小さな赤いビー玉/Un sac de billes

6月中旬より銀座テアトルシネマにてレイトロードショー!!

1975年/フランス映画/100分/イーストマンカラー
パナヴィジョン/1.66ヴィスタ

<INTRODUCTION>
『小さな赤いビー玉』は、『ラ・ピラート』『ピストルと少年』『ポネット』など
の諸作品で知られるジャック・ドワイヨン監督が1975年に発表した
長篇劇映画第2作です。
ドワイヨン監督が32歳のときに撮りあげた『小さな赤いビー玉』は、彼にとっては
例外的な製作条件で撮られたがゆえに、常に現代を舞台に若い男女の葛藤を描き続
けるドワイヨン映画の秘密をr優しさ」とr厳しさ」の両面において反対側から照ら
しだすものとなっています。

<STORY>
 1941年の年末近く、ドイツ軍占領下のパリ。
 パリの北、クリニャンクールの町に、ロシア系のユダヤ人ジョッフォー家(両親と
4人の息子)は小さな床屋をひらいていた。末っ子ジョゼフの回想の声ではじまる。
 「”ユダヤ人の店”という看板を出さねぱならなくなった時、僕らは不満だった。
考えもしなかったことだ。だからドイツ兵が通ると、看板を隠すために立った。
ユダヤ人の一斉検挙が始まっていたからだ」。
 1O歳のジョゼフと12歳のモーリスが看板を隠したいたずらによって、ドイツ兵が
ユダヤ人の床屋に入ってしまう。この事件はたちまち町の噂になった。
 ナチスのユダヤ人迫害は、日を追うごとにはげしくなり、一家はユダヤ人の印で
ある黄色い星を衣服に縫いつけられることになる。兄弟はこの星が原因で、学校で
のいじめにあう。そんな放課後、ジョゼフは星がかっこよく思えたイタリア人の友
人と、ビー玉のつまった袋を黄色の星と交換する。
 いよいよ身近に危険が迫るのを感じた父親は、息子たちを非占領地帯の南フラン
スヘ、越境させようとする。
 まず、長男のアンリと次男のアルベールが南フランスのマントンヘと脱出した。
今度は、モーリスとジョゼフの番だ。父親はジョゼフに「ユダヤ人か?』と同う
「はい」と答えるジョゼフを父はなぐった。決してユダヤ人だと言わないことを
子供たちにたたき込んだのだ。そして、行こうとするジョゼフを呼び止め、
「兄さんにパンを盗られるなよ」と耳打ちする。
 実際、列車の中では、モーリスがジョゼフにパンを分けるよう口論が始まって
いる。ダクスの駅に着くと、ドイツ軍将校が身分証の検査を乗客のひとりひとり
におこなっている。2人の兄弟は不安におののく。モーリスは隣に座っていた司
祭に助けを求める.司祭は兄弟を「私の連れだ」と言ってくれ、難を逃れる。
 兄弟は占領地帯の境界の町へと、バスでたどり着く。ここで、占領地帯から
非占領地帯へと移る一本の道路をドイツ軍歩哨の目を盗んで渡らねばならないの
だ。2人は兄たちを助けたペダールにカフェのビリヤード場で会うが、一人5千
フランとふっかけられ、2人で6千フランの手もちしかない兄弟は絶望する。
だがそこに現われたパン屋の青年が千フランで運んでくれるという。兄弟は大き
なパンを運ぶ手押し車に隠れて、深夜境界線を突破する。しかし、モーリスはジ
ョゼフを残して戻っていった。カフェに残されていたユダヤ人を助けるためだ。
8人のユダヤ人を助けたモーリスはパン屋の青年と折半した残りの四千フランを
もって、不安でおしっこをもらしたジョゼフのもとに戻る。これからの旅費をか
せがねぱならなかったのだ。
 兄弟は南仏を目指して、歩く.途中、空腹にたえかね、農家のニワトリを盗ん
で食べたりもした。駅では、ドイツ兵にとがめられたジョゼフは機転をきかせ、
近くにいた大人をパパだといつわり、「僕にキスして」と話しかけ、窮地を逃
れた。そして、南仏の海岸にたどり着く。
 マントンの町で理髪店を園乗していた兄たちと再会する。モーリスはパン屋
で、ジョゼフは農家で働きはじめる。
 そして、両親も到着する。両親がやってくるのを見たジョゼフは、冷たいレ
モネードを両親に飲ませるためにつくろうとして、家に鍵をかけるが、逆に怒
られてしまう。
 だが、そこへ2人の兄に、ドイツでの強制労働の召喚状が届けられる。一家
はマントンを捨て、イタリア占領下のニースヘと逃げる。だが、そこもイタリ
アの占領時代は終わり、代わってドイツ軍がやって来る。一家は交代で見張り
を立て、屋根裏部屋へと隠れる。やがて、絶え切れなくなった父親は、自分の
ヘッドで寝たいと言い張る。緊張の極限にきているのだ。
 モーリスとジョゼフは、青年労役隊にもぐり込む。しかし、ドイツ兵に捕ま
り、ドイツ軍本部となっているホテルヘ連れていかれ、ユダヤ人かと尋問され
る。兄弟はアルジェの出身だと言いつのるが、医師に「割礼」の検査を受け、
抑留され、きつい労役の日々を耐える。モーリスはドイツ兵に、24時間以内に
洗礼証明書を取ってくるように言われる。ジョゼフは人質だ。ジョゼフは逆さ
吊りの拷問まで受ける。モーリスは戻ってくる。親切な司祭が迎えにきてくれ
ると。そして、2人は釈放される。
 だが、今度は父親が逮捕されたと知らされる。モーリスとジョゼフは北の山
岳地帯の町へ逃げる。モーリスはカフェで働き、ジョゼフは本屋のマンスリエ
家の住み込みで働き、自転車で新聞配達をする。
 本屋の娘フランソワーズは、ジョゼフと同じ齢で、ロマンチックな小説を書
いている。フランソワーズに本の続きを書くように言われたジョゼフは、有名
小説を丸写しする。
 ジョゼフはフランソワーズと初めてのキスを体験する。
 戦局がドイツの不利の方へと展開している。対独協力者であるマンスリエは
、フランソワーズを疎開させる。ジョゼフはフランソワーズと別れのキスをか
わす。
 ついにパリが解放され、レジスタンス派が勝利をおさめる。マンスリエは捕
えられた。
 モーリスとジョゼフは車でパリヘと向かった。
 そして、自宅である床屋の前で、4人の兄弟は記念写真を撮ろうとしていた
.しかし、そこには父親の姿はない。

