ロサンゼルスを起点に活動するHIAKRI監督初の長編作品である「37 Seconds」が第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に選出されました。

37秒間仮死状態で産まれたことが原因で脳性麻痺になった主人公・貴田夢馬(タカダユマ)の自己発見と女性としての成長を描いたカミング オブ エイジストーリー。

本作品の監督HIKARIが最もこだわったのは、実際に障がいを抱える女性をヒロインにすること。身体に障がいを持つ女性たちを日本全国で一般公募し、東京、名古屋、大阪で何度もオーディションを開催しました。約100名の応募者の中から主人公に抜擢されたのが、大阪で社会福祉関係のお仕事をされている、脳性麻痺の佳山明さん(24)です。

主人公の圧倒的なリアリティとHIKARI監督の長編デビュー作ならではの自由でチャレンジ溢れる作品が、歴史が深く世界一の来場者数を誇る、ベルリナーレから世界に紹介される作品として選ばれました。

主人公 夢馬(ユマ)の過保護な母親役に神野三鈴さん、障がい者の母親を演じるために、佳山明さんと実際に生活を共にし撮影に挑みました。ユマのチャレンジを支えるヘルパー・俊哉役に大東駿介さん、ユマを新たな世界へと導く障がい者の為のデリヘル嬢・舞役に渡辺真起子さん、アダルト漫画の女性編集長・藤本役に板谷由夏さん、他、萩原みのりさん、宇野祥平さん、芋生悠さん、渋川清彦さん、奥野瑛太さん、石橋静河さん、尾美としのりさんといった実力派俳優陣が集結。映画「パーフェクト・レボリューション」の原案者であり脳性麻痺による四肢痙性麻痺のある熊篠慶彦さんも本人役として出演をしています。

<ストーリー>

漫画家のゴーストライターとして、陰で空想の世界を描き続ける脳性麻痺の貴田ユマ(23)。車椅子生活のユマは過保護で支配的な母親に守られ生活をしていた。自立するために、アダルト漫画の執筆を切望するが、リアルな性体験が無いと良い漫画は描けないと言われてしまう。障がいのある人を専門にする娼婦でユマの新しい友人の舞は、ユマに外の世界を見せる。しかし、それは母の逆鱗に触れてしまう。彼女の成長物語は想像もしなかった家族の秘密が、切なくも彼女を解放していく旅へと導いていく。

本作品は、北米最大の国際映画祭サンダンス映画祭とNHKが主宰するサンダンス・インスティテュート/NHK 賞2016年度日本代表脚本となった作品です。

★主人公貴田ユマ役・佳山 明

プロフィール:

1994年10月生まれ・現在 24歳

日本福祉大学・社会福祉学部卒業後、大阪府豊中市の福祉会社に勤務・地域福祉課担当。四人娘の四女として生まれ、健常者の双子の姉がおり、出産時に数秒間呼吸をしていなかったことが原因で脳性麻痺となる。本作オーディションを通じて監督に見出され主役に抜擢されました。

コメント:

ベルリン映画祭で上映されると聞いた時、HIKARI監督が私を選んでくれた事に改めて心から感謝しました。一般人で障害者でもある自分がこの瞬間を体験できたのは「奇跡」だと思いましたが、でもそれは「現実」で、今までの私の人生を支えてくれた、多くの方々がいたおかげだと感じています。ユマを演じることは、今までの人生を見つめ直す行為でもありましたので、今はそれを凄く実感しています。

初めて映画に出演したことは、私にとってはチャレンジでしたので、世界中の方々にどんな気持ちでこの作品を見て頂けるのかドキドキします。最後になりますが今まで支えきてくださった皆さん、共に撮影のときを過ごした皆さんに心の底から感謝しています。

★脚本、監督 HIKARI

大阪市出身。高校生で単独渡米し舞台芸術を学ぶ。USC School of Cinematic Arts大学院、卒業制作短編映画『TSUYAKO』(2011, ドラマ)は米国監督協会、DGA Student Awardにて最優秀学生監督賞を含めた世界中の映画祭にて50賞以上を受賞。2012年度、2013年度のアカデミー賞選考対象作品として選ばれた。その他、 第一回Lexus Short Filmでは日本人代表として『A BETTER TOMORROW』 (2013, ファンタジーアドベンチャー)、UULA配給短編映画、『キャンとスロチャン』(コメディー, 2014)、スバル・ドラマチックシネマシリーズを演出する。ダンス短編映画『WHERE WE BEGIN』 (2015, Drama, 20min) はトライベッカ映画祭でプレミア上映し、最優秀短編映画ノミネーションなど10賞を受賞。

コメント:

ある一つのインタビューからインスパイアされ書き始めた『37 Seconds』がこの度やっと一つの作品として生まれました。『何が何でも撮影する!』念願の長編映画を作る決心をし、来日してから丸1年。資金集めから主演女優発掘まで、全て手探りで始めた企画でしたが、今回初めてお芝居に挑戦した主人公を演じる佳山明さんや、ベテラン俳優陣、今では私の大切なファミリーとなった方々のお陰でここまで来ることが出来ました。そして、初演技、初長編映画でまさかの!ベルリン国際映画祭に招待していただけるとは!驚きと喜びで胸がいっぱいです。体が十分でなくても、体当たりで前進して行く主人公ユマが、これから世界に羽ばたいていく姿を見届けることが楽しみでなりません。

映画『37 Seconds』概要

■製作:株式会社ノックオンウッド
■共同制作:NHK/NHKエンタープライズ
■監督、脚本:HIKARI(『Tsuyako』、『A Better Tomorrow』、『Where We Begin』他)
■公開:2020年
■出演:佳山明、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、熊篠 慶彦、萩原みのり、宇野祥平、
芋生 悠、渋川清彦、奥野瑛太、石橋静河、尾美としのり /板谷由夏