日本では、2020年3月に行われた大阪アジアン映画祭でプレミア上映された韓国映画『チャンシルさんには福が多いね』。たまたまご一緒した女性が、映画が終わるなり「この映画は私だわ!」と嬉しそうに言ったのが忘れられない。夫も子供もいる方だった。そして自分も同じことを考えていたのが。

ⒸKim cho-hee All Rights Reserved/Really Like Films

長年プロデューサーとして映画制作を支えてきた監督が急逝し、心血を注いできた映画の仕事を失ってしまったチャンシルさん(カン・マルグム)、40歳。車が通れないような丘の上に都落ちして下宿住まいを始め、後輩女優のソフィー(ユン・スンア)宅で家事手伝いをしながら人生を考える生活。そんな時、アルバイトでソフィーのフランス語家庭教師を務める短編映画の監督ヨン(ペ・ユラム)と知り合い、恋の予感が…?

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脚本・監督は、『ハハハ』(’10)『ソニはご機嫌ななめ』(’13)『自由が丘で』(’14)などでホン・サンス監督のプロデューサーを務めて来たキム・チョヒ監督。韓国において3本の短編作品で注目を集めてきたが、本作が長編デビュー作となる。自身が投影されている本作は、人生におけるひそかな覚悟を温かくユーモア溢れる筆致で描いている。

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映画の序盤で、急な坂道をチャンシルさんと後輩たちが引っ越しの荷物を運んで行く列が映し出される。どこか滑稽でもあり、重たい脚を運ぶしかない人生のように続く坂道。
「熟れて落ちるだけ」
花梨の黄色く熟れた実を見つめ、焦燥感にかられる人生の後半戦。
チャンシルさんの生活は、往年の大スターが意外な姿(キム・ヨンミン)で現れたり、イケメンで性格は理想的なのに何故か○○○○監督ファンのヨン、ちょっぴり偏屈な大家さん(ユン・ヨジョン)、今一つ伴わない実力に悩む甘えんぼのソフィーといった愛すべきキャラクターたちに彩られる。一見すっとぼけた会話は実に示唆に富んでいて、チャンシルさんの心に染み入り変化をもたらしてゆく。

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自分は世の中に必要とされているのか?
自分がしたいことは?
チャンシルさんは自分に問い続ける。

新年はこののほほんとした主題歌に身を任せながら、チャンシルさんと一緒に自分の「福」を見つけてみませんか?

映画『チャンシルさんには福が多いね』は、関西圏では1/8(金)よりシネリーブル梅田にて公開。
1/15(金)より京都シネマ元町映画館も近日公開予定。公開情報はこちらから。

映画『チャンシルさんには福が多いね』主題歌

執筆者

デューイ松田