独立行政法人国際交流基金主催のもと、昨年6月に開催した「日本映画の巨匠と女優たち」に引き続く第2弾の企画として、「にっぽん60年代 巨匠たちの原点」と題した特集上映が開催されることになりました。東京フィルメックスは、企画・運営協力として関わっています。赤坂・国際交流基金フォーラムを会場にして、全7本を全て英語字幕付きでご紹介いたします。
スクリーンで上映される機会の少ない名作を、日本に在住する外国の方々に触れていただくとともに、日本の方々にも<再発見>していただける貴重な機会になっております。

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————- The Japan Foundation Film Series Part 2 ————–
————- When Masters were Young -1960’s ————–

     ■■■■ にっぽん60年代 巨匠たちの原点 ■■■■

 3/25(金)〜3/27(日)赤坂・国際交流基金フォーラムで開催!
  *英語字幕付き日本映画上映会

  市川崑、今村昌平、大島渚、篠田正浩、鈴木清順、山田洋次、吉田喜重
    日本社会が変貌を遂げるなかで、監督たちが捉えたものとは?

■1,開催概要

 主催:独立行政法人 国際交流基金
 企画・運営協力:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会事務局
 協力:松竹、日活

 期間:2005年3/25(金)〜3/27(日)
 会場:赤坂・国際交流基金フォーラム
     東京都港区赤坂2−17−22 赤坂ツインタワー1F
     東京メトロ銀座線・南北線「溜池山王」駅12番出口より1分

 料金:当日600円(当日券のみ) ※レクチャーは入場無料
 JFサポーターズクラブ会員は当日500円(当日券のみ)

  *各回入替制 *開場は15分前 *全作品英語字幕付き 

 お問合せ:上映会事務局(東京フィルメックス内)
      Tel:03-3560-6394(11:00〜17:30 平日のみ)

 会期中のお問合せ:国際交流基金フォーラムTel:03-5562-4096
         (開催期間中のみ3/25-3/27)

■2,企画趣旨

 国際交流基金は日本文化紹介活動の一つとして、日本映画に外国語字幕を付け、海外における上映に提供しています。このたび、日本に在住する外国の方々にも日本映画の豊かさに触れて頂く一端になればと、英語字幕付き日本映画の上映会を行います。
 昨年6月に開催した<Masters of the Japanese Cinema 日本映画の巨匠と女優たち>に引き続く第2弾の企画として、<When Masters were young -1960’s にっぽん60年代 巨匠たちの原点>と題し、今回は1960年代の作品に焦点を当てます。

 1960年代には高度経済成長が進み、都市部のサラリーマン層が増加し、庶民生活が豊かになってゆきました。1964年の海外旅行自由化や東京オリンピック開催に顕著なように内外の状況が大きく変化し、学生運動の高まりなど社会は激動しました。テレビの普及もあいまって、50年代に隆盛を極めた映画界は観客数が激減しますが、プログラムピクチャーがさかんになる一方で、新たな映画を模索していきました。

 今回の上映会では、普段スクリーンで見る機会の少ない作品に接し、巨匠の若き日の個性豊かな軌跡、そして今こそ再考したい日本社会の転換期ともいえる60年代の一端を目の当たりにすることができるでしょう。

■3,上映作品:全7作品を英語字幕付きで上映(各1回上映)

『日本春歌考』『なつかしい風来坊』『日本脱出』『乾いた湖』
『太平洋ひとりぼっち』『にっぽん昆虫記』『東京流れ者』

●日本春歌考 Sing a Song of Sex 
1967 創造社=松竹 カラー/シネスコ/103分
監督・脚本:大島渚/脚本:田村孟、田島敏男、佐々木守/撮影:高田昭/美術:戸田重昌/音楽:林光
出演:荒木一郎、小山明子、伊丹一三、吉田日出子、串田和美

『愛のコリーダ』(76)『戦場のメリークリスマス』(83)『御法度』(99)などで世界的に注目された大島渚は、一貫して性や国家・政治をめぐるテーマを取上げている。性や国家の主題を打ち出し観念的に描いた中期の注目すべき作品。大学入試の後、高校生たちは紀元節反対デモに出くわし、元教師の大竹と再会する。居酒屋で大竹は彼らの性的欲求不満を察知して春歌を歌い、高校生たちは妄想と現実の間をさ迷う。
かつての朝鮮人娼婦の哀歌とフォーク・ソングを対比させるなど、鋭い批判が見てとれる。

●なつかしい風来坊 The Lovable Tramp 
1966  松竹大船 カラー/シネスコ/90分
監督・脚本:山田洋次/脚本:森崎東/撮影:高羽哲夫/美術:重田重盛/音楽:木下忠司
出演:ハナ肇、倍賞千恵子、有島一郎、中北千枝子、真山知子

『男はつらいよ』シリーズや『たそがれ清兵衛』(02)『隠し剣 鬼の爪』(04)などで活躍する山田洋次は1961年に監督デビューした。この作品は初期の代表作のひとつであり、後の『男はつらいよ』シリーズの寅さんの原型ともいえる人物像が登場するコメディ。うだつのあがらない公務員の早乙女は無気力な日常の中で、風来坊の源さんと偶然知り合う。型破りな源さんに振りまわされながらも、奇妙な友情が芽生える。小市民の悲哀や現代社会において忘れられがちな人情を描く。

