第68回カンヌ国際映画祭にて監督賞を受賞した、台湾の巨匠ホウ・シャオシェン監督(侯孝賢)最新作『黒衣の刺客』(こくいのしきゃく)。これまで、『好男好女』(1995)、『憂鬱な楽園』(1996)、『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(1998)、『百年恋歌』(2005)など、6度にわたりカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され『戯夢人生』(1993)では審査員賞、『ミレニアム・マンボ』(2001)で高等技術院賞を受賞しているホウ監督は、本作で7度目のコンペティション部門への出品という偉業を成し遂げ、ついに監督賞を受賞しました。ホウ監督は1989年『悲情城市』ではヴェネチア国際映画祭の最高賞である金獅子賞も受賞しています。

本作は唐代の中国を舞台に、数奇な運命に翻弄される女刺客を描いた、最も美しく、最も静かな、全く新しい感覚の武侠映画です。
出演には、『ミレニアム・マンボ』などホウ監督のミューズ、スー・チーが、運命に翻弄されながらも力強く生きてゆく女刺客・インニャンを演じ、アクションにも挑戦。かつてはインニャンの許婚で暗殺の標的となる暴君には、『レッド・クリフ』シリーズで知られ、『百年恋歌』に続きホウ監督とタッグを組んだチャン・チェン。そして、窮地に追い込まれたインニャンを助ける日本人青年を妻夫木聡が演じています。
本作は8月28日に台湾・中国・香港にて、9月12日に日本公開されることが決定していますが、日本公開では、ホウ監督たっての希望で、「日本オリジナル・ディレクターズカット」での上映となります。

以下、ホウ監督のコメント

「本作は、中国、台湾、そして日本の京都・奈良・滋賀・兵庫で撮影を行いました。
インターナショナルバージョンでは残念ながら割愛してしまった、日本での撮影シーンを追加したバージョンを日本の皆様に楽しんで観て頂けると嬉しいです。妻夫木聡さん演じる日本人青年の背景にある複雑さを出すために回想シーンを戻しました。青年の過去を主人公・インニャンは知りません。青年の背景を描くことによって、インニャンの孤独がさらに深まるだろうと考えたからです。」

 また日本オリジナル・ディレクターズカットでは、日本人青年の妻役として、忽那汐里(22)が出演しており、美しい雅楽の舞などを披露しています。忽那出演の回想シーンの撮影は、2010年に奈良で敢行されました。
その他、日本での撮影は2010年、奈良で2週間、2013年、京都、滋賀、兵庫で約1ヶ月に渡り行われました。
忽那起用の理由について、ホウ監督は以下のように語っています。

「彼女とお会いした時、その非常に個性的な性格に惹かれました。物事を考える力のある人物であることを、彼女からは強く感じることが出来たので、是非出演してもらいたいと思いました。」

忽那汐里コメント
「ホウ・シャオシェン監督の現場は、台本がない中行われ、日々思いがけない変更が出たりと、本当に刺激的な毎日でした。
監督を信頼し、コミュニケーションを綿密に取りながら撮影は進んで行きました。
雅楽師の先生のご指導のもと、普段では中々経験のすることのできない雅楽の舞にも、今回は挑戦させてもらい、とてもいい経験になりました。ようやく皆さんに、この作品を観ていただくことができて、とても嬉しく思っています。」

【忽那汐里(くつな・しおり) プロフィール】
1992年12月22日生まれ、オーストラリア出身。2006年に「第11回全日本国民的美少女コンテスト」で審査員特別賞を受賞。
翌07年、TVドラマ「3年B組金八先生」(TBS)の第8シリーズにレギュラー出演し、女優デビューを果たす。
その後TVドラマでは、社会的なブームにもなった大ヒット作「家政婦のミタ」(11/NTV)などに出演。映画は『守護天使』(09)のヒロイン役でデビューし、翌10年には『半分の月がのぼる空』『ちょんまげぷりん』『BECK』に出演。11年には『少女たちの羅針盤』と『マイ・バック・ページ』の演技によってキネマ旬報ベスト・テン新人女優賞に、『マイ・バック・ページ』で毎日映画コンクールのスポニチグランプリ新人賞に輝いた。最近の映画出演作に『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』『ペタル ダンス』『許されざる者』(全て13)、『オー!ファーザー』(14)など。2013年、第37回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。
今年は、12月5日公開予定の『海難1890』にも出演している。

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執筆者

Yasuhiro Togawa