モルグで出会った男と女。
女は死の淵から蘇生し、男を慕い後を追う。

『日曜日の恋人たち/J’AIMERAIS PAS CREVER UN DIMANCHE』
1998年/フランス映画/91min/カラー/1:1.85ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アルバトロス・フィルム/宣伝:シネマ・キャッツ
配給:エース ピクチャーズ、日本ビクター
2000年3月下旬より俳優座トーキーナイトにてロードショー!

<INTRODUCTION>
◎現代の恋人たちに贈る「眠れる森の美女」の物語

この『日曜日の恋人たち』は、「犯された死体が蘇る!」というセンセーショナ
ルな発端で始まるが、そのスキャンダラスな出来事は、この映画の一部分でしか
ない。
この映画は、愛を失い絶望の淵に立つ男と、死の縁から蘇生し、自分を死姦した
男を追う女の出会いを通し、愛と死の狭間に揺れる恋人たちを鮮烈に捉えた愛の
物語である。
監督のディディエ・ル・ぺシュールは語る。
「これは、愛とセックスのバランスを失った現代の人々に贈る“眠れる森の美女
”の物語である」と。

◎愛、セックスに纏わりつく死の香り

人類の歴史にエイズが出現以来、セックスは死の危険を伴う非常に危険な行為で
あるという一つの常識が誕生した。例えば、相手に対してごく自然に欲望を抱い
た人間は、同時に「死」という危険な要素とも付き合わなくてはならない。
「生」という人間の根本的な欲求から発生していた筈の「愛」や「セックス」と
いうコミュニケーションの手段は、「死」や「恐怖」というこれまで対極に位置
していたネガティブな要素で纏いつかれ、もはや瀕死の状態にある。
その絶望の中で、普通に愛を語ることも普通のセックスを行うことさえ出来なく
なった人々。愛を求めて彷徨い、失っては傷つき、いつの間にか危険なセックス
ゲームに身を置く恋人たち。
この映画の主人公ベンも、愛を失い絶望の中で彷徨う男である。
そんな彼の前に、突然テレーザという若い女が現れた。
最初は死体という形で、次には彼を追う美しい女として。

◎新聞の三面記事が愛の物語の発端

10年くらい前の新聞に載った「死体公示所で犯された死体が蘇る!」というショ
ッキングな三面記事を読み。この映画のモチーフにしたというぺシュール監督。
彼は死姦により蘇生したテレーザに、彼女の死体を犯した男ベンを追わせる。
そんな彼女に対し頑なに心を閉ざし、拒絶するベン。
ベンはもはや快楽も生をも否定し、ただひたすらに自己破壊の危険なセックスの
中だけに、自分のいる場所を見い出しているのだ。
やがてテレーザは、ベンの心の裏側に棲む、死の病に犯された友、彼の許を去っ
た妻、愛を失った男や女たちと出合う。
テレーザは、次第に彼の人生に巻き込まれて行くのだが…。

◎純粋なものを追い求めて。

1988年以降数多くのミュージッククリップを発表してきたディディエ・ル・ペシ
ュールは、1996年初長編“Des Nouvelles Du Bon Dieu”を発表。この「激怒の喜
劇!」と呼ばれた映画は、ニューヨーク、ビアリッツ等の映画祭で高い評価を得、
グランプリを獲得、“鬼才ペシュール”の名を高めた。
監督のペシュールは語る。
「この世紀末において、なぜ人間達のセックスや愛という基本的な人間関係はこ
こまで傷つけられてしまったのか?そして人類はそれを克服できるだろうか?こ
ういった疑問や自分自身の悩みの中で、この映画の撮影が始まった。この映画の
登場人物も、物語も、出演者も、そして私自身も純粋なものを持ち続けるだけを
目指し、この映画を作った。」
テレーザを演じたのは、『天使が見た夢』で98年カンヌ国際映画祭主演女優賞受
賞、J・ビノシュ、R・ボーランジェを追う新進若手女優エロディ・ブシェーズ。
「テレーザがベンを追うのは、決して彼を“命を救った救世主”と崇めたからだ
けではない。彼女が蘇生し、人生を見つけ、再び歩き始めた時に出会った男がベ
ンだからよ」と彼女は語る。
一方のベン役には『グラン・ブルー』でセザール賞主演男優賞受賞以来、一躍ス
ターダムに乗り、エロディ・ブシェーズがヒロインを演じた“Lovers”では主演、
監督の二役を務めたジャン=マルク・バール。
「死から蘇ったテレーズを受け入れないのは、彼女の行動を恐れたからではなく、
蘇った生命を拒否したのだ」と彼は語っている。

