2001年の「日本におけるイタリア年」をきっかけに始まった「イタリア映画祭」は、今年で5回目を迎えます。過去4年連続の開催によって、日本の映画ファン、イタリアファンには既にゴールデンウィークの恒例イベントとして定着してきました。今では、わずか6日間に1万人前後の観客が訪れる大きな映画祭となりました。かつて日本で人気を誇ったイタリア映画が、21世紀になって再び活力を取り戻したことが、日本の観客に証明されたと言えましょう。そのうえ、去年は「ペッピーノの百歩」など過去にイタリア映画祭で上映した3本が映画館で公開され、今年は「輝ける青春」の劇場公開が決まり、この映画祭に対してイタリア映画界からの期待も高まっています。

そうした日伊両国の期待を背景に第5回のイタリア映画祭を開催する運びとなりました。上映されるのは、2003年以降に製作されて、各国の国際映画祭で称賛を浴びた粒よりの作品ばかりです。さらに今年はアンコール上映としてこれまでに公開された2本の傑作を加えました。

■未公開最新作!
「愛はふたたび」
2004年/108分/監督:カルロ・マッツァクラーティ
「聖アントニオと盗人たち」「ダヴィデの夏」「虎をめぐる冒険」とこれまでイタリア映画祭で3本が上映されたマッツァクラーティが、人気絶頂のマヤ・サンサとステファノ・アッコルシを起用した初めての歴史物。1936年、妻子ある銀行員ジョヴァンニはトスカーナのリヴォルノ駅に降り立った。そこでかつての恋人マリアと再会して、愛が蘇る。時代は移り変わり、ジョヴァンニは戦争にかり出され、二人の愛は・・・。2004年ヴェネチア国際映画祭に出品。

「アガタと嵐」
2004年/118分/監督:シルヴィオ・ソルディーニ
昨年劇場公開された「風の痛み」で新境地を開いたソルディーニ監督が、「ベニスで恋して」のキャスト(主演:リーチャ・マリエッタ)やスタッフと再結集して撮りあげた軽やかなコメディー。ジェノヴァで書店を経営する40代の女性アガタが、客の若い男性と出会うところから”嵐”は始まる。アガタの弟の隠された過去が明らかになり、姉弟は揺れる。アガタ役のリーチャ・マリエッタが、自由に生きる天真爛漫な働く女性を演じている。2004年ベルリン国際映画祭に出品。

「家の鍵」
2004年/105分/監督:ジャンニ・アメリオ
カンヌで審査員賞を受賞した「小さな泥棒」(1992)から着実な歩みを続けた俊英アメリオ監督が、満を持して昨年のヴェネチア国際映画祭で発表した新作。ベルリンの病院を舞台に、キム・ロッシ・スチュアート演じる父と障害を持つ子供が再会し、少しずつ歩み寄ってゆく心のふれあいを描く。病院で出会うシャルロット・ランプリングの存在が心の救いとなる。ルカ・ビガッツィの撮影が、3人の心の動きを軽やかにとらえている。今年度アカデミー賞イタリア代表。

「真夜中を過ぎて」
2004年/93分/監督:ダヴィデ・フェラーリオ
トリノ映画博物館で夜警の仕事をするマルティーノは極度の映画好きだが、ある夜、ハンバーガー・ショップで働くアマンダが舞い込んでくる。彼女にはアンジェロという恋人がいるのだが、マルティーノに好意を抱く。「突然炎のごとく」のジャンヌ・モローのセリフが使われたり、バスター・キートンを初めとして多くの無声映画が引用されており、そのみずみずしい映像感覚とあいまって、フランソワ・トリュフォーの再来と言われた。2004年ベルリン国際映画祭で批評家賞など受賞。

「ママは負けない」
2004年/89分/監督:フランチェスカ・コメンチーニ
職場が国際企業に買収されて、シングル・マザーが仕事でいじめを受けながらも、幼い娘を頼りに乗り切っていく物語をドキュメンタリー・タッチで描いた秀作。母を演じるのは、「ライフ・イズ・ビューティフル」のニコレッタ・ブラスキ。ルカ・ビガッツィの繊細な撮影も光る。監督の父親は「ブーベの恋人」の巨匠ルイジ・コメンチーニ、姉のクリスティーナも「わたしの一番幸せな日」などを監督。2004年ベルリン国際映画祭、あいち国際女性映画祭で上映。

