20世紀最後の任務

『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ/The World Is Not Enough 007』
1999年/イギリス作品/128分/配給:UIP/MGM映画

<INTRODUCTION>
11月の全米公開と同時に、週末3日間で興行収入約3550万ドルを達成した『ワール
ド・イズ・ノット・イナフ』は、クリスマス映画の本命との噂どおり大ヒットを記
録。MGM映画史上最大の ヒットとなった他、『タイタニック』の2700万ドルをはじ
め、並み居る大作映画の記録を更新するという、驚異的な登場を飾りました。
まさに、時代の変わり目に映画の歴史を塗り替える、究極の最高傑作の誕生です。

また、新作が登場するだけで“事件”になる007ですが、この大ヒットは決して、
今ままでの延長戦上に生まれたものではありません。看板シリーズの最新作である
ことよりもまず、作品完成度で絶大な魅力を放っているからです。たとえば、欲望・
復讐による犯罪、世界征服、ハイテクを駆使したテロ行為。これらはどれもジェー
ムズ・ボンドにとっては容易に片づけられる仕事です。しかし「20世紀最後の任務」
とは、ボンドでさえ予測のつかない、ひときわ重大かつ危険な仕事だった…。

旧ソ連から中東にかけて張り巡らされた現代文明の生命線、「パイプライン」をめ
ぐり、ボンドとテロリストが繰り広げる体力と頭脳の攻防戦。スペイン、フランス、
イギリス、トルコ、アゼルバイジャン…と世界各地にめまぐるしく舞台を変えなが
ら、瞬時に形勢逆転するボンドと敵の対決。巧妙に仕掛けられた伏線がからむ謎め
いたストーリーは、冒頭からラストまで徹底的に意表を突き、リアルな緊迫感で観
る者を包み込む…。「20世紀最後の任務」に挑むジェームズ・ボンドは、アクショ
ン、サスペンスなどの枠を超越し世界を縦横無尽に駆けめぐる。もはや、ボンドに
とって、世界というジャンルはあまりにも狭すぎる!!

今回の適役となるレナード(ロバート・カーライム)は、かつてMI-6の派遣した諜
報員により頭に弾丸を打ち込まれている。死亡しなかったものの、いつかはその弾
丸が彼の命を奪う運命づけられた男。弾丸が中枢神経を破壊しているため、あらゆ
る肉体的感覚を失った“不死身のテロリスト”なのだ。自ら「俺は一度死んでい
る」という彼には失うものは何もない。肉体的痛みを感じない反面、心の痛みをも
てあまし、自分でも残された時間を把握できないまま世界を破滅させかねない作戦
を遂行していく。今までの悪役にはない、傷を負った複雑な役をイギリス屈指の個
性派俳優カーライルが圧倒的な存在感で演じています。

そして愛を武器に、自分の人生は誰にも触れさせまいと毅然と現実に立ち向かう石
油王の娘エレクトラを演じるのはソフィー・マルソー。アイドル女優としての人気
を不動のものにしつつ、トルストイの『アンナ・カレーニナ』などで、美貌に加え
て感動を呼ぶ演技の実力をみせつけました。今回は、莫大な石油の資産を持つロ
バート卿の一人娘で、その資産ゆえにレナードに誘拐され、孤立無援の状況からひ
とりで脱出した過去をもつエレクトラを演じます。父の事業を引き継ぎ、MI-6のM
(ジュディ・デンチ)やボンドと懇意にしながらも、真意と測りきれない謎を残すミ
ステリアスな存在です。

また核研究の権威クリスマス・ジョーンズ博士は、まさに核兵器級の魅力、デニー
ス・リチャーズが体力・知力を備えた若々しい演技をみせています。『ワイルドシ
ングス』のあまりにも危ない女子高校生の役で、一気に若い男性層をわしづかみし
たことは記憶に新しいところです。タンクトップにショートパンツ姿で核解体現場
を駆けめぐり、時にはミニドレスでまわりを圧倒する容姿とアトモスフィアの持ち
主です。

ほか、シリーズでかかせないQ役をデズモンド・リューウェイン(残念ながら本作
の完成後に他界し、これがシリーズ最後の出演作となった)、サマンサ・ボンド(
マネーペニー)、アカデミー女優ジュディ・デンチ(M)等のレギュラー陣に加え、
モンティ・パイソン・シリーズでおなじみのジョン・クリース(R)、ミュージシャ
ンのゴールディ(ブル)、『イル・ポスティーノ』(95)のマリア=グラツィア・クッ
チノッタ(シガー・ガール)など、新キャラクターたちが個性的かつ実力派の俳優陣
により深みを与え、今までにないキャラクター性、そしてドラマ性の富んだ仕上が
りとなっています。

