ポーランド/1980年/8分10秒/35mm/カラー/1983年アカデミー賞(アメリカ)最優秀短編アニメーション作品、1981年アヌシー国際アニメーション映画祭(フランス)大賞+観客賞受賞、1981年オーバーハウゼン映画祭(ドイツ)大賞+国際批評家連盟賞受賞、1982年オタワ映画祭(カナダ)観客賞受賞、1982年タンペレ映画祭(フィンランド)最優秀アニメーション賞受賞、1981年クラカウ映画祭(ポーランド)主賞受賞
◎子供が室内に入ってしまったボールを取りに入ってくる。赤ん坊のお守をする女性、食事する中年男性、愛し合う若い男女、そして泥棒。同じ部屋の中で様々な人々による行為がそれぞれ無関係に繰り返される。いつの間にか室内は人々で埋め尽くされていく。ズビグはこれらの36人の人々を固定カメラでがとらえる。私はこのため約16,000の人物を描き、オプチカル・プリンターで数千万のコマを作らなくてはならなかった。そのため1日16時間作業してたっぷり7ヶ月はかかったという。
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[コレクション Vol.2:ステップス]
●全2作品/全53分/1987、1988年/アメリカ、イギリス、他/DVD/2,520円(税込)/DAD05016
『階段/Steps』
監督・脚本:ズビグ・リプチンスキー/制作:KTCA-TV、ズビグ・ヴィジョン、チャンネル4/アメリカ、イギリス/1987年/25分07秒/ビデオ/B&W、カラー/英語版(日本語リスト添付)/1987年リオ国際映画祭(ブラジル)最優秀ビデオ・プログラム受賞
◎あるテレビスタジオで、かの有名な『戦艦ポチョムキン』のオデッサの階段のシーンを新しいバーションで撮影するための準備が整っている。コンピュータがこの実験に参加するためにサンプルになるアメリカ人を選びだし、彼らは政府の代理人によって統率されている。この人々の集団(カラー)は、自分たちが映画の中の人物(モノクロ)と共演していることに気づく。映画の中の人物たちはコサック兵にブーツでふみつけにされ、階段を逃げ降りる人々によって押し倒される。この出来事の「生きた」目撃者であるアメリカ人観光客は、罪のない市民を殺す兵士を前にしても、落ち着き払って写真を撮ったり、ハンバーガーを食べたりし続ける。この虐殺から唯一逃れた乳母車の赤ん坊の笑顔(カラー)の上にエンド・クレジットが流れる。
『四次元/The Fourth Dimention』
監督:ズビグ・リプチンスキー/制作:カナル・プリュス、ザ・キッチン、ズビグ・ヴィジョン、他/アメリカ、イタリア、フランス/1988年/27分03秒/35mm/カラー
◎『四次元』はあるカップル(アダムとイブ)と様々な物体を同時に、時間、空間、そして動きの中で見せる。
◎二人の人物がゆっくりと動くにつれ、まるで2匹のヘビのように奇妙なねじ曲がった形になる。実際には、彼らは立ち止まっていて、彼らの台座が動くことで水平に、お互いの周りに来るように位置が変えられているのである。もともとの映像は一つのコマを構成するラインの一本一本を400回以上も「読み直し」させるデジタル・システムによって成り立っている。すなわち、各コマ、各ラインの内側に人物の動きに対応して遅れが生じており、そのうちの一つが左から右に垂直に動いているとすれば、そこには連続的な遅れが生じる。なぜなら映像の動きも同じ方向に上から順に動いていくからである。このような映像装置で作られたビデオ映像の時空間は、実際には画面の中の一本一本のラインを認識する過程を繰り返すことにより生じる遅れのコンセプトと時間的広がりを利用している。(アレッサンドロ・アマドゥッチ/2000年)
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[コレクション Vol.3:オーケストラ]
●全2作品/全83分/1990年/アメリカ、イギリス、他/DVD/2,520円(税込)/DAD05017
『オーケストラ/The ORCHESTRA』
監督:ズビグ・リプチンスキー/制作:ズビグ・ヴィジョン、他/共同制作:NHK、カナル・プリュス、他/フランス、アメリカ/1990年/57分11秒/ビデオ/カラー/1990年エミー賞(アメリカ)特殊技術賞受賞
◎『オーケストラ』は、戯曲作家が古典のテキストを舞台化するように、有名な6つの曲を、ズビグが映像化したものである。モーツァルトの「ピアノ・コンチェルト21番」:非常に美しい庭に集まった夜会服を着た老年の男女が人生の喜びを(再び?)味わっている。ショパンの「葬送行進曲」:永遠に続く鍵盤の前で、人々が行進曲のうちの一音だけを奏でる。(略)アルピノーニの「アダージョ」では空中に吊り下げられた二つの壇の上に、モーニング姿の男がいる。男は彼を落下の危険にさらす罠や誘惑をくぐり抜けて前へ進む道を見いださなければならない。ロッシーニの「泥棒カササギ」:ルーブル美術館のギャラリーで軽騎兵の大軍とバレリーナのグループに囲まれたオーケストラのディレクターが、ヒゲを剃り、服を着替える。シューベルトの『アヴェ・マリア』:シャルトル大聖堂の夜の正面玄関。花嫁と花婿は一緒に来るのではなく、服を脱いだ途端、浮遊する。ラヴェルの『ボレロ』:若いコムソモール(全連邦レーニン共産主義青年同盟)の運動選手、ブルーカラーの労働者、農夫、探偵が、終わりのない階段を上り続けている。その階段は共産主義の栄光をたたえる勇壮な夕日の上にかかっているが、最後に彼らは、黙示録的で避けることのできない混とんにたどりつく。
『メイキング・オーケストラ/Making of the Orchestra』
監督:ピエール・オスカー・レヴィ
制作:ズビグ・ヴィジョン/1990年/25分02秒/ビデオ/カラー/英語版(日本語字幕なし)
◎『オーケストラ』の制作風景、ズビグ・インタビューなど、貴重な創造プロセスを惜し気もなく見せる
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[コレクション 全3巻セット]
●この商品はVol.1、2、3の3巻セットです。内容は各巻と同一です。/全14作品/全204分/1972〜1999年/ポーランド、アメリカ、他/DVD/6,510円(税込)/DAD05018
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ズビグ・リプチンスキー/Zbig Rybczynski
1949年、ポーランド生まれ。絵画を学んだ後、国立映画大学に入学。1970年代初頭よりヨーロッパ、アメリカで映画作家、カメラマン、脚本家として活躍。そのラジカルな作品の数々で、アヌシー国際アニメーション映画祭、アカデミー賞、エミー賞をはじめとして、アメリカ、日本、およびヨーロッパの著名な映画祭で多くの賞を受賞。技術的にもハイビジョン・テレビの分野においても革新的な役割を果たしている。また、30以上のMTV作品を制作、この分野でも多くの賞を受賞。現在、アメリカで制作会社ズビグ・ヴィジョンを主宰、新たなプロジェクトを進めている。
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ズビグ・リプチンスキー ホームページ: www.imageforum.co.jp/zbig
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