大竹まことが過酷すぎる撮影現場を語る 『八甲田山』シネマ・コンサート開催直前スペシャル・インタビュー
日本映画史に残る傑作『八甲田山』がシネマ・コンサートになって、来春1月14日(月・祝) に東京・NHKホールにて開催される。新田次郎の名著「八甲田山死の彷徨」を元に、明治35年(1902)に真冬の八甲田山中で199名の犠牲者を出した実際の遭難事件を映画化した。高倉健、北大路欣也、加山雄三、三國連太郎に緒形拳といった錚々たるスター俳優たちが参加した同作に、なんと大竹まことも出演している。ロケーションには事件当時とほぼ同じ気象条件の元、雪の八甲田山で行われ、あまりの寒さに逃げ出した俳優もいたという。そんな過酷すぎる現場を、大竹まことが撮影当時を振り返る。
「最初に言っとくけど、俺はエキストラに毛が生えたような役だからね(笑)」。風間杜夫も所属していた劇団「表現劇場」の仲間らと共に映画『八甲田山』のロケに参加した。大竹まことは輸送隊員Cという役名で。12月31日に夜汽車に乗せられ青森市・酸ヶ湯温泉の旅館に着き、翌朝には床屋が2人待機していて全員が坊主頭に刈られた。「俺たち兵隊の衣装は戦争中(日露戦争の頃)と同じでペラッペラなわけさ。その時点で70年ぐらい前の靴履かされるんだよ」。映画では、凍傷対策にと靴下に唐辛子をまぶして靴を履くシーンがあるが、実際の現場でも同じ事をしたという。ロケは毎朝、宿舎を出て1〜3時間ぐらい歩いて現場に行く。ただ、着いてもすぐ撮影に入る訳ではなく、ひたすら声がかかるまで極寒の中、待ち続ける。「エラい俳優さんたちは雪上車だけど、俺たちは歩き。で、出番まで待つ。あんまり寒いもんだから、雪に穴掘って潜って顔だけ出して待つんだよ(笑)」。昼間ですら寒いのに夜間撮影となると想像を絶するものがある。「この明るさで撮れんのかよという中で撮影してた。そんな中、風速30mの吹雪を起こす機械回すんだよ、ただでさえ寒いのに」。
<青森歩兵第五連隊の最初の犠牲者役を演じた>
映画で最初の犠牲者となるのが大竹まことだ。服が汗で濡れ、それが凍って凍死するという役だ。気がおかしくなって雪中に裸になって死ぬ役と巷間、言われているが、それは大竹ではない。もっとも本人はあまり覚えてないようで「俺は北大路欣也さんのそばで死んだような気がする…」と言う。ただ本人の記憶違いでなければ「俺、いちばん最初には死ぬんだけど、その後も出てたような気がする。だって撮影は最後までいたしなぁ」と仰天告白まで飛び出した。
<監督や木村大作からお小遣いもらう?!>
撮影中は同じ劇団の堀礼文(ほりれもん)と行動を共にする事が多かった。後に映画『犬死にせしもの』(1986)撮影中に自死した大竹の役者仲間の盟友だ。大竹にとって『八甲田山』への出演は、堀との交遊がいちばん思い出に残っているという。ある日、ひとつのカットの撮影が終わり、次のカットは遥か彼方にある山頂だと言われる。雪中でたいへんな思いをしている中、さらに遠くへ行けと指示される。頭にきた大竹と堀は遮二無二、登って山頂に一番乗りで着いた。その馬鹿げたエネルギーに感心した森谷監督と木村大作が、5万円づつ、お小遣いをくれた。結局、その夜は飲みに行って翌朝は遅刻したそうだ。「上に立つ人が、ちゃんと範を示してくれた現場だった」と思い返す。緒形拳は大丈夫か?と声をかけてくれたり、三國連太郎は肉を差し入れてくれた。もっとも高倉健は寒くても焚き火に近づかなかったため、大竹たちも暖をとりに行けずに大いに困ったそうだが。
<八甲田山シネマ・コンサートに向けて>
大竹はTV版の「八甲田山」(1978年放送)にも出演している。映画とTVの両方に出演した唯一の俳優だ。「現場のほうが映画よりもっと厳しかったです」と言い切るほどの、過酷な撮影現場であったため、『八甲田山』で役者に見切りをつけたと告白。以降はコメディアンに転じ、きたろう、斉木しげるらとシティボーイズを結成する。来春開かれる『八甲田山』シネマ・コンサートについては、「芥川也寸志さんの書いたメロディは、聴いてるだけでも寒くなってくる。ホントにいい音楽だから、生のオーケストラで聴けば体感温度も下がって、映画を楽しめる事でしょう」と期待を寄せる。
『八甲田山』シネマ・コンサートは、映画のセリフや効果音はそのままに巨大なスクリーンに本編を上映しながら、芥川也寸志の書いたスコアを東京交響楽団が生で演奏するコンサート。映像は撮影の木村大作が新たに監修したデジタル・リマスタリング版で上映されるので、今まで見たことのない『八甲田山』が体験できる。
又、大竹まことのインタビューは、12月22日(土)・1月5日(土)深夜1:00~BS朝日「japanぐる~ヴ」にて放送される。
<『八甲田山』シネマ・コンサート/公演概要>
日時:2019 年 1 月 14 日(月・祝)
開場 15:00/開演 16:00 会場:東京・NHK ホール
指揮:栗田博文/演奏:東京交響楽団
チケット料金(全席指定/税込):9,800円 ※未就学児入場不可
上映作品:『八甲田山』 (1977年) 上演時間:2 時間 49 分(途中休憩:20 分あり)
製作:橋本 忍/野村芳太郎/田中友幸
原作:新田次郎『八甲田山死の彷徨』(新潮社版)
監督:森谷司郎
脚本:橋本 忍
音楽:芥川也寸志
撮影:木村大作
<八甲田山シネマ・コンサート公式サイト>
http://www.promax.co.jp/hakkodasan/
<木村大作&大竹まこと/インタビュー放送日程>
番組名:BS朝日/japanぐる~ヴ
放送日:2018年12月22日(土)& 2019年1月5日(土)深夜1:00〜2:00
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