昨年10月に釜山国際映画祭ニューカレンツ部門に正式出品され、そのセレクションが評価されている大阪アジアン映画祭など国内外で絶賛されている佐藤慶紀監督の問題作「HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話」が、満を持して9/9(土)〜10/6(金)まで新宿K’s cinemaで公開されることが決定いたしました。

南カリフォルニア大学を卒業した新進気鋭の佐藤慶紀監督が、10年程前、加害者の死刑を止めようとする被害者遺族がいることを知り、復讐心も湧いてくるであろう中、そのような決断をした理由を深く考えたいと思い、制作した本作。
宗教と出合い、「犯人を許す」と言いながらも、死刑判決は当然のものと考える元夫と違い、死刑を止めることを考え始める被害者の母の心の動きを丁寧に描いた本作を、ぜひご覧ください。

■西山由希宏(夫役)コメント

テーマについて
「死刑制度について」をメインテーマに監督、スタッフ、各役者が思いを込め作り上げた作品だったかと思います。そのテーマをボヤかすわけではありませんが、出来上がりを拝見し、また観覧された方々の反応に触れていくにつれ、身内の殺害という一つの出来事により浮き彫りにされた被害者遺族個々の価値観の差異、またそれによって翻弄されるその人物たちの様こそがこの作品の深層に隠されたもう一つのテーマなのかもしれないと思い始めています。
これといった派手さもない〈市井の人〉としての生活でも、時に容易く起こりうる身内の殺害。そんなあまりに理不尽な身内の死別に「あなたならどう受け止め、どう対処しますか?」と、登場人物たちの行動を通して観る側への〈問いかけ〉そのものがこの作品の別テーマに思えてなりません。

釜山映画祭や海外映画祭での印象
テーマがテーマだけにエンターテイメント性から程遠く離れた作品ですが、それでもこうして海外からも好評を得ることができたということに映画という表現媒体の懐の深さを改めて感じます。また「死刑とは?」という問いは国柄や国民性を越えた、普遍的で万国共通の観念だったと参加した映画祭を通じて一番強く残った印象です。

制作で苦労されたことなどの話
撮影期間中は無我夢中になっていたというか、変なアドレナリンが出っぱなしだったんだと思います。「苦労」と感じたことはありませんでした。
それでも強いて挙げるなら12月初頭、秋から冬へ寒さがより身に染みる時期に池に沈められたことくらいですかね。(笑) 思いのほか溺れかけました。
役作りという点でも苦労という感じではなかったです。監督は役者に一任してくれる方だったので苦労よりもやりがいを強く感じてました。その分、自身の演技に対するプレッシャーには常につきまとわれましたが。これは主演の(西山)諒さんも同じ思いだったそうです。
役に対し最も意識したことは、自身の生理や感情に溺れることなく可能な限り別人を演じきることでした。それには普段自分では到底取らないであろう行動を積極的に選択していたので、殆どのシーンは違和感を抱えた状態での演技だった気がします。

 

 

■荒川泰次郎(死刑囚・孝司役)コメント

私の役がストーリーの要になると思っていたので、撮影に臨むのに緊張感がとてもありました。
私が生きないと作品を台無しにしてしまうのでは?と思っていました。
ちゃんとそこにいよう。そう思って臨みました。
そしたら、大事なシーンの撮影の前に、主演の西山諒さんから激励のお言葉を頂き、凄く勇気付けて頂いた事を覚えています。
また、周りの方々のお陰で、作品を作る事ができ、要約公開にまで至ることが出来ました。
皆様、本当にありがとうございます。

©『HER MOTHER』製作委員会

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