◎撮影とロケーション、音楽について

ペシュール監督は、映画の中の暴力やセックスに対し、その表層的な部分の描写
を否定した。彼がこの映画で試みた「絞りを開放にしたフィルターなしのカメラ
をカメラマンが抱えて撮影する」という手法は、人を背景から遠ざけ、内面的な
エロティシズムと人の心の動きに焦点を合わせるのに効果を呼んだと言う。
この映画の映画音楽を担当したのは、フィリップ・コーエン=ソラル。彼は心臓
の音と音楽のシンコペーションをシンクロさせながら、この映画の恋人たちを象
徴的に捉えた。
また映画の冒頭のセンセーショナルなクラブのシーンには、ミュージック・コン
クレートの創始者、現代音楽の巨匠ピエール・アンリが参加。テクノ・ミュージ
ックの開祖としても知られる彼と彼の音楽は、現代のクラブシーン、ミュージッ
クシーンに多大な影響を与えている。
法医学研究所の死体公示所の撮影は、とある精神科病棟の解剖教室とその廊下を
使い、本物の死体が行き交う中での撮影となった。
また、見た者に強い印象を与える、ベンの友人ニコが死を迎える森と湖に囲まれ
た美しいシークエンスのロケは、クレルモン・フェラから100キロ程の所にに
あるオーベルニュ地方にある湖で行われた。
このシーンで使用したアルカションの船は、この地方ではル・カロンと呼ばれ、
「死者の渡守」という意味があると言う。

<STORY>
深夜のモルグでのパーティ。
白衣を脱ぐ男たち、検視所のベッドで戯れに抱かれる女。
クラブの喧燥。ストロボの閃光に浮かび上がる女。
そして恍惚。
「毎日が無為に過ぎる」、と暗闇の中で男が囁いた。

ある夜、病院の死体公示所に美しい女の死体が運び込まれた。
彼女の名前はテレーザ。
クラブでドラッグを過剰摂取し、エクスタシーの中で死に至った若い女だ。
細く、白い腕。美しい肢体。
男の目が怪しく揺れた。
彼の名はベン。病院の死体公示所に勤める検視官だ。
ある衝撃に駆られたベンは、深夜テレーザの眠るモルグに戻り、彼女の死体を犯
した。
その時、衝撃が走った。突然彼女の死体が蘇生したのだ。
事件の余韻も醒めぬまま、警官の取り調べが始まり、公示所での懲罰が決まる。
そして妻の離反。
その中で、テレーザだけは、ベンを批判しようとはせずに、ただ彼の後を追う。
そんなテレーザに対し、頑ななまでに心を閉ざすベン。
彼は過激なセックスゲームに溺れる自分の姿を晒し出し、冷酷に彼女を突き放す。
しかしテレーザは、かってとは違う人生を歩み出している自分を自覚していた。
やがてテレーザは、ベンの心の裏側に棲む、死の病に犯された友、彼の許を去っ
た妻、愛を失った男や女たちと出合う。
テレーザは、次第に彼の人生に巻き込まれて行くのだが…。

<STAFF>
監督・脚本:ディディエ・ル・ペルーシャ
撮影:ドニー・ルーデン
録音:ドニ・ルーデン
編集:シルビー・ランドン
音楽:フィリップ・コーエン=ソラル、ピエール・アンリ
製作:フィリップス・コート

<CAST>
テレーザ:エロディ・ブシェーズ
ベン:ジャン=マルク・バール
デュコン:マルタン・プティギョ
ボリス:パトリック・カタリフォ
アベル:ジェラール・ルシーヌ
ニコ:ジェラール・ミシェル・フェト
ジャンヌ、エレン:ザジ
マリー:ジャンヌ・カシラ