■フラッシュバック/フラッシュフォワード:過去への視線■

 6/24(金)〜6/26(日)赤坂・国際交流基金フォーラムで開催!
  *英語字幕付き日本映画上映会

===================<5作品上映、(全て英語字幕付)>================

 <INDEX>
  1,開催概要
  2,企画趣旨
  3,タイムテーブル
  4,座談会、講演の内容
  5,上映作品紹介

——————–
■1,開催概要

共催:キネマ倶楽部
企画・運営協力:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会事務局
協力:角川映画、川喜多記念映画文化財団、松竹、東映、東宝、バンダイビジュアル、日本ヘラルド映画

期間:2005年6/24(金)〜6/26(日)
会場:赤坂・国際交流基金フォーラム
   東京都港区赤坂2−17−22 赤坂ツインタワー1F
   東京メトロ銀座線・南北線「溜池山王」駅12番出口より1分

料金:当日600円(当日券のみ) ※6/26講演は入場無料
 JFサポーターズクラブ会員は当日500円(当日券のみ)

  *各回入替制 *開場は15分前 *全作品英語字幕付き 

お問合せ:上映会事務局(東京フィルメックス内)
Tel:03-3560-6394(6/24まで 平日のみ11:00〜17:30 )

——————–
■2,企画趣旨

国際交流基金は日本文化紹介活動の一つとして、日本映画に外国語字幕を付け、海外における上映に提供しています。このたび、日本に在住する外国の方々にも日本映画の豊かさに触れて頂く一端になればと、英語字幕付き日本映画の上映会を行います。
昨年6月の<The Masters of Japanese Cinema 日本映画の巨匠と女優たち>、今年3月の<When Masters were Young – 1960’s にっぽん60年代 巨匠たちの原点>に引き続く第3弾の企画として、今回は、海外の日本映画研究者らによる団体キネマ倶楽部との共催により、さまざまな視点から日本映画にアプローチする試みとなります。

——————–
■3,タイムテーブル

6/24(金)
18:00〜「Avalon」(106分/35mm上映)
20:00〜 座談会
“すべての映画はアニメになる”(ゲスト:押井守、上野俊哉、トマス・ラマール)

6/25(土)
14:00〜「雨月物語」(97分/16mm上映)
16:00〜「男の顔は履歴書」(89分/35mm上映)
18:00〜「飢餓海峡」(183分/35mm上映)

6/26(日)
13:00〜「わが青春に悔なし」(110分/35mm上映)
15:00〜 講演
“時空政治学の映画演出−黒澤明「わが青春に悔なし」”レイ・チョウ

※開場は各回15分前
※各日とも、初回の上映30分前より、その日のすべてのプログラムの当日券を発売
※6/24「Avalon」をご覧になる方は、引き続き座談会もご覧頂けます。
(座談会のみご覧の方は、入場料600円となります)
※6/26講演は、入場無料。

——————–
■4,座談会、講演の内容

<座談会 内容>

6/24(金)座談会 “すべての映画はアニメになる”
ゲスト:押井守、上野俊哉(社会学者、和光大学教授)、トマス・ラマール(カナダ、
マギール大学教授)

押井守は単なるアニメーション映画監督に留まることなく、実写映画も手がけてきた。
より正確にいうなら、アニメーションと実写映画における彼の仕事は、それらの境界線に挑戦しており、「アニメーションとは、どういうものであり、何をするのか?」という問いを私たちに強いるものである。だがこれは押井にとって、単に美学的な問題を意味するものではない。一貫して彼の映画は映像技術の政治的効果を強調してきたし、人形と犬、サイボーグとメカ、といったものについての探求の中で、彼の作品の政治的次元もまた明確にあらわされている。したがって押井の仕事とは、映画の限界についての諸問題とともに、人間や生命の限界についての諸問題をも提起する試みだといえる。人間、そして生命についての一般に信じられている定義は、映画という枠組みを超えて、ひとつの作用となっている。そして、私たちはそれを”アニメリティ”と呼ぶこととなるだろう。

このディスカッションでは、押井本人も交えて、彼の作品について重要と思われる問題点を検討する。

−−映画とアニメーションはどのように異なるのか? 
彼は最近の著書で「すべての映画はアニメになる」と言っているが、それはどのような意味なのか?

−−こうした変化のたどり着く先は? 
押井の作品は、戦後日本における政治的アクティヴィズムの流れをどのように描いているのだろうか?

−−非-人間的なものやアニメ、即ち”アニメリティ”の持つ力は、どのような新た
な問題を私たちに提起しているのだろうか? ”アニメリティ”政治と美学の関係を考える新しい方法をどのように切り拓くのか?