<INTERVEW>
ジャック・ドワイヨン監督インタビュー

−−−原作の『一袋のビー玉』との出会いは?

ドワイヨン:74年につくった私の作品『頭の中の指』を見た後で友人であり先
輩のクロード・ペリ監督(『老人と子供』)と話している時に、この小説の名が
出て読むように勧めれたのです。そしてこれを映画化してみてはどうかとも言
われました。

−−−原作のどの点に魅かれたのですか?
ドワイヨン:それは私の追求しているテーマ、つまり、いかなる社会状況下に
おいても人間の英雄的行為というものが、決してウソでない限り、それは正当
化されるべきだし、その行為自体は常に日常性の中からしか生まれないという
ことだ。更にそれは子供と愛がからむならとても素晴しいことだと思う。

−−−あなたにとってこれはペストの映画なのでしょうか?
ドワイヨン:私は自らの作目をすべてペストだと考えている。今回の『小さな
赤いビー玉』でいうなら、製作の条件がすべて完璧だといえる。つまり私はこ
の主人公たち三人と、とても仕事をすることを欲し、実現したこと。更にカラ
ー・パナビジョン・サイズで振れ、ネガ・フイルムが五万フイートもふんだん
に使え、撮影期間が70日間もとれたということだ。

−−−何故、主人公に子供を選んだのですか?
ドワイヨン:私のテーマ追求に彼らは必要なのだ。つまり、この映画は、戦時
下におけるフランス人の生活をスケッチする以前に、時代そのものが持つモラ
リズムという概念をとらえ、その中から三人の少年、少女たちに、人生や恋の
遊びをさせたかった。彼らは時代とは関係なく、おおらかで、たくましい。

−−−原作と映画と変ったところはどんな点ですか?
ドワイヨン:むずかしい質問ですが、両親が最初に逮捕されるところや、ロゼ
ッタの家に逃げるエピソードをカットしました。二時間にも満たない映画とい
うワク内で原作と同じ型で語ろうとするのは不可能ですからね。そして残した
エピソードを結びつけるために新しいシーンを書き加えました。また、主人公
たちひとりひとり、特にフランソワーズは原作以上に深く彫りこみました。私
はこの映画の三人の少年、少女を深く愛することによって、原作の精神、特に
ジョゼフの行動については忠実であったと信じています。

このインタヴューは1977年公開当時、富士映画配給のパンフレットに掲載され
たものです。

<STAFF>
監督:ジャック・ドワイヨン
原作:ジョゼフ・ジョッフォ
脚本・脚色・台詞:ジャック・ドワイヨン、ドニ・フェラリス
音楽:フィリップ・サルド
撮影:イヴ・ラファイユ
カメラ:ジェラール・ド・バティスタ
録音:ミシェル・フォール
美術:クリスチャン・ラマルク
衣装:ミシェル・シュミナル
編集:ノエル・ポワソン
製作担当:ジェローム・カナパ
製作総指揮:ピエール・グルンシュタイン

<CAST>
ジョゼフ:リシャール・コンスタンティーニ
モリース:ポール=エリック・ジェルマン
父:ジョゼフ・ゴルタンペール
母:レーヌ・パルテーヴ
アンリ:ユペール・ドラグ
アルペール:ジル・ロラン
マンスリエ:ミシェル・ロパン
フランソワーズ:ドミニク・デュクロ