『地獄』
1960年/101min/新東宝/新東宝スコープ/カラー ※ニュープリント上映

<INTRODUCTION>
ゲーテの『ファウスト』を元に発想された作品。前半ではこの世で起きる凄惨な
もう一つの“地獄”とも言うべき世界を描き、後半では“針の山”や“血の池地獄
”の中で魂の救済という中川的テーマが打ち出される。奔放な想像力で、見る者の
想像を鮮やかに裏切る怪作。

<STORY>
大学生田村が(沼田曜一)が酔漢を櫟き殺し、同乗していた学友清水四郎(天知
茂)が、婚約者幸子(三ツ矢歌子)の勧めで自首しに行く。途中、二人が乗ったタ
クシーが追突事故に見舞われ幸子が死ぬ。
傷心の四郎が実家に帰ると、父(林寛)の友人谷口(大友純)の娘という、幸子
と瓜二つのサチ子(三ツ矢歌子)がいた。サチ子に惹かれていく四郎の前に、田村
か現われ四郎を悩ませる。幸子の両親、酔漢の母やすも四郎の居場所をつきとめ追
ってくる。四郎の父が経営する養老施設の十周年祝いに現れたやすは、毒を盛り込
んでその場にいる全員を殺し、自分も死ぬ。
四郎を始め全員が地獄に堕ち、現世の罪の責苦を受けていく。サチ子と異父兄弟
であることを知らされショックを受ける四郎は、自分の子を宿した幸子と再会、炎
の中で泣き叫ぶ我が子を地獄から救い出す。四郎の死に顔は穏やかな表情をたたえ
ていた。

<STAFF>
脚本:中川信夫、宮川一郎
撮影:森田守
美術:黒沢治安
音楽:渡部宙明

<CAST>
天知茂
沼田曜一
三ツ矢歌子
大友純
山下明子
中村虎彦
宮田文子