愛においては、誰もが犯罪者。
−−−僕は殺してない。
−−−彼とは寝てないわ。

嘘の心/Au Coeur du Mensonge

1999年/フランス映画/1時間53分/カラー/ヴィスタ/ドルビーSRD/
日本語字幕:寺尾次郎/配給:セテラ

2000年1月22日よりお正月第2弾 キネカ大森にてロードショー

<INTRODUCTION>
もう、誰も信じられない。少女殺人事件が田舎町を「嘘」の迷宮に変える

 ブルターニュの町で暮らす画家ルネと訪問看護婦ヴィヴィアンヌの夫婦を悪夢が
襲った。ルネの絵画教室の生徒である少女が強姦され殺されたのだ。少女がレッス
ン後に殺害されたことから若き女警部ルサージュはルネを執勃に尋問、住人たちの
疑惑の視線が彼に注がれる。そんな中人気作家のデモがヴィヴィアンヌに接近して
きた。事件以来、外界を避ける夫に悩むヴィヴィアンヌは快活なデモに安らぎを感
じ、次第に彼と親密な間柄になってゆく。そして偶然知った妻の「嘘」から、彼女
の心がデモに傾きつつあることに気付き苦しむルネ−−−。殺人犯かも知れない夫
。不貞を働いたかも知れない妻。町が疑心暗鬼に陥った中、第二の殺人が起きる…。

サスペンスの巨匠クロード・シャブロルが観客に仕掛けた最新の罠

 デピュー当初の才気溢れる『いとこ同志』(58)や『二重の鍵』(59)から近年では
国外でも高い評価を受けた『主婦マリーがしたこと』(88)や『沈黙の女/ロウフィ
ールド館の惨劇』(95)まで、常に第一級のサスペンス映画を発表し続ける巨匠クロ
ード・シャブロル。通算51作目に当たる本作『嘘の心』では、先の読めないスリリ
ングなストーリーを従来より抑えた演出で描いて新境地を見せ、40年を越える監督
生活に於いて再び絶頂期を迎えたと賞賛を浴びた。
 主要スタッフはここ数年のシャブロル作品に携わった”シャブロル組”が集結。
製作は『Poulet Au Vinaigre』(未・84)以降本作までのシャブロル監督のほぼ全作
品を手掛ける敏腕プロデューサー、マラン・カルミッツ。共同脚本は『Violette N
oziere』(未・78)や『ふくろうの叫び』(87)等で度々組んできたオディル・バルス
キ。シャブロル監督とは『Docteur.M』(未・90)以来約10年ぶりのコラボレーショ
ン復活となった。ブルーを基調としたカメラで本作を更に謎めいたものにしている
撮影のエデュアルド・セラは『髪結いの亭主』(90)から『鳩の翼』(97)等の大作ま
で手掛ける売れっ子。
 シャブロル作品には前作の『Rien Ne Va Plus』(未・97)に引き続きの登板であ
る。その他編集のモニク・ファルデュリス、衣装のコリンヌ・ジョリー、音楽のマ
チュー・シャブロル等の常連たちが各パートで卓抜した仕事ぶりを見せ、作品を支
えている。

現代フランス映画界屈指の実力派4人が奏でる“演技の四重奏”

 俳優使いの名人としても知られるシャブロル監督。これまでもジャン=クロード
・ブリアリ、ベルナデット・ラフォン、ステファーヌ・オードランやイザベル・ユ
ベールといった俳優たちの実力を開花させてきたが、今回の主演者4人からは“演
技の四重奏”ともいえる競演を引き出している。妻ヴィヴィアンヌには鮮烈な印
象を残した『沈黙の女〜』に続き二度目のシャブロル作品となるサンドリーヌ・ボ
ネール。本作では生活感溢れる美しさと毅然とした表情が魅力的だ。夫ルネには個
性的なマスクに繊細さが同居する『パリのレストラン』(95)の注目株ジャック・ガ
ンブラン。殺人の嫌疑と妻の不倫の疑惑に苦しむ男の胸の内を最小限の演技で見事
に表現した。ルサージュ警部には『ネネットとボニ』(96)『愛する者よ、列車に乗
れ』(98)のヴァレリア・ブルーニ=テデスキ。意外な人選ではあるが、これまでに
なかった鋭さを感じさせる演技で監督のチョイスに応えた。そして物語をさらに複
雑にする曲者デモ役に元人気キャスターで著作もあるアントワーヌ・ドゥ・コーヌ
。今年セザール賞の候補になった彼、本作でもデモという男の魅力的な面と軽薄な
面を絶妙なバランスで演じきった。この4人に加え最近は『エステサロン ヴィー
ナス・ヴューティ』(98)に出演のベテラン女優ピュル・オジエ、名脇役で製作者と
しての顔も持つベルナール・ヴェルレイ、シャブロル作品の常連ピエール・マルト
と監督の息子トマ・シャブロル、『愛の地獄』(94)にも出ていた映画監督でもある
ノエル・シムソロら多彩な顔ぶれが脇を固めている。
 『嘘の心』は殺人事件を描いたサスペンス映画であると同時に、様々な「嘘」に
翻弄される人々と、「嘘」に試される男と女のドラマでもある。それを越えて、ル
ネとヴィヴィアンヌがとったある“行動”とは…。真犯人の解明よりも深い謎を残
すラストを、あなたはどう受けとめるだろうか。

