今年12月31日の大晦日に公開を控えた中国・フランス合作映画『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト(仮)』が、中国のネットによるチケット事前予約で12月25日現在9900万元(日本円で16億万円)に達していると、新浪新聞など複数の中国語エンタメ情報サイトが報じて話題を集めている。25日中に一億元に達したとの報道もある。

これは中国のプロモーション会社が、通常の予告編とは別に、映画の中の胸キュンのセリフをサンプリングし、ロマンティックな映画音楽をエレクトロニカ風にアレンジしたPVテイストのトレーラーを作成、エンディングに「12月31日、今年最後の夜にキスで年を跨ごう」というキャッチコピーを入れるなど、徹底的に若いカップルを意識したマーケティングを展開した結果、Weiboを中心としたSNSやWeChatなどのチャットを通じて予想以上の速さで話題が拡散していったもの。特に12月31日21:40の回は140分の上映時間の終わりを0:00に合わせた設定となっており、すでにこの回は中国主要都市の劇場ではほぼ満席となっている。

中国のメディアは、これまで『ロングデイズ〜』のようなアートハウス系の作品はもちろん、商業的な映画でも前売が一億元に達した前例がなく、本作のマーケティングチームの偉業を手放しで称えている。

チケットを購入しているのは19歳以下が31.6%、20代が56.7%、30代が5.4%、40歳以上が6.3%、男女比45.7:54.3%というデータも合わせて報告された。

『ロングデイズ・ジャーニー〜』は中国第8世代のアンファンテリブルとして世界の映画界が熱視線を送るビー・ガン監督の長編第二作。今年のカンヌ国際映画祭ある視点部門で正式上映されたのを皮切りに、トロント、ニューヨークなど主たる国際映画祭に招待上映され、11月に開催された台湾・金馬奨では撮影賞・音楽賞・音響賞の三部門を、東京フィルメックスでも学生審査員賞を受賞している。この東京フィルメックスでは映画祭のチケット発売当日にどのプログラムよりも早く即完売となっていた。


ストーリーは父の死をきっかけに故郷である貴州省凱里(かいり)に12年ぶりに帰還した男が、記憶の奥にしまいこんでいた運命の女のイメージを辿る内に、現実とも夢とも過去の記憶ともつかないリバーシブルのような迷宮の世界に埋没していく姿を描くもの。140分ある上映時間の後半60分近くに及ぶ3Dシークエンスショットで展開する圧巻の映像美も大きな話題となっている。出演は『ラスト、コーション / 色・戒』のタン・ウェイ、『妻の愛、娘の時』のシルヴィア・チャン、『長恨歌』のホアン・ジエ。

本作は今年12月31日に中国全土6000スクリーンで公開されるのを皮切りに、2019年1月31日よりフランスで、同4月に全米での公開が決定している。

配給元では日本の公開は2019年秋以降3Dでの上映を目指している。なおビー・ガン監督の長編デビュー作『凱里ブルース』も同社ほか配給で公開を予定している。

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