ノールッキングバック/NO LOOKING BACK

なぜ、うまく なじめないの?
生まれ故郷の町なのに…

1999年度/アメリカ/ビスタビジョン/ドルビーSR/上映時間:1時間35分

<INTRODUCTION>
 ロバート・レッドフォードが新人育成のために始めたサンタンス映画祭で、95年
度グランプリを受賞し、当時27歳だったエドワード・バーンズの第1回製作、監督
、脚本、主演作品となる「マクマレン兄弟」の出現は一つの事件だった。
 この映画はさらにフランスのドービル映画祭審査員特別賞、全米プロデューサー
協会が新人に贈るゴールデン・ローレルNOVA賞、NAT0/ショーウエスト興行者コン
ペティションでは最優秀脚本賞を受賞した。
 製作費25.OOOドルの映画がアメリカだけで1000万ドルの輿収をあげ、実に製作費
の400倍近い驚異的な利益率の高い映画になり、さらに全世界で上映された。この
成功がインディペンデントの映画作家に与えた夢と希望は絶大なものがあった。
 ロバート・レッドフォードは映画製作会社サウス・フォーク・ピクチャーズを設
立し、エドワードの第2回監督、主演作品「彼女は最高」を自ら製作総指揮を取っ
て世界に発表したが、ふたたびエドワードの監督、脚本、主演、共同製作で取り組
んだ話題作が、この「ノー・ルッキング・バック」である。
 エドワードは、スティーブン・スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」
にも重要な役で出演し、俳優としての演技力も高く評価されているが、今回はガー
ルフレンドのクローディアを捨てた故郷のニューヨーク州ロックアウエイ・ビーチ
の小さな1町に、舞い戻ってきた青年チャーリーを演じる。
 クローディアは、いまはチャーリーの親友でもあったマイケルと同棲し、食堂で
働きながら平穏な生活をしていたが、彼の出現で心乱される。夢も失い青春のター
ニング・ポイントに立たされたクローディアは、二人の男性の間で愛の選択を迫ら
れる。
 クローディアはマイケルに愛されていながら彼との結婚に踏み切れない。一方、
妊娠していた自分を捨てた憎んでいたはずのチャーリーに、なぜかまた心惹かれて
いくのだ。実直型のマイケルと、プレイボーイのチャーリー。性格の違う男との愛
はクローディアの自分探しの新しい旅の始まりでもあった。
 クローディアを演じるのは、「ジム・キャリーはMr.ダマー」「乱気流/タービュ
ランス」のローレン・ホリーで、誰もが一度はたどる等身大のラブ・ストーリーを
繊細な心理演技で見せて高い評価を得ている。
 マイケルには、カリスマ的な人気を持つロック・シンガーのジョン・ボン・ジョ
ヴィが扮し、演技派スターとしての新生面を開いた好演で、演技賞を受けた「ムー
ンライト&ヴァレンチノ」についで絶賛されている。
 クローディアの母親を最近は「Xファイル/ザ・ムービー」に助演していたプラ
イス・ダナー、クローディアの姉を「マクマレン兄弟」に出演していたコニー・プ
リットンが演じる。エドワード作品のもう一つの重要なテーマは”家族関係”だが
、生活感情を巧みに描き込む彼の脚本が、今回もドラマに一段と深みを加えている。
 製作のマイケル・ノジックはレッドフォード作品「クイズ・ショウ」「モンタナ
の風に抱かれて」を製作。プロデューサーのテッド・ホープ、撮影のフランク・フ
リンジ、編集のスーザン・グラフも「彼女は最高」についでエドワード・バーンズ
と組んでいる。
 音楽はジョー・デリアが担当しているが、ブルース・スプリングスティーンの「
バレンタイン・デイ」「アイム・オン・ファイアー」などの既成曲が効果的に便用
されている。
 ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港に近い、映画の舞台と同じロッカウェ
イ・ビーチでロケーションが敢行された。海に面した静かな町で、「この風土が、
映画の重要なキャラクターでもある」と監督は言っており、その美しいカメラと共
にロケ効果も見逃せない。

