『怪異談 生きている小平次』
1982年/78min/磯田事務所+ATG/スタンダード

<INTRODUCTION>
中川信夫77歳の遺作。登場人物は三人以外、「動物たりとも」一切出演しないと
いう低予算の条件の中、戯れから始まった三角関係が徐々にのっぴきならない関係
へと変化し、ついには死を招くさまを、得意の実験精神を発揮し、全編緊張に満ち
た古典画面で描く。

<STORY>
天保十三年、夏。ドサ廻りの旅役者小幡小平次(藤間文彦)と、太鼓叩き那古太
九郎(石橋正次)、そして太九郎の女房、おちか(宮下順子)の三人は幼なじみだ
った。「一朝志を得えたら」と、小平次と太九郎の夢は大きかった。いつも仲良く
旅をしたり、酒を飲む三人の仲も、だが、小平次が思いを寄せていたおちかを口説
いたことから亀裂が生じる。
旅芝居の道中で、太九郎に「おちかをくれ」と言って、小平次は沼に突き落とさ
れてしまう。小平次を殺してしまったと思っていた太九郎は、おちかのいる江戸に
戻って再び小平次に会い、なおもおちかを欲しいという彼を滅多打ちにする。
太九郎とおちかは江戸を逃れるが、小平次はぴったりと二人に付きまとう。怯え、
疑心暗鬼になる太九郎に心が離れていくおちか。三人は、運命に導かれていくよう
に賽の河原で巡り会い、戦いの末、小平次と太九郎は相果てる。

<STAFF>
脚本:中川信夫
撮影:樋口伊喜夫
美術:西岡善信

<CAST>
藤間文彦
石橋正次
宮下順子