<STORY>
 ブルターニュのある田舎町にて、10歳の幼い少女エロディの死体が発見された。

−−−絞殺であった。

 若くして警部に昇進したばかりのフレデリック・ルサージュ(ヴァレリア・ブル
ーニ=テデスキ)は、絵画教室の講師ルネ(ジャック・ガンブラン)に捜査の目を向
けている。彼の絵画レッスン後にエロディは殺害されており、つまりルネは生前
のエロディに会った最後の人物なのである。

 ルネ夫妻、とりわけ訪問看護婦をしている妻ヴィヴィアンヌは、近隣の住民たち
と上手く付き合ってはいたが、夫妻はいわゆる昔ながらの“土地の人間”ではなか
った。ヴィヴィアンヌはこの狭い社会のごく小規模な世界に生きていた。夫ルネが
仕事に恵まれず、すっかり自信喪失して落ち込んでいるためである。ルネの描く絵
は売れず、生計を立てる為に、本意ではない絵画教室の講師をしているのだった。

 地元“スター”であるジェルマン・デモ(アントワーヌ・ドゥ・コーヌ)はメディ
アの注目を浴びる売れっ子の作家である。デモは物腰も柔らかく、人目を引く魅力
的な男であり、恋の対象として十分な要素を兼ね備えていた。ヴィヴィアンヌはそ
んな彼に次第に惹かれていく。ルネは妻の気持ちのうつろいを薄々感じてはいるが
、ただ戸惑うばかりだった。

 ルネに対する世間の疑惑の目は、日毎厳しくなり、とうとうルネの生徒は一人残
らず去ってしまう。そんな中で、ヴィヴィアンヌは孤立奮闘していた。地元警官ル
ダン(ベルナール・ヴェルレイ)の助言に支えられて慎重に捜査を進める女警部を相
手どり、苦戦するのだった。

 やがて第2の殺人が起こり、街に不安の色を一層濃くさせる。

 女警部は真相を追求すべく慎重に人々の言葉に耳を傾ける。街の人々は快く証言
を続けるのだが……

<STAFF>
監督:クロード・シャブロル
脚本・台詞:オディル・バルスキ、クロード・シャブロル
撮影:エデュアルド・セラ
音楽:マチュー・シャブロル
編集:モニク・ファルデュリス
録音:ジャン=ベルナール・トマソン、クロード・ヴィラン
フレーム:ミシェル・ティリエ
美術:フランソワーズ・ブノワ=フレスコ
衣装:コリンヌ・ジョリィ
記録:オーロール・シャブロル
助監督:セシル・メストル
製作担当:イヴォン・グレン

<CAST>
ヴィヴィアンヌ:サンドリーヌ・ボネール
ルネ:ジャック・ガンブラン
フレデリック・ルサージュ:ヴァレリア・ブルー二=デデスキ
ジェルマン・ロラン・デモ:アントワーヌ・ドゥ・コーヌ
ルダン警部:ベルナール・ヴェルレイ
イヴリーヌ・ボルニエ:ピュル・オジエ
レジス・マーシャル:ピエール・マルト
ボルニエ:ノエル・シムソロ
ヴィクトール:ロドルフ・ポーリィ
アンナ:アドリエンヌ・ポーリィ
ベティ:ヴェロニク・ヴォルタ
マダム・ルモワンヌ:シルヴィ・フレップ
クリスチャン:エリック・サヴァン
ジョエル・サルヌ:プロラン・ジパシエ
レジスト医師:トマ・シャブロル
エロイーズ・ミシェル:ウェンディ・マルペリ
レティシア:アナスタシー・ロングル
ソフィー・ルサージュ:ジュリア・コットレ

情報提供:セテ