監督は『戦え!ロレッタ・愛のために』『ネル』のマイケル・アプテッド。
アクション大作映画の監督は初めてのアプテッドですが、大胆さと繊細さを併せ
持った演出でエキサイティングでドラマティックな作品に仕上げました。また製作
は『007/ムーンレイカー』以降、全シリーズに参加してきたマイケル・G・ウィル
ソン。『007/ドクター・ノオ』でシリーズを開始したアルバート・R・ブロッコリ
亡き後、シリーズを引き継いでいる娘のバーバラ・ブロッコリとチームを組んで『
ゴールデンアイ』『トゥモロー・ネバー・ダイ』と連続ヒットを記録しています。

そして脚本はニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、ブルース・フィアスティ
ンのチームによるもの。プロダクション・デザインは『タイタニック』でアカデ
ミー賞を受賞したピーター・ラモント。そして特殊効果スーパーバイザーは、今ま
でSFX技術者やフロア・スーパーバイザーとして9本の007シリーズに参加してきた
クリス・コーボールド。ミニチュア・エフェクト・スーパーバイザーは、特殊効果
スーパーバイザーとして『エイリアン2』でアカデミー賞を受賞しているジョン・
リチャードソンが『トゥモロー・ネバー・ダイ』に続いて担当している。

<STORY>
ジェームズ・ポンド(ピアース・ブロスナン)は、ある組織から石油王ロバート・キ
ング卿の高額な現金を取り戻し、M(ジュディ・デンチ)の待つM1-6本部へ戻った。
しかし、ボンドの活躍に喜んだロバート卿が現金に近づいた途端、紙幣そのものが
爆発し、Ml-6内での卿の暗殺、本部爆破というかつてない屈辱的な大事態となる。
即ちにボンドはテムズ河をボートで逃げる実行犯の女シガー・ガール(マリア=グ
ラツィア・グッチノッタ)をQ(デズモンド・リューウェリン)の試作段階のジェッ
トボートで追いかけ、壮絶なチェイスの末追いつめる。が、「彼が許さないわ」と
いう言葉を残し、女は自ら命を絶つ…。

ロバート卿の葬儀でボンドは卿の娘エレクトラ(ソフィー・マルソー)に会う。また
Mみずから指揮をとる作戦会識で、主犯がレナード(ロバート・カーライル)とい
う元KGBのテロリストであることや、数年前のレナード一味によるエレクトラ誘拐
事件について知る。レナードはかつてMが送った諜報員によって脳に銃弾を受け、
そのためあらゆる神経・感覚を失った不死身の男であった。その時がいつかは分か
らないが、いずれ銃弾が彼を死へ導くまでは最強屈指のテロリスト。

ロバート卿に続いてエレクトラが狙われると判断したMは、ボート・チェイスの時
に負った肩の痛めを隠すボンドのたっての希望により、彼女の護衛を命じる。父の
後を継いでロシアから中近東をまたいでヨーロッパヘとつながる石油パイプライン
プロジェクトに取り組むエレクトラはこれだけ危険な仕事をしている自分に今更危
険があるなんて、人生にスリルはつきものよ、とタフな精神論をボンドに浴びせる。

地域住民のためにパイプラインのルートを変更させたかと思うと、かつてボンドに
成敗され、今では表向きキャビアを卸しているズコフスキー(ロビー・コルトレー
ン)の経営するカジノで一度に巨額な賭け金を浪費するエレクトラ。ミステリアス
な彼女を理解出来ないまま、ボンドは行動をともにし、互いに惹かれていく。

ある時、核解体現場から大量のプルトニウムがレナードによって盗まれてしまう。
若々しい魅力と体力・知加に恵まれた核研究所の権威の美しいクリスマス・ジョー
ンズ博士(デニース・リチャーズ)とプルトニウムの行方を追ううちに、ボンドは
レナードの世界を破滅と混乱へ陥れる作戦を知るが、その時、Mまでもが誘拐され
たという連絡を受け取る。

一体誰が敵で誰が味方なのか? 愛はどこにあるのか? 
そして、最後に裏切られるのはボンドか、あなたか?

<STAFF>
監督:マイケル・アプテッド
製作:マイケル・G・ウィルソン
特殊効果スーパーバイザー:クリス・コーボールド
ミニチュア・イフェクト・スーパーバイザー:ジョン・リチャードソン
音楽:デヴィッド・アーノルド
主題歌:ガービッジ

<CAST>
ジェームズ・ボンド:ピアース・ブロスナン
エレクトラ・キング:ソフィー・マルソー
レナード:ロバート・カーライル
クリスマス・ジョーンズ:デニス・リチャーズ
M:ジュディ・デンチ
ヴァレンティン・ズコフスキー:ロビー・コルトレーン
ザ・ブル:ゴールディー