<STORY>
 ニューヨーク州ロックアウエイ・ビーチは潮風が吹く静かな呵で、クローディア
(ローレン・ホリー)は食堂で働いていた。彼女は幼馴染みのマイケル(ジョン・ボ
ン・ジョヴィ)と同棲していた。結婚を迫るマイケルに、クローディアは決断がつ
かず拒んでいた。
 クローディアは仲間が集まるバーで、テレサ(ジェニファー・エスポシート)や
ゴルディ(ニック・サンドウ)たちと会うが、変わりぱえしない会話や、なんの進
歩もない惰性で生きている現状に疑問を持っていた。
 クローディアの実家には離婚した姉ケリー(コニー・ブリットン)が戻っており、
姉妹の母親(ブライス・ダナー)は6か月前に夫が家を出ていったショックから立ち
直れないでいる。出戻りの姉や蒸発した実父のことを思えば、彼女は結婚に踏み切
れない。
 そんな時、何年も町を離れていたチャーリー(エドワード・バーンズ)が実家に戻
っていると知ったマイケルは、親友だった彼の家を訪ねクローディアと結婚するつ
もりだと告げる。クローディアはプレイボーイのチャーリーの、かつてのガールフ
レンドだったのだ。
 自分を捨てて町を出ていったチャーリーの出現に、マイケルの前では冷静さを見
せても、クローディアの心には穏やかでないものがあった。彼女はチャーリーの子
供を中絶し、その後、二度と子供の生めない体になっていたが、チャーリーはその
ことを知らない。
 チャーリーはクローディアの店にやってきた。突っ張るクローディアに「この町
を出たいと言っていた夢見る娘はどこへ行った?俺は君に会うために戻った」と告
白する。
 「迷惑だわ。平和な生活を乱さないで。私はマイケルと結婚するの」とクローデ
ィア。
 チャーリーはガソリンスタンドで働き出したが、マイケルから車の修理を頼まれ
たと言いクローディアのもとにやってくる。彼女は、マイケルの留守を狙ってやっ
てきたチャーリーの下心を見抜くが、彼は「これからもまとわりつくよ」と言い残
し帰って行った。
 クローディアは同僚のアリスから、早くも町ではチャーリーと彼女のことが噂に
なっているので、注意したほうがいいと忠告される。一方でチャーリーは18歳の大
学生アニー(スーザン・プラット)を連れて歩くようになり、クローディアはジェラ
シーを感じないといえぱ嘘になる微妙な目分の心に気づく。
 あらためてマイケルから結婚を催促されると、クローディアは「結婚したら何を
目標に生きれぱいいの?」と疑問を投げ掛ける。「わからない」とマイケル。「だ
から私もわからないの」と、二人の愛は不確実に揺れ動いていた。
 チャーリーを交えたポーカーで負けたマイケルは、腹癒せに「クローディアに近
づくな」と日頃の不満をぶつけた。
 チャーリーは、クローディアに、「俺と一緒に町を出よう」と誘う。「二度と傷
つけられるのはいや」という彼女に、「約束するよ。もう絶対に傷つけない。君が
必要なんだ」と迫っていた。
 クローディアは母が倒れたという知らせに実家へ駆けつける。家出中の父がラス
ベガスで新しい愛人ができ、家を譲るから正式に別れてくれといってきたショック
からだった。母は「パパが恋しい」とクローディアに言い、チャーリーとの交際は
やめるように説得するが、「ママと同じよ。断ち切れないの。マイケルを苦しめた
くないけど、もうときめかないのよ。違う生き方をしたいのよ」と自分の本心を打
ち明けていた。
 ついにクローディアはチャーリーの誘いを受ける決心をした。ケリーは妹を心配
し、「パパが残した忠告のいい言葉の一つよ。”頑張ってもダメなものはダメなん
だ”とね。チャーリーはクズよ」。「誤解してるわ。彼は変わったのよ。私に生き
る希望をくれたわ」とクローディアは言い残しチャーリーのもとへ駆けつけた。
 モーテルでクローディアはチャーリーに抱かれた。そこで自分がもう子供の出来
ない体になったことを彼に初めて告白した。「すまない」と言う彼だが、本心から
子供が嫌いだったこともわかった。「子供が欲しい時にもう生めないなんて皮肉ね
」ともらしたクローディアの心からは、彼への未練が引き潮のように去っていった。
 その頃、マイケルはクローディアのゆくえを探していたが、朝帰りした彼女にす
べてを察知した。クローディアがチャーリーと関係を持ったことを知ったマイケル
は悔しさに涙を流し、ついに”別れ”を宣告する。
 クローディアはチャーリーにも別れを告げ、町を出る決心をする。それは彼女に
とって新しい自分探しの旅立ちでもあった。

<STAFF>
監督・脚本:エドワード・バーンズ
製作:テッド・ホープ、マイケル・ノジック、エドワード・バーンズ
製作総指揮:ロバード・レッド・フォード
共同製作総指揮:ジョン・スロス
ライン・プロデューサー:アリッシー・ベザラー
撮影:フランク・プリンジ
編集:スーザン・グラフ
プロダクション・デザイナー:テレーズ・デブレス
衣裳デザイナー:サラ・ジェーン、スロットニック
音楽:ジョー・デリア

<CAST>
クローディア:ローレン・ホリー
チャーリー:エドワード・バーンズ
マイケル:ジョン・ボン・ジョヴィ
クローディアの母:ブライス・ダラー
ケリー:コニー・ブリットン
テレサ:ジェニファー・エスポジート
ゴルディ:ニック・サンドゥ
アリス:カイリ・バーノフ
ライアン夫人:キャサリーン・ドイル
アニー:スーザン・プラット
ミッシー:ウェルカー・ホワイ