イランの若き名匠バフマン・ゴバディが、自由な創作活動への願いを込めて当局に無許可で撮影し、昨年のカンヌ映画祭で大きな話題を集めた『ペルシャ猫を誰も知らない』の日本公開が8月に決定しました。

ゴバディ監督から日本の観客へ、そして投獄されているパナヒ監督へもメッセージをいただきました。

長編監督デビュー作『酔っぱらった馬の時間』が、2000年のカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)と国際批評家連盟賞をダブル受賞して以来、キアロスタミ監督やマフマルバフ監督など数多くの巨匠を輩出しているイラン映画界で、若き名匠として地位を確立しているバフマン・ゴバディ監督の最新作『ペルシャ猫を誰も知らない』の日本公開が8月に決定! 昨年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品された際には、若者たちの自由への溢れんばかりの痛切な想いが感動を呼び特別賞を受賞するとともに、イランでスパイ罪に問われ3カ月半拘束された後、釈放され帰国した日系米国人記者ロクサナ・サベリさんが製作に協力した映画としても注目を浴びた話題作です。

『ペルシャ猫を誰も知らない』は、西洋文化への規制が厳しいイランで、当局の目を逃れながら、密かにロックやヒップホップなどの音楽を続ける若者たちの姿を描いた青春群像劇。出演者のほとんどは実際のミュージシャンで、物語は実在の事件、場所、人物に基づいている。映画製作も同様だが、音楽活動にも当局の許可が必要なイランで、彼らアンダーグラウンドで活動するミュージシャンを撮影するために、ゴバディ監督は当局に無許可でゲリラ撮影を敢行。前作以降、新作映画の撮影許可がなかなか得られなかった自身の苦悩を物語に重ね合わせるように制作された。主役の2人は、撮影が終了した4時間後にイランを離れ、ゴバディ監督自身も本作を発表後、海外に居住している。

※そのゴバディ監督から、新作の公開を待ちわびる日本のファンにメッセージが届きました。

 日本の観客の皆さんへ:この作品は私が今まで作った映画と全く違います。テーマも、映像も、新しい挑戦です。私は、映像を使って、今まで誰も気にとめようとしなかった社会の一部の人々の声を皆さんに聞いてもらえると思いました。素晴らしい才能を持つ若者たちが、いかに厳しい状況の中、わずかな機材だけで、自分の夢に向かって走っていることか。この映画はイランの若い世代の真実の声なのです。
 また、現在開催中のカンヌ国際映画祭で、審査委員長のティム・バートンやキアロスタミ監督が声明を発表したことでも注目を浴びた、イラン政府に拘束されている映画監督ジャファル・パナヒ監督について、ゴバディ監督は「私は先日、フランスのクシュネル外務大臣と会うことができ、解決のために 力を貸してくださるようお願いしました。必ずや、事態が好転すると信じています。一日も早く、 あなたが釈放されるように、私たちは出来るだけの事をやりますから、どうぞあなたの健康を損な うハンガーストライキは止めてください」と切実なコメントを寄せています。

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執筆者

Yasuhiro Togawa