この度、精神科医を務めながら、珠玉の人間ドラマを生み出してきた帚木蓬生による、山本周五郎賞受賞作『閉鎖病棟』(新潮文庫刊)が、『愛を乞うひと』『エヴェレスト 神々の山嶺』の平山秀幸監督・脚本により、東映配給にて映画化されることになりました。

原作の『閉鎖病棟』は95年に発売され、丸善お茶の水店に掲げられた「感動のあまりむせび泣きました…」というPOPが起爆剤となり、累計80万部を超す大ベストセラーとなりました。とある精神科病院を舞台に、様々な過去を背負い、家族や世間から遠ざけられながらも明るく生きていた患者たちの日常を遮るように起こった殺人事件―――。事件を巡り、登場人物たちの交錯する様々な想いを描いた本作は、その結末が感涙を誘うと絶賛されました。

主演は、落語家、タレント、俳優と多岐にわたって活躍する国民的芸人・笑福亭鶴瓶。本作で鶴瓶が演じるのは、死刑囚でありながら、刑の執行が失敗し生きながらえ、今は精神科病院にいる男・梶木秀丸役。『ディア・ドクター』以来、10年振りの主演作となる本作では、役作りの為、炭水化物をとらない食事制限や腹部にサランラップを巻くなどして、約10日間で7キロもの減量(81.6kg→73.8kg)を成功させ、トレードマークの庶民的な顔とは異なる存在感を要する役柄に挑みます。

また秀丸と心を通わせる患者役として、『そこのみにて光輝く』『新宿スワン』で個性溢れる演技を見せ、『破陣子』で中国映画にも進出を図る綾野剛の出演が決定。サラリーマンだったが、幻聴が聴こえるようになり、家族から疎まれて精神科病院に強制入院となったチュウさん役を演じます。

そして、不登校が原因で精神科病院に通院する女子高生・由紀役を小松菜奈が演じます。『渇き。』『来る』のエキセントリックな役柄から、『坂道のアポロン』『恋は雨上がりのように』の恋する女子高生役まで、幅広い演技力を備えた若手女優です。

2011年に原作と出逢った平山監督は、原作に惚れ込み、初めて自ら脚本を執筆して映画化を打診。この程、まさに9年越しで実現することになりました。
撮影は、1月7日松本ロケにてクランクインし、その後、独立行政法人国立病院機構が運営する精神科の専門医療施設・小諸高原病院の多大なる協力を得て、2週間にわたるロケ撮影が行われました。日本国内で、ドキュメンタリーを除いて、国立の精神科病棟を使用しての精神科病棟を舞台とした作品の映画撮影は、本作が初めての試みとなります。ほかに関東近郊や都内での撮影を経て、2月中旬頃にクランクアップ予定です。映画は2019年11月に公開予定です。

■笑福亭鶴瓶 コメント
平山監督から、長文のオファーの手紙をいただいたのが3年前。素晴らしい作品を数多く手がけた平山監督がそこまでおっしゃるならと、お引き受けしました。とにかくいい脚本なんです。クランクイン前に脚本を読んでいたら、涙が止まらず、撮影現場でも台詞を言っていても、ぐっと詰まることが度々あります。“人に優しい映画”になると確信しています。

《笑福亭鶴瓶 プロフィール》
1951年12月23日生まれ、大阪府出身。72年六代目笑福亭松鶴の許に入門。『べっぴんの町』(89)、『母べえ』(08)、『奈緒子』(08)、『夢売るふたり』(12)など多くの映画作品に出演する。『ディア・ドクター』(09)、『おとうと』(10)では日本アカデミー賞優秀主演男優賞を、『ふしぎな岬の物語』(14)では日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞した。その他、映画出演作に『後妻業の妻』(16)、『金メダル男』(16)、『家族はつらいよ2』(17)、『北の桜守』(18)などがある。待機作は7月26日公開となる『アルキメデスの大戦』(19)。
※平山監督、小松菜奈とは初タッグとなる。綾野剛とは『奈緒子』以来、2度目。

■綾野剛 コメント
鶴瓶さんは深く潔く、小松さんは繊細で瑞々しく、平山監督は愛で現場を包み込んでくれる。 私はこの作品の中で、本当を見つける事を捨て、嘘をつかない事を手に入れた。本当とは観念だ。嘘をつかないとは心念だ。平山監督のまなざしに魅せられ気づかされました。誰一人、自分に嘘が無い人達の物語です。優しく強く抱きしめて頂けたら幸いです。

