本作の監督・脚本を務めたのは前作『素数たちの孤独』が世界中で高く評価されたイタリアの俊英サヴェリオ・コスタンツォ。主演を務めたのは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の新悪役カイロ・レン役やマーティン・スコセッシ監督の新作『沈黙−サイレンス−』と話題作への出演が続く、今やハリウッドの若手を代表するスターとなった個性派俳優アダム・ドライバー。洋画ファンからの注目も熱い彼が本作で演じるのは子どもの誕生により変わりゆく妻に困惑しながらも家族への深い愛情を持つ夫のジュード役。そして妻のミナを演じるのはイタリアの実力派女優アルバ・ロルヴァケル。

まるで極上のロマンティック・コメディの様な、ニューヨークの中華料理店でふたりが出会い、恋に落ちて結婚するまでの序盤から一気にスリリングなシチュエーションへとなだれ込む物語、そして観客の価値観を試すかのような衝撃のラストに至る大胆な演出に呼応したアダム・ドライバーとアルバ・ロルヴァケルの見事な演技は、世界三大映画祭の一つ、ヴェネツィア国際映画祭で上映されるやいなや大きな話題となり、妊娠、そして妻の狂気といったテーマを描いた作品としては『ローズマリーの赤ちゃん』や『こわれゆく女』といった過去の傑作にも匹敵すると評され、大きな喝采を浴び、主演男優賞と主演女優賞のW受賞という快挙を成し遂げました。

予告編::https://youtu.be/xSTW-s8gpw0

ニューヨークで運命的に出会い、恋に落ちたジュードとミナ。やがて結婚し、2人の間には可愛い男の子が産まれる。それは幸せな人生の輝かしい始まり——のはずだった。しかし息子の誕生後、独自の育て方にこだわり神経質になってゆくミナは、息子が口にするもの、触れるものに対して次第に敵意と恐怖心を露わにし始める。やがてその攻撃の矛先は、医者や友人そしてジュードの母親、更にはジュード本人にまで向けられてゆくが、彼はそんな妻の異常とも取れる頑なな愛情を、何とか理解し、支えようとする。しかしその結果、息子の体が徐々に変調をきたし始めたことで、ジュードは遂にある決断を迫られる。果たして、その答えの先に、彼らを待ち受けるものとは—。

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執筆者

Yasuhiro Togawa