母親の病気をきっかけに、田舎にある実家に帰ってきた主人公・和彦。彼は職を変え老人ホームで介護士として働き始める。職場では老人の介護をして、家では母親の愚痴を聞く。何もかも真面目にやっているはずなのに、なぜか心が満たされない。そんなある日、老人ホームに入居しているアイコと出会う。気の強いアイコに影響を受け、和彦は仕事で老人に尽くすことで、生きている実感を掴もうとしていく。しかし突然、アイコが施設からいなくなってしまう。何故アイコは姿を消したのか…。
アイコとの心の繋がりを信じていた和彦は、理解ができないままアイコを探し始める。そこで見つけたアイコの姿とは…。
監督、脚本をともに長編初作品となる三野兄弟が手がけ、兄の三野龍一が監督を、弟の三野和比古が脚本をそれぞれ担当した。カナザワ映画祭で観客賞受賞、さぬき映画祭で招待作品に選出された。

解説

この映画は一言で言えば、三野兄弟の個人的な思いです。世間で当たり前だとされることやルールとは一体何なのか。兄弟は社会での決まりごとに疑問を抱きながら過ごしてきました。その素直な問いを映画というキャンバスに描くことで、世の中に一石を投じました。そして今、この映画が、映画ファンの間で密かに話題になっています。
「まるで自分を見ているようだった」(30 代男性)
「主人公は現代のヒーローだ」(50 代男性)
「コミュニケーションが出来ない、自分勝手な主人公の印象を受けた」(40 代男性)
「主人公以外のそれぞれが、自分はこれがベストだと思って生き方を選んでいる」(60代女性)
「見続けるのが辛かった」(50代女性)
この映画は、三野兄弟と同世代の、仕事に悩む男女に向けて発信したものです。しかし、あらゆる年代からの共感や反響は驚くべきものでした。興味深いのは、この映画を見た人たちが全面的に共感しているか、或いは全く共感できないかの何れかであったことです。なぜここまで両極端になったのか。それは、この映画が三野兄弟の目線の押しつけだったからです。つまりは兄弟のエゴイズム。しかし、エゴを押しつけてみたら意外と共感する人たちもいたということです。
日本人は、自分の意見を面と向かって主張する人は少ないでしょう。そして声を大にしない人ほど、内面では社会のルールに疑問を持っている人が多いのも真実です。そういった人たちをこの映画で浮き彫りにすることができました。

『老人ファーム』を推す。
先ず『老人ファーム』というメインタイトルに魅せられた。「老人ホーム」で働く青年の「ウロウロ不器用に生きる姿」を描いて、秀逸。ラストシーン、青年が不敵な笑顔を獲得するまでの冒険譚だ。その語り口に「惜しい」と思わせる隔靴掻痒の感は否めないが、必見の意欲作には違いない。
映画監督 長谷川和彦 (太陽を盗んだ男)

公式サイト
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