グッチーズ・フリースクールとTCエンタテインメント株式会社が共同で企画する「若手映画監督×クラシック映画」のお知らせです。
「グッチーズ・クラシック部」と題し、『極北のナヌーク』などを監督し、ドキュメンタリー映画の“父”として知られるロバート・フラハティ監督『ルイジアナ物語』(1948)と、ゴダールやトリュフォーらヌーヴェル・ヴァーグの監督たちにも愛された巨匠ジャック・ベッケル監督『エストラパード街』(1953)のDVDを6月19日に発売いたします。

これらの映画に対し、このたび映画や映像を制作され現在活躍中の若手映画監督の方々からコメント動画をいただきました。言葉によるコメントもあれば、映像による表現など、多種多様なコメント動画です。現代を生きる若手の監督だからこそ発見できる、クラシック映画の新しい魅力が伝わる動画となっております。また、これらのクラシック映画のどこに魅力や意義を見出すかに表れる、監督の個性や考えも感じられるものとなっております。

監督名:URL 
小田香:https://youtu.be/zS8DM8MyBxo
川尻将由:https://youtu.be/su-rXZJ7sSk
廣原暁:https://youtu.be/1HTHQvQHcnU
中村祐太郎:https://youtu.be/4WcYU6yriuA
深田隆之:https://youtu.be/-swI33MC0Aw

また、下記URLでは上記の動画すべてを一覧にしたグッチーズ・フリースクールのサイトとなります。
https://gucchis-free-school.com/event/classic201904/

監督プロフィール
小田香(おだかおり)
フィルムメーカー/アーティスト。1987年大阪府生まれ。イメージ・音・人間の記憶(声)を通して映画/映像/絵画などを制作。初長編作品『鉱 ARAGANE』(2015) が山形国際ドキュメンタリー映画祭・アジア千波万波部門にて特別賞を受賞。2017年のエッセイ映画『あの優しさへ』は各国の国際映画祭を巡回した。

川尻将由(かわじり まさなお)
アニメーション作家。1987年生まれ、大阪芸術大学卒。アニメスタジオに勤務後に映像制作会社「ねこにがし」 を起業。監督作『ある日本の絵描き少年』は第40回ぴあフィルムフェスティバルにて準グランプリなどを受賞。下北沢トリウッドにて劇場公開された。

中村祐太郎(なかむらゆうたろう)。
東京都大田区出身。多摩美術大学映像演劇学科卒。第29回東京国際映画祭に出品された『太陽を掴め』で劇場長編デビュー。翌年『女流闘牌伝 aki-アキ-』で商業映画デビューをする。2019年『スウィート・ビター・キャンディ』が公開予定。役者としても活動している。

廣原暁(ひろはらさとる)
1986年東京都出身。武蔵野美術大学映像学科卒業、東京藝術大学大学院映像研究科修了。2009年に制作した『世界グッドモーニング!!』が、2010年のぴあフィルムフェスティバル審査員特別賞を受賞。さらにバンクーバー国際映画祭でグランプリを受賞し、ベルリン国際映画祭など世界各国の映画祭にて上映される。2013年にPFFスカラシップ作品『HOMESICK』が全国公開され、劇場デビュー。最新作は『ポンチョに夜明けの風はらませて』。

深田隆之(ふかたたかゆき)
1988年生まれ。2013年、短篇映画『one morning』が仙台短篇映画祭、Kisssh-Kissssssh映画祭等に入選。2018年、『ある惑星の散文』が第33回ベルフォール国際映画祭の長編コンペティション部門にてノミネートされる。また、2013年から行われている船内映画上映イベント「海に浮かぶ映画館」の館長でもある。iPhoneを使用した日記映画『私のための風景映画』を日々制作しvimeo上で発表している。

DVDソフト詳細

『ルイジアナ物語』(6月19日発売)
価格:2500円(税別)
発売:グッチーズ・フリースクール、有限会社フェイズアウト
販売協力:TCエンタテインメント株式会社
監督/ロバート・フラハティ 脚本/フランシス・フラハティ、ロバート・フラハティ 撮影/リチャード・リーコック 音楽/ヴァージル・トムソン 出演/ジョゼフ・ブドロー、ライオネル・ルブラン、E・ビアンヴニュ、フランク・ハーディ、C・P・ゲドリー
1948/アメリカ/英語&ケイジャン・フランス語/78分 原題/Louisiana Story 日本語字幕:上條葉月
DVD特典:小森はるか(映像作家)による解説リーフレット

≪『ルイジアナ物語』とは≫
ドキュメンタリー映画の”父”とも呼ばれる映画監督ロバート・フラハティによる1948年公開のフィクション映画。アメリカ・ルイジアナの広大な湿地に住む少年が油田掘削に魅せられていく様子を描いている。実は石油会社のPR映画でありながら、随所で川から顔をだす獰猛なワニ、少年と友達のようなアライグマ、そしてそびえたつ油田やぐらなどが、どこかファンタジックに見える。また詩情豊かな映像美の一方で、少年vs.ワニの生死をかけた戦いや、油田掘削の迫力ある映像も必見だ。本作はアカデミー賞原案賞にノミネートされ、音楽を担当したヴァージル・トムソンはピューリッツァー賞を受賞。1994年にはアメリカ国立フィルム登録簿にも選ばれている。キャストは全くの無名で、主人公の少年は、ルイジアナでオーディションをして見つけてきた。アメリカ映画だが英語だけでなく、主役であるケイジャンとよばれるフランス系住民が話すケイジャン・フランス語が聞ける点も貴重な作品だ。また撮影はのちに著名なドキュメンタリー監督になるリチャード・リーコックが担当している。

≪『ルイジアナ物語』あらすじ≫
ルイジアナの広大な湿地に両親と住む少年アレクサンダー(ジョゼフ・ブドロー)。自然と野生動物に囲まれた彼の生活は、ある日、父親が油田掘削の許可書にサインしたことで大きく変わる。ほどなく始まった掘削作業に彼は魅了されていき、作業員との和やかな交流が生まれる。しかし突如トラブルにより掘削は中止の危機に陥ってしまう……。

推薦コメントも頂戴しております!

