『サンデイ・ドライブ/SUNDAY DRIVE』
1998年/16mm/カラー/スタンダード/モノラル/上映時間86分

・2000年2月26日(土)よりユーロスペースにてレイトロードショー

<INTRODUCTION>
レンタルビデオ屋の店長岡村とアルバイトの結衣は、ふとした偶然から結衣の同棲
相手の真二の浮気を知ってしまう。店内で立ちすくむ二人の前に血を流して横たわ
る真二。ほんの一瞬の出来事が、店長と結衣を仕事仲間から共犯者へとすり替えて
しまった。「ずっと結衣ちゃんのことが好きだった」という店長の言葉も、真二を
置き去りにした事実も、うまく受け止めることのできない結衣。二人は真二の兄の
ワゴン車で、行くあてもなく逃亡する。追跡者のいない逃避行は、時折ピクニック
とさえ感じられてしまうほどの暖昧さで、ふたりの前を通り過ぎていく…。

恋人と毎日くり返される生活は、突然の事件によって変化しはじめる。しかし、新
しい土地と生活への旅立ちは事件のあいまいさと同様、あいまいな終末を迎える。
そんな日常に閉じ込められた登場人物たちの動作や言葉は、ときに滑稽であったり
気持ち悪かったりするのだが、それこそまさに、誰もが見たり感じたりしている現
実なのかもしれない。

大人の男として結衣を守ろうと右往左往する遅れてきたヒーローを演じるのは、自
身の監督作以外にも、映画やTVドラマに数多く出演する塚本晋也。本作品では、誇
張されたコミカルな演技を抑え、微妙な表情や声のトーンで、中年男の不器用な恋
心を自然体で表現している。結衣役の唯野未歩子は「フレンチドレッシング」や
「大いなる幻影」(監督・黒沢清)でもヒロインを務め、自らも自主製作映画を監督
する注目の女優である。他に、丹治匠や鈴木卓爾、田中要次ら、ユニークな俳優が
登場。

1997年、やまだないと原作の「フレンチドレッシング」で劇場公開デビューした斎
藤久志監督の最新作「サンデイドライブ」。今回はオリジナルの脚本で、日常に生
じる生々しい人間の感情を少ないセリフのひとつひとつや、一見偶発的に見える出
来事の連鎖によって浮き上がらせている。ほぼ全編ワンシーン、ワンカットのカメ
ラワークを用い、役者に感情を動かざせ、緊張感を維持させる斎藤監督の演出は、
確かなリアリティを生み出す。遠景の効果を活かす撮影は、同監督の「はいかぶり
姫物語」などの自主製作映画や「冷たい血」(監督・青山真治)「流星」(監督・山
仲浩充)などを手掛けた石井勲。

<STORY>
レンタルビデオ屋でアルバイトをしている結衣は、同じくアルバイトの真二と同棲
している。いつものように朝食を用意する結衣は、授業をさぼり、ひとりで散歩を
してきたところだ。ビデオ屋の店長・岡村は、店員総出の野外バーベキューを企画
し、たくさん買い込んだ材料の中から、イチゴを取り出して結衣に勧める。「ずっ
と結衣ちゃんの事が好きだった」という店長と、笑って冗談にする結衣。

同じ日の夜、店長と結衣は真二の浮気を知ってしまう。二人の目の前には、頭から
血を流して横たわる真二。いったんは警察に通報しようと考えるのだが、結局二人
は、真二の兄のワゴン車で逃避行を始める。「結衣は何もしてない。オレが結衣を
守る」

車が着いたところは、キャンプをするはずだった河原。車を止め、結衣が出会った
見知らぬ女の子が加わって、3人は、店長の作ったヤキソバを食べる。あたかも一
家族の、おだやかな日曜日の一コマように。ワゴン車の中で夜を共にした店長と結
衣は、お互いの腹をさぐりあう。店長の過去の相手が同僚のみどりだと知ると、結
衣は一言、「やっぱり店長って信じられない」

次の日の朝、どこからともなく現れた前日の少女と共に、二人はドライブを続ける。
ルーフ・ウインドから体を乗り出す結衣と少女。運転する店長もどこかうれしそう。
そんな時、真二から店長の携帯電話に連絡が入る…

<STAFF>
製作:塚本晋也
監督・脚本:斎藤久志
プロデューサー:鈴木ゆたか
撮影:石井勲
録音:中村由美子
編集:岡田久美
音楽:金澤信一
助監督:吉見拓真
製作協力:(株)リクリ
製作:海獣シアター

<CAST>
店長・岡村:塚本晋也
結衣:唯野未歩子
真二:丹治匠
少女:中山舞衣
みどり:小野麻希子
警察官:田中要次
ビデオ屋の客:唯野友歩
真二の兄:鈴木卓爾