《綾野剛 プロフィール》
1982年1月26日生まれ、岐阜県出身。2003年俳優デビュー。『そこのみにて光輝く』(14)では第88回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞、第36回ヨコハマ映画祭主演男優賞など多数受賞。その後『新宿スワン』シリーズ(15,17)が話題を呼び、『日本で一番悪い奴ら』(16)では第40回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。ほか、『怒り』(16)、『64 ロクヨン』前・後編(16)、『武曲 MUKOKU』(17)、『亜人』(17)、『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』(17)、『パンク侍、斬られて候』(18)。公開待機作として『楽園』(19)、『影裏』(20)、中国映画『破陣子』(20)と著しい活躍をみせる。

■小松菜奈 コメント
今回、私が演じているのは、自分ならば決して耐えられない程の壮絶な過去を背負いながら、強い覚悟で生きていく少女の役です。共演者の方々とお芝居の化学反応を楽しみながら、日々挑戦しています。特に長野ロケでは、演技に集中出来る環境が整い、鶴瓶さんや綾野さんという諸先輩がオープンに接して下さるので、オンとオフを切り替えながら、現場で落ち着いて撮影に取り組めているのを実感しています。

《小松菜奈 プロフィール》
1996年2月16日生まれ、東京都出身。『渇き。』(14)で鮮烈な映画デビューを果たし、数々の新人賞を受賞。以後『近キョリ恋愛』(14)、『黒崎くんの言いなりになんてならない』(16)、『ディストラクション・ベイビーズ』(16)、『溺れるナイフ』(16)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(16)、『沈黙 ‐サイレンス‐』(17)、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(17)、『坂道のアポロン』(18)、『恋は雨上がりのように』(18)と立て続けに出演。近作は『来る』(18)の他、2月22日公開『サムライマラソン』(19)、5月公開『さよならくちびる』。

■平山秀幸監督 コメント
 原作が書かれた20年以上前と比べて、今ではスマホやパソコンで生活は便利になったけれど、むしろ、自分の荷物を抱えきれずに、心の病にかかる人が増えた気がする。
  自身もどん底で苦しいのに、他人の痛みを思いやる――原作で、秀丸がみせる“自己犠牲”に圧倒され、どうしても映画化したいと脚本を書き始めた。
  笑福亭鶴瓶さんは、きっと新しい顔を見せてもらえるとお願いした。
そこに綾野剛さん、小松菜奈さんという、才能溢れるキャストが加わって、芝居の応酬を見ていて楽しい現場となった。

《平山秀幸監督 プロフィール》
1950年9月18日生まれ、福岡県北九州市出身。日本大学芸術学部放送学科卒業。『マリアの胃袋』(90)で監督デビュー。 『ザ・中学教師』(92)で日本映画監督協会新人賞を受賞。『学校の怪談シリーズ』が大ヒットし、『愛を乞うひと』(98)でモントリオール世界映画祭国際批評家連盟賞、日本アカデミー賞最優秀監督賞始め数々の賞を獲得。その他、『ターン』(01)、毎日映画コンクール監督賞などを受賞した『笑う蛙』(02)、『OUT』(02)、『魔界転生』(03)、『レディ・ジョーカー』(04)、『しゃべれども しゃべれども』(07)、『必死剣 鳥刺し』(10)、『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-』(11)『エヴェレスト 神々の山嶺』(16)などがある。

■帚木蓬生
《帚木蓬生 プロフィール》
1947年、福岡県生れ。東京大学仏文科卒業後、TBSに勤務。2年で退職し、九州大学医学部に学び、精神科医を務める。1993年『三たびの海峡』で吉川英治文学新人賞、1995年『閉鎖病棟』で山本周五郎賞、1997年『逃亡』で柴田錬三郎賞、2010年『水神』で新田次郎文学賞、2011年『ソルハ』で小学館児童出版文化賞、2012年『蠅の帝国』『蛍の航跡』の2部作で日本医療小説大賞、2013年『日御子』で歴史時代作家クラブ賞作品賞をそれぞれ受賞。『国銅』『風花病棟』『天に星 地に花』『受難』『守教』などの小説のほか、新書、選書、児童書などにも多くの著作がある。

■ストーリー
長野県小諸のとある精神科病院。それぞれの過去を背負った患者たちがいる。母親や嫁を殺めた罪で死刑となりながら、死刑執行が失敗し生き永らえた梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)。サラリーマンだったが幻聴が聴こえ暴れ出すようになり、妹夫婦から疎んじられているチュウさん(綾野剛)。不登校が原因で通院してくる女子高生、由紀(小松菜奈)。彼らは家族や世間から遠ざけられても、明るく生きようとしていた。そんな日常を一変させる殺人事件が院内で起こった。加害者は秀丸。彼を犯行に駆り立てた理由とは—– ?

<公開情報>
■タイトル:『閉鎖病棟(仮)』 ■公開日:2019年11月公開 
■キャスト:笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈 ほか
■原作:帚木蓬生『閉鎖病棟』(新潮文庫刊)■監督・脚本:平山秀幸 ■配給:東映