日本を代表する脚本家・荒井晴彦が、芥川賞作家・高井有一による同名小説、18年ぶりの監督に挑んだ渾身の映画『この国の空』で、第32回あきる野映画祭【斎藤耕一賞】を受賞致しましたのでご案内申し上げます。

斎藤耕一賞とは、当映画祭創成期から、この映画祭を応援し続けてくれた故斎藤耕一監督に、敬意を表するとともに映画界の新しい才能を応援するために2011年に制定。前年に公開された作品の中から、実行委員が選定。劇場用長編作品が3本以内の監督による作品であり、また映像派として活躍した斎藤耕一監督にちなみ、個性溢れる映像により描かれた作品の監督を表彰した賞となります。

当日は、プレゼンターとして斎藤監督の奥様・八重子さんが登壇し、『「この国の空」は、3回見させて頂きました。情感あふれる、男女の機微が現れた映画なんだなと、あの悲惨さ戦争を通して今の私たちがあると、改めてこの映画を通して感じました。』とのコメントされ、受賞式後には、本編の上映が行われました。

昭和20年、終戦間近の東京が舞台となり、戦場シーンを敢えて描かず、その時代に生きた庶民の生活に焦点をあてることで、戦争をより身近な問題として捉えられる作品です。主演の里子役に二階堂ふみ。妻子ある男との許されぬ恋に突き進む心の葛藤を見事に体現しています。里子の相手・市毛役には長谷川博己。里子に惹かれていく男を情熱的に演じています。そして、里子の母親・蔦江役には、ハリウッドや海外作品でも活躍をしてきた工藤夕貴、里子の叔母・瑞枝役に、映画・ドラマと幅広く活躍する富田靖子と、名俳優たちが揃いました。戦時下の激しい空襲と飢餓が迫る恐怖のなかで懸命に生きる人々を丹念に描いた人間ドラマです。現在、DVDが好評発売中です。

<荒井晴彦 受賞コメント>
斎藤監督の映画は、「小さなスナック」「落葉とくちづけ」を、リアルタイムでよく見ていました。
斎藤監督は日本のクロード・ルルーシュと呼ばれ、そんな監督のお名前がついた賞を頂くのはなんだか不思議なことですが、賞は大好きなので、ありがたく頂戴いたします。

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=53090

執筆者

Yasuhiro Togawa