黒沢明監督の「羅生門」や溝口健二監督の「雨月物語」などの照明技師、岡本健一さんが5日の朝、京都市中京区の病院で亡くなった、87歳。
1914年、京都生まれ。34年、京都映育現像所入社。以後、東宝、新興キネマ、東映を経てフリーに。現在、日本映画照明技術者協会名誉会員。日本映画TV技術協会照明技術賞、京都記者クラブ賞、目本映画照明技術者協会最優秀照明賞ほか受賞多数。
『霜生門』、『雨月物語』、『近松物語』、『西陣の姉妹』、『愛の亡霊』、『忍ぶ川』これらは日本を代表する巨匠・名匠といわれる監督の作品であるが、岡本健一氏はこれらすべての作品の照明を担当している。
1984年に映画界入りして以来、一貢して照明の道を歩み、47年に初めて照明技師として『夜の門』の照明を担当。以後、多くの優れた作品を手がけてきた。総合芸術である映画の中で.照明の果たす役割は大きい。ライトひとつによって親近感・奥行き・雰囲気が演出されるため、照明技師には経験と技術が強く要求される。特に岡本氏は、ふすま・障子など日本家屋独特の難しい素材にあって、繊細な照明、人間の顔の陰影を浮き彫りにする技術の第一人者ある。日本を代表する監督とともに数々の秀作を手がけてきたことからも、彼の照明技術がいかに信頼されているかが分かる。また『夜の門』以来、多くの助手を育成し、現在第一線で活躍する弟子も多い。今村昌平監督と20年にわたってコンビを組み、数々の名作を世に送り出している照明技師・岩木保夫も彼の弟子の一人である。このように、長年にわたり照明技師として優れた作品の製作に携わるとともに後続看の育成にも尽力、映画界の向上発展に貢献された岡本健一氏の残した功績は大きい。

1981年には山路ふみ子映画功労賞を受賞、1999年大阪国際シネマドリームいずみさの映画祭で第3回夢人間大賞を受賞されている。

□大阪国際シネマドリームいずみさの映画祭
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