●日本脱出 Escape from Japan 
1964  松竹大船 カラー/シネスコ/96分
※16mmプリントでの上映
監督・脚本:吉田喜重/撮影:成島東一郎/美術:芳野尹孝/音楽:武満徹、八木正生
出演:鈴木やすし、桑野みゆき、待田京介、内田良平、坂本スミ子

アメリカに行きたいと憧れるバンド・ボーイは、兄貴分の金庫破りを手伝って警察に追われる身となるが、東京オリンピックを迎える騒ぎの中、日本脱出に全てを賭けようとする。『秋津温泉』(62)を経た吉田喜重が敢えて取り組んだアクション映画の異色作であり、当時の社会状況に対しての風刺がこめられている。ラストシーンをカットして公開されたことをきっかけに松竹を去った吉田は、以降、独立プロダクションでの製作を行ない『エロス+虐殺』(70)『戒厳令』(73)『鏡の女たち』(03)などを発表。

●乾いた湖 The Dry Lake 
1960  松竹大船 カラー/シネスコ/88分
監督:篠田正浩/脚本:寺山修司/撮影:小杉正雄/美術:佐藤公信/音楽:武満徹
出演:三上真一郎、岩下志麻、炎加世子、山下洵一郎、伊藤雄之助

『心中天網島』(69)『写楽』(95)『スパイゾルゲ』(03)などの篠田正浩は、この監督第2作により松竹ヌーベル・ヴァーグの一翼として注目された。松竹ヌーベル・ヴァーグは、大島渚、吉田喜重、篠田正浩を中心として1960年代前半にセンセーションを巻き起こした。脚本に寺山修司を初起用。60年安保で騒然の頃、無軌道な青春を謳歌する下条は学生運動から離脱し、テロの夢想を抱く。さまざまな社会矛盾を身近に感じつつ、ニヒリズムに駆り立てられる青年像を三上真一郎が好演。デビュー間もない岩下志麻が篠田作品に初出演。

●太平洋ひとりぼっち Alone Across the Pacific
1963 石原プロモーション=日活 カラー/シネスコ/97分
監督:市川崑/脚本:和田夏十/撮影:山崎善弘/美術:松山崇/音楽:芥川也寸志、武満徹
出演:石原裕次郎、森雅之、田中絹代、浅丘ルリ子、ハナ肇

市川崑は、『こころ』(55)『炎上』(58)などの文芸作品から『東京オリンピック』(65)といった異色ドキュメンタリーや時代劇など、多彩な秀作群により高く評価されている。日本人の海外旅行が自由化される以前の1962年、小型ヨットで太平洋を横断した青年のニュースが話題になった。ベストセラーとなった同名の手記を映画化し、海の醍醐味を視覚的に表現し、94日間におよぶ航海の冒険と孤独との闘いを物語る。また、郷里の家族への思いを回想で織り交ぜつつ、もどかしい親子関係や新旧世代の隔絶をも描き出している。

●にっぽん昆虫記 The Insect Woman  
1963 日活 モノクロ/シネスコ/123分
監督・脚本:今村昌平/脚本:長谷部慶次/撮影:姫田真佐久/美術:中村公彦/音楽:黛敏郎
出演:左 幸子、北村和夫、長門裕之、吉村実子、露口茂

『楢山節考』(83)と『うなぎ』(97)がカンヌ映画祭パルムドールを受賞するなど世界的な評価も高い今村昌平は、『豚と軍艦』(61)や本作など60年代の作品で“重喜劇”といわれる独自のスタイルを打ち出した。東北生まれの中年女性のバイタリティ溢れる半生を、昆虫観察のように冷徹なリアリズムで描いた傑作。日本社会の底辺を見据え、戦中戦後をしたたかに生き抜く女たちの姿を通して、人間の本質や土着的な性をあからさまにした描写が圧倒的。ベルリン映画祭主演女優賞受賞。

●東京流れ者 Tokyo Nagaremono(The Tokyo Wanderer) 
1966 日活 カラー/シネスコ/83分
監督:鈴木清順/脚本:川内康範/撮影:峰重義/美術:木村威夫/音楽:鏑木創
出演:渡哲也、松原智恵子、二谷英明、川地民夫、吉田毅

鈴木清順は、『ツィゴイネルワイゼン』(80)はじめ独特の美学で魅了し、最新作『オペレッタ狸御殿』(05)ではチャン・ツィイーを主演に迎えている。この初期の代表作では、ジャンル映画の枠組を発展させ、鮮やかな色彩感覚と大胆な虚構性を発揮している。主人公の“不死鳥の哲”はヤクザから足を洗ったが、かつての敵・大塚組の妨害にあい、各地を流れ歩く。ひとつの主題歌をモチーフにして、ハードボイルド風の東京篇、任侠映画的な新潟篇、喜劇タッチの北九州篇と、異なる趣向を融合させている。

■4,上映スケジュール ※開場は各15分前

◆3/25(金)
 19:00 日本春歌考

◆3/26(土)
 13:00 なつかしい風来坊
 15:00 日本脱出
 16:45 吉田喜重監督によるレクチャー&質疑応答 (90分) (入場無料)
 19:00 乾いた湖

◆3/27(日)
 11:30 太平洋ひとりぼっち
 14:00 にっぽん昆虫記
 17:00 東京流れ者

以上