塩田明彦監督が、28年ぶりに復活するロマンポルノに挑んだ最新作『風に濡れた女』 が、現地日程8月3日〜8月13日に開催された【第69回ロカルノ国際映画祭コンペティション部門】へ正式招待され、最終日に行われた受賞式にて若手審査員による<若手審査員賞>を受賞いたしました。

日活ロマンポルノ新作の塩田明彦監督『風に濡れた女』が
第69回ロカルノ国際映画祭にて、若者たちが選ぶ<若手審査員賞>を受賞!

◇受賞内容:第69回ロカルノ国際映画祭 若手審査員賞 第3位 (Junior Jury Award・Third Prize)
◇受賞式日程:ロカルノ現地 8月13日(土) 17時00分〜

第69回ロカルノ国際映画祭で、日本人が監督した作品として国際コンペティション部門に、塩田明彦監督の『風に濡れた女』と富田克也監督の『バンコクナイツ』の2作が、そして、新鋭監督コンペティション部門に真利子哲也監督の『ディストラクション・ベイビーズ』が招待されるという快挙を果たしていましたが、その全ての作品が賞を受賞しました。
28年ぶりに復活する成人映画レーベル『日活ロマンポルノ』の1作である塩田明彦監督の新作『風に濡れた女』と富田克也監督の『バンコクナイツ』は、本賞とは別に設けられた【若手審査委員賞】を2作品が受賞。新鋭監督コンペティション部門の真利子哲也監督は、【最優秀新進監督賞】を受賞し、日本人映画監督の3作品すべてが賞を受賞する結果となりました。

塩田明彦監督(54) コメント
「リブートした日活ロマンポルノが思いもかけず国際映画祭のコンペティション部門に出品され、こうして若手審査員の方々からの評価を得たことを、心より嬉しく思います。たとえ低予算の成人映画であろうとも、作り手の心意気次第では、世界に通じる映画を作れること、娯楽映画でありながら同時に芸術映画ともなりうることを『風に濡れた女』は証明することができました。それを何より嬉しく、誇りに思います。そして、今回の若手審査員の方々の多くは20代前半の女性たちで、(ロマンポルノ作品として作られた本作が)
そうした方々からの支持を得られたことは、今後の大きな自信となります。授賞式の席上でも『風に濡れた女』と『バンコクナイツ』の発表には大きな歓声が沸き、観客からの支持の強さを感じました。」

『風に濡れた女』は、ロマンポルノリブートプロジェクトの一環で作られた作品。映画祭ディレクターのカルロ・シャトリアンは「日活ロマンポルノという、日本の特別なジャンルに敬意を表したい。」とした上で、「『風に濡れた女』は、しっかりとした物語性があり、人生に必要不可欠な要素であるユーモアとアイロニーが描かれている。」とコメントされており、映画祭での本作の上映に非常に好意的でした。公式上映の会場では、3000人を動員するシアターがほぼ満席となり、会場内では常に笑いが絶えず、映画祭期間中ロカルノに滞在していた塩田監督は、いたるところで声をかけられたそうです。映画『風に濡れた女』は、日本国内では、今冬より新宿武蔵野館ほかにて順次公開となります。

本映画祭での『風に濡れた女』公式上映時のQ&Aレポートは下記となります。

公式上映時の主なQ&Aのご報告 
Q:今回の映画は日活ロマンポルノ45周年という形で製作がはじまりましたが、
日活からオファーが来たときの反応について聞かせてください。

監督:日活からオファーを受けた時はものすごく光栄に感じました。日活ロマンポルノは70年代にはじまって映画業界的に少し下に見下されているようなジャンルだったんですけれども、そこから多くの傑作が生まれて今ではひとつの立派な歴史として認知されています。僕らはそういう傑作をたくさん見てきたので自分がその歴史につながるということがとてもうれしかったです。

Q:とても面白い作品だとおもいながら見ていました。映画祭でもこの作品を選ぶのは勇気が必要だったのではと思います。
本作のようなエロティシズムを描く上で、チャレンジや挑戦がありましたか?

監督:今回の作品は日活ロマンポルノというかつて1100本も作られた映画のジャンルをもう一回復活させようとして始まったプロジェクトなんですけれども1100本も作られた歴史に対して更に新しいものをどうやって加えられるんだろうというのがすごく悩んだポイントでした。たまたま日活からオファーを受けた時に僕は中国の伝奇小説、説話集のようなものを読んでいて日常の中に普通に動物の化身、人間に化けた動物がいるようなお話をたくさん読んでいたので何かこれを題材にできるんじゃないかと思いました。

Q:日活ロマンポルノ、70年代の作品となりますといろいろなルールがありましたよね、SEXシーンをいくつか撮影しなきゃいけないだとか予算が限定されてるとかそのようなことがありましたけれどこのようなルールは今回のプロジェクトにもありましたか。違う形で撮影しましたか。

監督:70年代のロマンポルノは撮影日数が10日間、今回の撮影日数は7日間です。そして10分に1回のヌードシーンが求められます。だけどそういう制約があることが作り手の想像力を掻き立てる。1週間しかないんだったら1週間で撮れるストーリーを見つけて撮ろうと、10分に1回のヌードシーンが必要なら飽きないように次々の面白いヌードシーンを撮ったり創作意欲を掻き立てるのでこのフォーマットは僕らにとってすごく刺激的なんです。

Q:最初の自転車のシーンは神代監督の『恋人たちは濡れた』のオマージュですか?

監督:自転車は神代監督の『恋人たちは濡れた』のラストシーンへのオマージュです。今日僕の映画をご覧になって気に入ってくださった方はぜひ、『恋人たちは濡れた』をご覧いただければと思います。

Q:最高のタイトルだと思いますが、この映画のタイトルはどのように思い浮かべたものですか?

監督:日活ロマンポルノはしばしば濡れたという文字を使うんですね、なので濡れたという言葉を使ってタイトルを考えようと思って
いるときに雨に濡れていても面白くないので風の中で濡れているというイメージを作りました。

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執筆者

Yasuhiro Togawa