「愛の果てへの旅」
2004年/100分/監督:パオロ・ソレンティーノ
スイスのホテルで一人優雅に暮らし、すべてが謎めいたイタリア人、ティッタ・ディ・ジローラモ。ホテルのバーで目にする美しいウェイトレス、定期的にスーツケースを持って訪れる銀行、遠くサレルノで暮らす家族、ただならぬ犯罪の匂い、秘められた愛、動かぬ決意…。スタイリッシュで痛ましい笑みの横溢する、シネフィルにはこたえられない作品。名優トニ・セルヴィッロの重厚な演技が素晴らしく、そしてアンナ・マニャーニの孫娘オリヴィアの美しさが眩い。2004年カンヌ国際映画祭出品。

「私をここから連れ出して」
2004年/95分/監督:トニーノ・ザンガルディ
ローマ郊外に立ち並ぶ高層団地の近くにロマ(ジプシー)が住みつき、住民との間に生まれるさまざまな軋轢や友情を一つの家族を中心に描いた力作。息子がロマの女の子と仲良くなるのを嫌がる夫に幻滅し、進んでロマの中にとけ込んでゆき、新しい出会いに胸をときめかせる母親をヴァレリア・ゴリーノが熱演する。ロマの女の子ロマーナをどこまでも追いかけてゆく少年ジャンピエロの姿も忘れがたい。音楽はエミール・クストリッツァが担当。ロッテルダム国際映画祭出品。

「スリー・ステップ・ダンス」
2003年/107分/監督:サルヴァトーレ・メレウ
サルデーニャ島の厳しい自然を背景に、そこで暮らす人々の日常を4部構成で描いた秀作。「春」は初めて海を見る少年たち、「夏」はフランス女性に出会う羊飼いの青年、「秋」は久しぶりに故郷に帰る修道女の女性、「冬」は月に一度の年金をもらう日の老人を、それぞれ淡々と描く。4つの物語は、どこかでつながっている。撮影にレナート・ベルタが参加。新人メレウ監督は、2003年のヴェネチア国際映画祭批評家週間最優秀賞、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ新人監督賞などを受賞。

「ローマの人々」
2003年/93分/監督:エットレ・スコラ
「特別な一日」の巨匠エットレ・スコラが、”永遠の都”ローマに生きる普通の人々をデジタル・ビデオで追いかけた軽快な新作。バスの中のおかしな人々、浮浪者同士の喧嘩、ビンゴ会場の人々、養老院の中、年老いた父親と夕食をレストランで共にする息子など、早朝から深夜までの20以上のエピソードが語られる。それらをつなぐのはオレンジ色のバス。ステファニア・サンドレッリが実名で登場するほか、ナンニ・モレッティの集会演説のシーンなども挟み込まれている。

「私のことを覚えていて」
2003年/120分/監督:ガブリエーレ・ムッチーノ
本国では「最後のキス」(2001)の大ヒットで、恋愛映画の名手となった俊英ムッチーノ監督の日本初登場作は、ローマの裕福な家族の危機を描く秀作。作家になりたかった夫を演じるのは、イタリア一の伊達男ファブリツィオ・ベンティヴォリオ、かつて舞台女優をめざした妻を演じるのは大人の女性の魅力一杯のラウラ・モランテ、そして夫が再会するかつての恋人はセクシー女優として名高いモニカ・ベルッチという豪華キャストを、速いテンポと流れるようなカメラワークで見せる。

■来日ゲスト!(予定)
ステファノ・アッコルシ (『愛はふたたび』主演)
マヤ・サンサ (『愛はふたたび』主演)
ジョルジョ・パゾッティ (『真夜中を過ぎて』主演)
ニコレッタ・ロマノフ (『私のことを覚えていて』助演)
オリヴィア・マニャーニ (『愛の果てへの旅』助演)
シルヴィオ・ソルディーニ (『アガタと嵐』監督)
ダヴィデ・フェラーリオ (『真夜中を過ぎて』監督)
ほか

チケットや上映スケジュールは、下記の公式サイトを!

□公式サイト
http://www.asahi.com/event/it05/