1964年、オリンピックの喧騒を遠くに感じていた労働者の見た風景は、
2020年、変わっているのだろうか?

「日本の炭鉱はそのまま日本という国の縮図のように思われて、胸がいっぱいになります。」

—–山本作兵衛 (炭坑画家)

2011年5月25日に炭坑画家・山本作兵衛が残した記録画と日記が日本初のユネスコ世界記憶遺産となった。国策として進められた石炭産業の盛衰を炭坑夫(=労働者)の視点から見つめてきた山本作兵衛が描いたのは、暗く熱い地の底で、命をかけて石炭を掘り出し、この国と私たちの生活を支えた人々の生々しい姿とその矜持だった。

山本作兵衛(1892−1984)は福岡県の筑豊炭田で、幼い頃から働いた生粋の炭坑夫である。自らが体験した労働や生活を子や孫に伝えたいと、60歳も半ばを過ぎてから絵筆を握り、2000枚とも言われる絵を残した。

作兵衛が炭鉱の記録画を本格的に描き始めたのは、石炭から石油へというエネルギー革命で、国策により炭鉱が次々と消えていくさなかであり、その裏では原子力発電への準備が進んでいた。

作兵衛は後の自伝で「底の方は少しも変わらなかった」と記している。その言葉から半世紀。作兵衛さんが見続けた「底」は今も変わらず、私たちの足元に存るのではないか?

山本作兵衛の残した記憶と向き合い、105歳になる元おんな坑夫の人生や、作兵衛を知る人々の証言を通じ、日本の近現代史を描き出す意欲作!『三池
終わらない炭鉱(やま)の物語』の熊谷博子監督が、この国の過去と現在、未来を掘る!ゴットン!

本作の公開決定にあたり、熊谷博子監督とユネスコ世界記憶遺産の登録に尽力した田川市石炭・歴史博物館館長の森山沾一さんが発表したコメントは以下の通りです。

■熊谷博子(本作監督)
作兵衛さんが描いたのは当時の炭鉱の姿ではあるが、私には、そのまま現代に思えた。中に描きこまれた労働、貧困、差別の問題、戦争への記述、共働き坑夫の家事労働に至るまで今と同じだ。特にエネルギー産業の労働構造は、完全に重なって見える。前回のオリンピックは1964年。首都圏あ好景気に沸く一方で、筑豊には失業者があふれていた。作兵衛さんをめぐる人々が語る、今につながる炭鉱の意味。作兵衛さんと、絵の中の名もない人々とともに日本を掘りたい、と切に思った。

■森山沾一(田川市石炭・歴史博物館館長)
映画「作兵衛さんと日本を掘る」を、メモを取りながら一気に観た。激しい音楽や扇動があるわけでなく、むしろ静寂・静謐で、深い洞察に富んだ作品である。作兵衛翁などの語りに、時に涙腺を濡らしながら見終わった。この映画は<人類が忘れてはならないユネスコ基準の普遍的記憶(コレクティブメモリー)>を、癒しと暖かみのある作兵衛さんの生き様を通して描いた、稀有な作品である。

<『作兵衛さんと日本を掘る』に関する情報>

■公開情報
2019年5月25日(土)より東京・ポレポレ東中野ほか全国順次公開

■公式サイト
https://www.sakubeisan.com/

■予告編データ
https://www.youtube.com/watch?v=xkFeJwdoMJ0

■作品クレジット
ドキュメンタリー/111分/DCP/2018年/日本

出演:井上冨美、井上忠俊、緒方惠美
   菊畑茂久馬、森崎和江、上野朱
   橋上カヤノ、渡辺為雄

監督:熊谷博子
朗読:青木裕子(軽井沢朗読館)
ナレーション:山川建夫
撮影:中島広城、藤江潔
VE・美術:奥井義哉
照明:佐藤才輔
編集:大橋富代
映像技術:柳生俊一
音楽:黒田京子(作曲・ピアノ)、喜多直毅(ヴァイオリン)
音響効果:よしむら欅、山野なおみ
MA:小長谷啓太、滝沢康
監督助手:土井かやの、長沢義文
協力:作兵衛(作たん)事務所
撮影協力:田川市石炭歴史博物館、福岡県立大学、嘉麻市教育委員会
企画協力: RKB毎日放送
助成:文化庁文化芸術振興費補助金
製作・配給:オフィス熊谷
配給協力:ポレポレ東中野
宣伝:リガード
グラフィックデザイン:小笠原正勝
©Yamamoto Family
©Taishi Hirokawa
©2018 オフィス熊谷