『ルイジアナ物語』
小森はるか(映像作家)
主人公である少年の顔と同じくらい、もしくはそれ以上に、川の顔をみていたように感じた。人の顔を撮るときに経験するのと同じように、きっとある一瞬にしか現れない、誰も見たことのない川の表情というものがあるはずだ。カメラを通してでしか出会えないその瞬間が『ルイジアナ物語』には丹念に記録されている。

井戸沼紀美(『肌蹴る光線ー新しい映画ー』主宰)
大きな歴史の波に揺られながら、小さな舟を漕ぐケイジャン人たちの微笑み。うつろいゆく水面のいきいきとした表情。水辺を離れて住処を紡ぐ蜘蛛の眩しさ。これらすべてが、石油会社をスポンサーにつけて撮影された映画の一部だということ。静かな炎を感じる。

浅倉 奏(随筆/フォトグラファー)
水面が揺れ、ワニが、アライグマが、石油採掘のピストンが、父が、母が、そして少年が動くとき、カメラはただそのさまを見つめるだけなのに、すべてのアクションがポエジーへと転化する。絶対にスクリーンで観るべき1本。

藤井仁子(映画評論家)
少年とアライグマとワニとサギとが同じ資格で行きかう湿地帯。編集への依存がかえって捕獲者と獲物、自然と技術の対立を撹乱し、中心を欠く現実の多声性を浮きあがらせる。稀代のドキュメンタリストがたどりついた境地である。


『エストラパード街』(6月19日発売)
価格:2500円(税別)
発売:グッチーズ・フリースクール、有限会社フェイズアウト
販売協力:TCエンタテインメント株式会社
監督/ジャック・ベッケル 脚本/アネット・ワドマン 撮影/マルセル・グリニョン 音楽/マルグリット・マノー、ジョルジュ=ヴァン・パリス 出演/アンヌ・ヴェルノン、ルイ・ジュルダン、ダニエル・ジェラン、ミシュリーヌ・ダックス、ジャン・セルヴェ、ジャック・モレル、パケレット
1953/フランス/フランス語/97分 原題/Rue de l’Estrapade 日本語字幕:井上牧子
DVD特典:角井誠(映画研究・批評)による解説リーフレット

≪『エストラパード街』とは≫
パリを舞台に微笑ましい夫婦喧嘩から痛切な恋まですべてを描き切る、フランス恋愛コメディの決定版。『幸福の設計』や『穴』などで知られ、トリュフォーやゴダールらにも尊敬されたフランス映画の巨匠ジャック・ベッケルによる恋愛映画。若い夫婦の揺れ動く心情をみずみずしく描き、ヌーヴェル・ヴァーグの輝きも予見させる。ヒロインのファッションや、ふたりが住むパリのアパルトマンからさりげなく見えるエッフェル塔などおしゃれな演出が随所に見られる。ベッケルの『エドワールとキャロリーヌ』にも出演したアンヌ・ヴェルノンとダニエル・ジェラン、さらにハリウッドでも『忘れじの面影』や『恋の手ほどき』などで活躍したルイ・ジュルダンがヴェルノンの夫役として出演している。フランスの映画批評家アンドレ・バザンも絶賛した作品。

≪『エストラパード街』あらすじ≫
フランソワーズ(アンヌ・ヴェルノン)とカーレーサーのアンリ(ルイ・ジュルダン)は仲のいい夫婦だったが、あるときアンリに浮気疑惑が。アンリは機転をきかせて一時は乗り切るも、友人の告げ口により家出を決意したフランソワーズは、エストラパード街にある部屋を夫に内緒で借りて別居生活を始める。すると、隣の部屋のロベール(ダニエル・ジェラン)がフランソワーズに恋をしてしまう。一方、アンリは妻とヨリを戻そうと画策し、ついに妻の居場所を突き止め、エストラパード街に向かうのだが……。

推薦コメントも頂戴しております!

『エストラパード街』
隈元博樹(映画雑誌「NOBODY」編集部)
一時の別れとすれ違いを経験した男女に、ふたたび愛が訪れる物語。そんな映画は数知れずだが、『エストラパード街』とは愛に破れた敗者のフィルムでもある。そのことを引き出すべく演出の手捌きに触れたならば、ジャック・ベッケルという才能にふたたび圧倒されるはずだ。

井戸沼紀美(『肌蹴る光線ー新しい映画ー』主宰)
どんな不遇な状況に立ち会おうとも、可能な限り品良く振る舞う主人公。優雅な彼女はもちろん終始魅力的だが、冒頭とラストの、エレガントの檻から放たれたような姿が記憶に残る。チャーミング極まるメイドのポミエさんからも目が離せない。

浅倉 奏(随筆/フォトグラファー)
部屋でのダンスはうまくいかないし、花束を渡そうにもレコードの音が邪魔をする──誰よりも完璧な映画作家ベッケルのロマンティック・コメディは、完璧な雨上がりの街灯に照らされた、ちっとも完璧じゃない人びとに寄り添うとびきりの魔法だった。

藤井仁子(映画評論家)
若夫婦の他愛もないもめごとの一瞬一瞬が努めて平静を装う二人の強がり、妻が新たに借りる集合住宅の不便な間取り、そして窓を通じたセットとロケの驚くべき接続により映画的な事件へと変貌する。使用人たちの豊かな個性にも注目。