昨年、アウシュヴィッツ強制収容所解放70周年を迎え、改めてナチス・ドイツが世界を震撼させた悲しい記憶を思い起こさせた。そして、本年度アカデミー賞®外国語映画賞を受賞した『サウルの息子』を筆頭に、2016年は『アイヒマンショー 歴史を映した男たち』『帰ってきたヒトラー』など、ナチス・ドイツに関連した作品が続々と公開&話題を呼んでいる。そしてこの夏、新たに2本の実話に基づいたナチス・ドイツ関連作品が公開となる。

●『栄光のランナー/1936ベルリン』8月11日(木・祝)TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー
1 つの大会で 4 つの金メダルを獲得する快挙を成し遂げた偉大な黒人選手が、根深い人種差別の残る第二次世界大戦前最後のベルリンオリンピックに存在した。伝説の陸上選手ジェシー・オーエンスが偉大な記録を打ち立て、世界中に衝撃を与えるまでの激動の 2 年間を描いた感動のドラマ。

貧しい家庭に生まれながらもジェシー・オーエンス(ステファン・ジェイムス)は、中学時代から陸上選手として類稀な才能を発揮していた。家族の期待を一身に背負ってオハイオ州立大学に進学した彼は、コーチのラリー・スナイダー(ジェイソン・サダイキス)に出会う。オリンピックで金メダルを獲得するべく日々練習に励むオーエンスだったが、当時のアメリカ国内では、ナチスに反対してオリンピックのボイコットを訴える世論が強まっていた。さらに、ナチスの人種差別政策は黒人であるオーエンスにとっても認めがたいものであった—。

●『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』8月6日(土)より YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国ロードショー落ちこぼれクラスの実話を映画化したヒューマンドラマ。貧困層が多く通うパリ郊外の高校で問題児たちの集まるクラスを任された歴史教師アンヌは、生徒たちに全国歴史コンクールへの参加を提案するが、“アウシュヴィッツ”という難しいテーマに反発されてしまう。そこでアンヌは大量虐殺が行われた強制収容所から逃げ出すことができた数少ない生存者の1人を授業に招待する。その想像を超える壮絶な話を初めて聞いた生徒たちは、この日を境に変わっていく……。
当時 18 歳だったアハメッド・ドゥラメが自身の体験を基に脚本を共同執筆、マリック役で出演もしている。歴史教師アンヌを演じるのは「キリマンジャロの雪」のアリアンヌ・アスカリッド。
昨今の移民問題からヨーロッパの若者のネオナチ思想増加や、日本でもヘイトスピーチが話題となっている今日の世界。そんな現代だからこそ、改めてかつてのナチス・ドイツが起こした悲劇を思い返し、逆境を乗り越え希望を見出した人々の姿に勇気をもらえる作品が注目されているのかもしれない。まさにこの2作品は“今観るべき映画”といえそうだ。

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執筆者

Yasuhiro Togawa