押井守
1951年生まれ。東京学芸大学卒業後、TVアニメのプロダクションを経て、フリーとなる。主な劇場用アニメ作品として、「うる星やつら オンリー・ユー」(1983)、「うる星やつら ビューティフル・ドリーマー」(1984)、「機動警察パトレイバー劇場版」(1989)、「機動警察パトレイバー2 the Movie」(1993)。「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(1995)は、アメリカやイギリスでも公開され、世界的話題作となった。実写による劇映画も手がけ、「紅い眼鏡」(1987)「ケルベロス 地獄の番犬」(1991)「トーキング・ヘッド」(1992)「Avalon」(2000)などがある。
アニメ最新作である「イノセンス」(2004)はカンヌ映画祭コンペティションで上映された。

<講演 内容>

6/26 講演: レイ・チョウ(周蕾)
  時空間政治学の映画演出——黒澤明『わが青春に悔なし』

レイ・チョウによる『わが青春に悔なし』の読解にヒントを得て、国際交流基金とキネマ倶楽部は、日本の巨匠たちによる戦後の作品を上映します。時間に対してさまざまなアプローチを試みて第二次大戦に引き続く日本の戦後政治を描いた作品を中心にお届けします。監督たちは、近過去を考える新たな方法を模索するため、フラッシュバックやフラッシュフォワード、さらに、時間を表す際の映画独特の柔軟性などを創造的に活用しています。

講演者紹介:レイ・チョウ
 香港生まれ、スタンフォード大学で近代思想と近代文学の博士号を取得。現在はブラウン大学教授(現代文化・メディア論学部、比較文学学部に所属)。主な著書として、現代中国映画を扱った「プリミティヴへの情熱−中国・女性・映画」、「女性と中国のモダニティ—西洋東洋、その読みの政治学」、 「ディアスポラの知識人」など。

——————–
■5,上映作品:全5作品を英語字幕付きで上映(各1回上映)

「Avalon」
2000年/106分/監督:押井守/出演:マウゴジャータ・フォレムニャック
題名はアーサー王伝説にちなんでいるが、この作品は現実とハイテクについての押井守の思索といえる。荒涼とした灰色の未来社会という設定のもと、ポーランドで(ポーランド語によって)撮影されている。そこでは、多くの人々がアヴァロンというバーチャル・リアリティ戦闘ゲームに没頭しているが、現実に戻れなくなるという危険もつきものだった。女性プレイヤー、アッシュがアヴァロンの謎を追って果敢に戦う。

「雨月物語」
1953年/97分/監督:溝口健二/出演:京マチ子、森雅之、田中絹代、小沢栄
単なる怪奇映画に留まらず痛ましくも美しいこの作品は、不相応な夢を持った男たちの愚かさと、その為に苦しむ女たちをめぐる華麗な寓話である。源十郎は富に憧れる陶工だった。また、農民の藤兵衛は侍となることを夢見て、妻のことを顧みなかった。
戦の最中にも関らず陶器を売りに街へ向かったが、源十郎は美しく執念深い亡霊に魅惑され、藤兵衛は武士として名を上げるようになる。一方、彼らの妻たちは……。

「男の顔は履歴書」
1966年/89分/監督:加藤泰/出演:安藤昇、中谷一郎、伊丹一三(十三)、中原早苗
 3つの時代設定を配して、戦後の民族不和や犯罪そして闇市をフィルム・ノワール的に描く。車にはねられた男が雨宮医院に運びこまれた。雨宮は意識不明のその患者に見憶えがあった。観客はフラッシュバックによって、彼らが置かれた暴力的な過去(雨宮の弟俊次が殺された事件)に引き戻される。物語は現在に転換し、その妻に夫の命を救ってくれるよう懇願された雨宮は困難な手術に取り掛かる……。

「飢餓海峡」
1965年/183分/監督:内田吐夢/出演:三國連太郎、左幸子、伴淳三郎、高倉健
必ず過去によってしっぺ返しされるという推理物で、逃亡者は、1947年に北海道を襲った台風の際の、強盗殺人放火事件に関わっている。10年後、今や成功した実業家として偽名で暮らしていたが、あの運命の日に出会った娼婦が不意に訪れる。社会を告発するため事件捜査の様式を用いるという作品は、以後にもヨーロッパで多く登場したが、この作品は技巧性に優れ、ほとんど他の追随を許さない。

「わが青春に悔なし」
1946年/110分/監督:黒澤明/出演:原節子、大河内伝次郎、藤田進、河野秋武
 黒澤明の戦後メロドラマであり、1946年の廃墟という視点から、日本の激動の歴史を描き出す。物語はある女性(原節子が好演)と、その人生を吹き抜ける政治の嵐、そして彼女を巡る男たちの人生を中心に展開する。敗戦の焼け跡の中で、黒澤は過去へのフラッシュバックによって興味深い突発的な場面転換を行なっている。(今回のレイ・チョウの講演では、この構造を取り上げて、戦後と現在を熟考する)

以上